第5話 --1章 仲秋 Ⅱ--

--1章 仲秋 Ⅱ--


私はベッドからそっと抜けだして少年に布団をかぶせた。


何度も振り返って少年が起き出さないか目を遣りつつ洗面台に向かう。


途中、台所にいたマーブルに餌をやると、いつもどおりの食いつきの良さに、私は少し冷静さを取り戻した。


少年は目を覚ます気配はない。


「どういうことだ……」


疑問は頭のなかで渦巻けど、何はともあれ、律儀な私は会社に行く準備を始める。


化粧も昨日したままで、まずは落とすところから始めなくてはならなかった。


「ひでぇ」


鏡に映った自分のひどい顔を見て思わずため息をつく。


死相と言うべきか、まさに死にそうな顔だ。


さきほど少年の肌を見たから尚更に感じる。


どうしようもない諦めを、メイクとともに洗面台で洗い流す。


ぼさぼさになった髪を整えながら、私はどうにか昨夜の記憶を思い返そうとした。

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