あくま退治のりゆう

@waniwani777

プロローグ

 この瞬間に限り、皆は悪魔に対する恐怖や国に対しての不満など無かったに違いない。それ程までにこの広場に集まっている民衆の歓声は凄まじいものがある。

 そしてその熱気の全ては演説台の上にいる鎧姿の女性に注がれていた。

 何者であろうと屈さないであろう引き締まった顔つきに、まるで金糸を織り込んだ様な美麗な金髪、彫像の如く高身長。そんな貴婦人を思わせる容姿を裏切るような褐色の肌に短髪。そんな彼女の容姿は日差しにさえも祝福されているのか照らされ栄えて見える。

 その女性が演説台から降りると、一人の女性がすかさず声をかけた。

 その女性はきめ細やかな白い肌で肩口ぐらいの長さがある漆黒の髪、そして矮躯な体とどこまで金髪の女性とは対照的だった。

「しばらく顔を合わせることもないし、最後にどう?」

 その言葉の意味を金髪の女性が理解できたのは勘でも何でも無く、ただ深い間柄というだけの事だ。その問い掛けに金髪の女性は清涼な微笑みと共に返答する。まるで待ってたかの様な嬉々とした雰囲気を隠そうともせず。

「ああ……成る程、そういう事か。私もお前との力の差をはっきりさせたかった。このままずっとお互い同じ〝副団長〟じゃ納得いかないしな。最後に決着を着けよう」

 黒髪の女性の問い掛けは『最後に決闘しないか』という事だ。

 色好い返事に黒髪の女性もまた、金髪の女性のように闘志を燃やし嬉々とする。

 この短いやりとりに再び周りの民衆は沸き立つ様な歓声を上げた。皆が興奮するのも当然だ。何せこれはただの決闘ではない。

 

 誉れ高いヴィー騎士団の、それも副団長同士の決闘なのだから。

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