第27話 突然の指名

「おじちゃん、お待たせ。『ナプロキセン』って薬に変わったよ。これなら他の薬と一緒に飲んで大丈夫。それとね、熱が下がったら飲まなくていいって先生が言ってたよ」

「そうか。サンキューな。しかし、春香ちゃん大したもんだよ」

「いいえ、これくらいみんなやってる事だよ」

 謙遜しつつも久しぶりに褒められたことが恥ずかしくも嬉しくて頭を掻いた。

「ところで、このかかりつけ薬剤師ってなんだい?」

 おじちゃんは投薬カウンターに貼ってあった、かかりつけ薬剤師を推進するポスターを指さして言った。

「これね、ちょうどお話しようと思っていたところなの。かかりつけ薬剤師っていうのは、患者さんの担当にならせてもらって、お薬の事なら24時間・365日責任を持ちますよって事」

「ヘぇー。じゃあ、春香ちゃん、俺のかかりつけ薬剤師になってくんねぇかな?」

「えっ? えっ!?」

 突然の逆指名に私は驚いた。期待していなかったといえば嘘になるけど、今までこちらからお願いしても全然指名が取れなかったのに……。こんな事ってあるのだろうか。

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