陸 ‐ロク‐
学生会室を後にした玲花は一階まで下りてそのまま屋外に出ると、正門から続く道の南にある中庭に向かって歩を進める。
視線を上空へ向けると、
視線を前方に戻して、食堂のテラス席に目指す人物を見つけると歩みを速めた。
「どうかしたの? 玲花――」
中庭に隣接した食堂のオープンテラスの椅子に座っていた女性は、近寄る足音に気づいて振り向いて、言葉を
九条学園高等部の非常勤講師である藤は、背後で立ち止まった少女を見て、わずかに
大きな雨粒が玲花の髪に落ちて
流水のような気が少女の身を包んでいた。
「
「いえ、
身を切る真冬の水のような、
「『
「……九条楓と、沙頭雅紘が、ですか。彼らが玲花に接触してきた、ということですか?」
「そう。
……ああ、そういうこと。
藤の正面の椅子に腰かけながら発した少女の言葉で、藤は納得した。楓たちが玲花に接触してきたわけも理解できた。
神に好まれる少女――玲花。
幼い頃より、その純粋な心を持つが
その瞬間を見たのであれば、彼らが玲花に関心を持つのも道理。
「九条楓たちは、どんな話を玲花にしたのですか?」
「『使い人』の説明を」
玲花を
「『風使い』の一族のこともですか? まさか、朝凪家との
「それはない。邪魔したからな」
藤が
「
藤は意を決して、玲花の中にいる存在の名を口にした。
祓戸大神とは、
今現れている瀬織津姫神は、
海原の渦に集まる
その性質通り、
藤は玲花に依り憑いた神の気を
それこそ、
「
藤のその努力を知る瀬織津姫神が、さらりと告げる。
「ありがとうございます。それで、瀬織の神」
神から
「何だ?」
「このままでよろしいのでしょうか?」
「ああ、構わぬよ。近いうちに、この娘自身が知ることになるだろうからな。さて、ひと雨来そうだから、お戻り」
そう告げた瀬織津姫神は立ち上がると、「この話は
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