四つ葉のクローバー

立花音符(たちばなおんぷ)

sid.裕奈


私は江籠裕奈小学6年生!!家族は2人のお姉ちゃんがいます。一番上のお姉ちゃんは25歳。愛李っていいます。愛李姉ちゃんは、雑誌の会社に勤めていて、アニメとお絵かきが大好きで、自分をモチーフにしたキャラクターで4コマ漫画を描いている。真ん中のお姉ちゃんは中学3年生。名前はなな子。工学部に入っていて、とんでもなく頭が良くて、お家では、なぞの実験をしたり、ロボットを作ったりしている。そして、私、裕奈は特にこれと言った特技もなければ、頭もよくない。でも1つ自分のことを言うならば、、3年前から私は子役になった。特に女優志望であるとか、アイドル志望であるわけでもない。ある日スカウトされて、突然、タレントとしてデビューした。なぜ私だったのか、未だに分からないことがたくさんあるけど、今のお仕事はとても楽しい。昔みたいに、お姉ちゃんの画力と学力を見て、落ち込むことも少なくなった。入ってすぐに、事務所のバラエティ番組のレギュラーをもらえてこれからと言うところだった。 さて、ある日の朝のことです。愛李姉ちゃんは慌しく準備をしています。

「裕奈、なな子―。ちゃんと準備してるー?」

愛李姉ちゃんが一階から大きな声で言う。

「してますー!あ、ロボットの部品ひとつ無いっ。あれ、裕奈? どうした? 準備は?」

階段の踊り場に体育座りをして、下を向いている私に、なな子姉ちゃんが制服のボタンをとめながら不思議そうに聞いてくる。はぁ、今日も学校か…。そう思うと、さらに顔が下にうつむいた。

「……今日、学校に行きたくない。」

顔を下に向けたまま私はぼそっとつぶやいた。すると制服に着替え終わったなな子姉ちゃんが踊り場まで降りてきて、

「裕奈どうした? 熱でもある?」

と、私の頭を触った。もちろん熱などあるはずも無い。私は首を大きく横に振った。

「じゃあ何で?」

なな子姉ちゃんが聞く。私はゆっくりと顔を上げた。

「だって、つうちゃんが……」

それはいつものように学校に通った日の事でした。教室の自分の机にランドセルを置くと、どこからともなくつうちゃんがやってきて。

「裕奈ちゃん、あなた調子に乗らないでよ。レギュラーもらえたからって、あなたは私の後輩なんだからね。マジウザイ」

「そうよ、そうよ。つうちゃんはスターなんだから」

「あなたとは違うの」

立て続けに攻められる、そんな生活がとてもいやだった。事務所に入ってからそんな日々が続いていた。正直こんな生活もういやだった。

「……って、つうちゃんが言うんだもん。もう顔も見たくないよ」

私はなな子姉ちゃんの顔を下から見上げた。愛李姉ちゃんも踊り場まで上がってきて、私の手を握った。

「裕奈、大丈夫だから学校行こう。お友達のなるちゃんも待ってるでしょ?」

なるちゃんこと、市野成美は私のただ一人の親友。私は事務所に入ってから、クラスではリーダーをはっているつうちゃんにいじめられ始めたので3年前から私には友達がいなくなった。1年生の頃から割りと仲良しだった杏実ちゃんも、沙也加ちゃんもみずほちゃんもつうちゃんが絡むようになってから一言も話していない。まあつうちゃんは態度が大きいから少し怖いのは分かるけど、誰も近寄らなくなってしまったのはかなりのショックだった。まあもう慣れたんだけどね。でも、なるちゃんはそれでも私のそばにいてくれる。なるちゃんもだんだんクラスからはぶかれてきたけど、「裕奈は悪くないし、裕奈は裕奈だし、私は私だから、他人にどうこう言われる筋合いは無いんだよ。私たちらしくやればいいんだよ」っていつも言ってくれる。私がつうちゃんたちに色々言われてても、止めにはいてくれるし、ほんとにやさしいし大好き。でも、学校には行きたくない。でも行かなかったら、なるちゃんがつうちゃんたちにいじめられてしまうかもしれない。そう思うと、なぜか不思議と腰が浮いた。

「……うん」

「よし、やっと立ったか。なな子、行こう!」

愛李姉ちゃんは手をぎゅっと握ると私の背中に手をおいて軽く押した。

「はいさ。裕奈のランドセル取ってくる!」

なな子姉ちゃんは階段を駆け上ると一番手前の私の部屋から真っ赤なランドセルを取ってきた。つうちゃんに付けているキーホルダーについて何もいわれたく無いのでランドセルには何も付けていない。私はなな子姉ちゃんからランドセルを受け取ると、それなりに気に入っている黒のスニーカーをはいて玄関を出た。私たち3人はいつものように手をつなぎ、道を進み、いつもの歩道橋に来た。いつものように階段を上り、長い歩道を過ぎ、もうすぐで下り階段にさしかかろうとしたとき、歩道の脇に真っ赤なワンピースを着た、見たことの無い女の子が私を見ていた。特に私は関心が無かったのでそのまま女の子の隣を過ぎようとした、そのとき。

「にゃはーん。見えたっ。江籠裕奈11歳。アハハ……」

と、その子は言った。え?何で私の名前を?その疑問は私の足を止めさせた。

「え? あなた、誰? 何で私の名前を?」

私は女の子の顔を確認しながら言った。やはり、その顔に見覚えは無い。するとまたその子は何かを話し出した。

「にゃはーん。簡単なことだよ。わくわくーみんきらめくーみんきっと明日もんにゃハッピー」

「何それ?」

「ほら裕奈行くよ」

なな子姉ちゃんが手を引く。私もその子には見覚えが無いし興味も無かったので、なな子姉ちゃんの言うことを聞いて、また歩行に集中し始めた次の瞬間、

「にゃはーん。落下!」

と、女の子が叫ぶ。その言葉に反応して私たちが振り向くと、3人そろって階段から足を踏み外し……見事に下の歩道に落下した。しばらくして、

「裕奈、なな子大丈夫?」

「なな子、大丈夫ですっイタタタ。あれ? 裕奈、大丈夫? ねえっ裕奈?」

と言う愛李姉ちゃんとなな子姉ちゃんの声がかすかに聞こえる。私は動くことも、返事をすることも出来ず、ただ、目を瞑って小さくうずくまる事しか出来なかった。頭が痛い。一体私は…。そう思っていると、2人の声も徐々に小さくなっていき、じきにその声も聞こえなくなった。

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