第16話

 家に帰って、私は買ったマンガを読んだ。

アイドルの娘たちが切磋琢磨する中で自分たちの恋愛感情に目覚める、という内容である。短いお話だが切ない感情の描写が素晴らしい。キャラクターは他のマンガやアニメからの借り物でも、これもやはり創作の一つの形なのだと思う。

 こんなきっかけで新しい世界への扉が開かれるとは思っていなかったが、ずっとくすぶっていた私の創作の芽がようやく現われようとしていた。


 机に向かってノートに小説のあらすじを書いた。

おおまかにいえば、死んだ人の代替物として生まれた人工生命が故人の知識や振る舞いを学ぶうちに自我に目覚めるという話だった。


「うーん。これは『鉄のアトミックボーイ』の冒頭みたいじゃないかな。初めて書く作品としては壮大過ぎる気もする。しかし、同じ題材でも全く別の作品にはなりうるし、引っ張られ過ぎなければいいんだろう。書いてみろとしか言えないな。」とヘンパイは言った。「『鉄のアトミックボーイ』は知ってるかい?」


「名前だけは。アニメもちょっとだけ見た事があります。」


「ジャンル小説は類型が多いから書きやすいけれど個性が出ない。まあ誰も高校生の同人作品にそんなものは求めていないがね。」


「得能さんはなんて言ってるの?」

「まだ読ませていません。」


「最後はどうなるの?」

「独立して終わり、かな。」

「私は誰かと一緒になってハッピーエンドになる方がいいかなって思う。」

「依存対象を見つけて終わりにはしたくない」

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