不破咲耶の裏事情

いさなぎ

プロローグ

少女は未だ


--どうでもよかった。というより、関心という言葉の意味を理解していなかったのかも知れない。


「咲耶」

呼ぶ声に鮮明になっていく意識。

振り向けば見知った顔。


「またぼーっとしてたの?」

「そうかも」

「相変わらずだね。アンタは」


笑みを浮かべながら横の席に座った友人。

授業が終わりもう放課後となったこの時間では生徒も少なくなり、閑散としている。


「……終わった?」

「まだ途中。でも抜けてきた。あたしはもう決めてるし、話すだけ話してさよならよ」


それだけ言うと、友人は私の顔を覗き込む。


「咲耶は決めた?」

「んー」

「早く決めなよ。この時期になると流石に他のヤツらも決めてるよ」

「そうだね」


適当に相槌を打つと、廊下から足音が聞こえてくる。普段何ともないものでも、人気が少なくなったこの時間帯では確かに響く。


「よっ!」

「清水か。お疲れ。部活?」

「いいや。進路相談。方針はなんとか決まった」

「良かったじゃん。進学?就職?」

「進学」

「勉強しなきゃヤバくない?」

「それな。死ぬ気でやるわ」


笑っている友人とクラスメートのやり取りを眺めていると、クラスメートと目が合う。


「んでさ、新城が不破を呼んでた」

「私?」

「なんか話したい事があるっぽい」

「……」


いわゆる呼び出し。

無視するわけにもいかず、少女は荷物をまとめる。


「職員室だよね?」

「おう」

「一緒に行こうか?」


様子を伺う友人に、笑みを浮かべて首を振る。


「平気。先帰ってていいよ。ありがとう」


そう告げて、少女は荷物を持って居心地の良い教室を後にした。

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