第463話 南国リゾートでリフレッシュ

 朝から良い天気で、海水浴日和である! 朝食の席から、既にワクワクが止まりません!


「……朝から何をそんなに浮かれてるんだ?」

「海水浴だからです!」

「かいすいよく?」

「今日は皆で海に入るのよ」

「え? 海? お婆さま、気は確かですか?」


 昨日、同じような事を言った人がいましたねえ。慌てる銀髪さんに、ジジ様はのんびり答えてる。


「浅い砂浜で泳いだり、海に浸かるだけでもいいんですって。体にもいいそうよ」

「はあ? そんな事誰に……って、お前か」


 そうでーす。発案したのは私でーす。というか、一人で海で遊ぶつもりだったのに、いつの間にか皆で、になってましたが。


 結局ジジ様に押し切られた銀髪さんでしたが、水着に着替える段階でまたしても騒動が。


「これだけか? まさか、この格好で外に出ると?」

「あなたのはまだ露出が少ない方ですよ」

「ええ!?」

「私達のはもっと肌を出すの。ふふふ、初めての経験ね」

「ちょ! お婆さま!? 何考えて――」

「さあさ、ここは他に見ている人もいないのだから、いつもよりもおおらかに行きましょう!」

「そういう問題じゃなくて……お婆さま!!」


 無事、銀髪さんはジジ様に完全に押し切られました。


 渋々着替えてきた二人が、別荘の居間に入ってきた途端、また叫ぶ。


「な! 何て破廉恥な!!」


 銀髪さん、あんたもか。まあ、女性陣にもラッシュガードを提案したところ、全員から「いらない」って言われたましたからねえ。


 この中で目に毒なスタイルなのは、リーユ夫人かなあ。ジジ様も年齢の割にはスタイルいいけど。侍女様方はぽっちゃり多し。ユゼおばあちゃんも、どっちかっていったらそっちだな。


 銀髪さんと剣持ちさんは、真っ赤な顔でこっちを凝視してる。いや、ハレンチとか言うんなら、視線逸らしなよ。まーいーけど。


「海に入るには、この格好をすべき、とサーリが言うのだから、そうなのでしょう」

「お前か! 元凶は!! って、お前までそんな格好で!!」

「元凶って何ですか! 失礼だな。嫌なら海に行かなきゃいいんですよ! そんな格好って、海に入るのに水着を着るのは普通の事ですからー」


 まったく銀髪さんったら。自分も水着に着替えても、まだ反発するか。どうせジジ様に強制参加させられるのに。


 と思ってたら、やっぱりジジ様からのお言葉が。


「何です、いい年の男が。女性のあられもない姿くらい、見慣れていなくてどうしますか、情けない」

「な!」

「あなたもあなたですよユーニド。カイドの側付とはいえ、女性に対してそこまで苦手意識を持っては、いずれ家を継ぐ際に困りますからね」

「そ、そんな事は……」

「言い訳は許しません! 悔しいのなら、恋人の一人も作って見せなさい」


 これで二人とも撃沈。いやジジ様のお強い事。


 何とか黙った銀髪さん達だけど、ちらちらこっちを見てくるのはやめていただきたい。文句あるなら、口で言いましょうね。




 別荘で着替えて、ケーブルカーで浜辺に下りる。ちゃんとビーチパラソルもチェアも敷きものも用意しましたとも! 抜かりなし。


『亜空間収納内にある素材で、間に合わせですが』


 いいんですよ。耐久性は求めていないから。崖の上の別荘周辺から、浜から半径二キロ程度の距離の海まで、結界で覆ってある。


 危険生物が近づかないように、ってのもあるんだけど、紫外線対策もしてあるんだ。いきなり無防備に肌をさらすと、日焼けで大変な事になるからね。


 でも、紫外線ゼロだとそれはそれで寂しいから、幾分日焼けはする感じ。あ、サンオイルも作っておけば良かった。


『すぐに作成可能ですが、どうしますか?』


 何故その素材が収納内にあるのかは別にして、作成よろしくです!


『承りました』


 使う素材が何かは、この際考えない。綺麗に日焼けする為だ。焼きすぎるとシミそばかすの元になるけど、やっぱり夏は小麦色の肌でしょ!


 他の人にも使うか聞いたら、皆首を傾げている。そっか、日焼け自体よくわからないんだ。


 北国だから、雪焼けくらいはするかと思ったのに。そういやこの人達、やんごとない人達だから、冬は外に出ないんだね。


 とりあえず説明して、魔法で全員に塗っておいた。銀髪さん達がギョッとしていたけど、まだらに焼けるよりはましだと思うよ。


「ここから海に入るのね」

「あ、ジジ様、一応準備運動をしておいた方がいいですよ」

「それは何?」


 プールとかに入る前に、体を動かしておくもの。子供の頃、海に行った時もその場でラジオ体操してから入ったっけ。周囲からは笑われたけど。


 という訳で、護くんを出してラジオ体操の音楽をかけた。


「この音楽に合わせて、体を動かすんです。私がやるように動いてみてください」


 学校で散々やったから、まだ体が覚えてるね。懐かしいなあ。


 女性陣には、浮き輪やフロートを貸し出す。溺れられても怖いからね。いや、護くんがいるから、溺れそうになったら網で掬ってもらえるけど。


「じいちゃんもいる?」

「いんや、水に浮く程度なら、問題ないじゃろ」


 魔法で浮くつもりだな。でも、それもありか。銀髪さん達は……と思ったら、二人して敷きものの上で膝を抱えてるんですけど。大丈夫?


「うるさい、近寄るな!」


 何だよもう。心配しただけなのに。いーもん、一人で楽しんでくるさー。


 女性陣の皆さんは、波打ち際で楽しんでる。ここ、良い感じで入り組んでいるからか、波が穏やかなんだよね。


 じいちゃんは少しだけ沖の方に出て、ぷかぷか浮いてる。気持ちよさそうで何より。


「じいちゃん、楽しんでるー?」

「おお、こうして水に浮くのはなかなかどうして、楽しいものじゃのう」

「だよねー。銀髪さん達も、楽しめばいいのに」

「ほっほっほ、若いのう」


 若い方が、楽しめるもんじゃないの? 海って。首を傾げても、じいちゃんは笑うばっかりだしなあ。


 さて、私はバナナ型フロートを使って、水上を爆走だ! 本当はパワーボートとかに引っ張ってもらうんだけど、うちのは魔法で動く。


「ヒャッホー!!」


 おお、これ結構なスピードが出せるな!


『安全の為、速度上限は設けておきます』


 あー、水面って結構固いって言うしね。でも、今くらいスピードが出せるなら、いいや。空を飛ぶのとはまた違う爽快感。いいなー。


 ひとしきり楽しんで浜に戻ったら、妙な表情の銀髪さんがいる。


「さっきのは何だ?」

「ああ、海で遊ぶ……ボートですね」


 嘘は言っていないけど、真実でもない気がする。あれだけのスピードを出すボートなんて、こっちの世界にはまだないと思うんだ。


 銀髪さん達も、疑わしげな目でこっちを見てる。いや、でも一応ボートだよ? あれ。


「……安全なのか?」

「もちろん。落ちても怪我をしない程度の速度ですし、もし落ちても護くんがすぐに救いあげてくれますよ」


 実は一人に一台、専用でつけている。銀髪さんと剣持ちさんにも、一台ずつ護くんが頭の上をふよふよ浮いている。


 初代から何度かアップデートを重ねて、今は単機能ならかなり小さく出来るようになりました!


「俺も、あれを試したい」

「カイド様!?」


 銀髪さんの申し出に、剣持ちさんが驚いている。いや、私も驚いた。銀髪さんってば、剣持ちさんを見てにやりと笑った。


「どうせこんな格好でこの場所にいるんだ。少しは楽しんだ方が得だとは思わないか?」

「それは……」


 うん、まあこんな状況だったら、楽しんだもん勝ちだからね。それはいいと思うよ。


「んじゃ、お二人でどうぞ」

「あれはどうやって操るんだ?」

「あ」


 うちのバナナボート、魔力のない人には操縦出来ないんだった。


 結局、私が操縦するボートに、二人を乗せる事になりました。まあ、楽しんでもらえたようなので、良しとする。


 銀髪さんは途中で振り落とされそうになってたけどね。ちゃんと掴まってないと、危ないですよー。


 その後、興味を示したジジ様達も乗りたがったので、じいちゃんと私で手分けしてボートを操縦しましたとさ。




 そんなこんなで、楽しんだ南国の海。昼は浜辺でまたしてもバーベキュー。潜り鹿の肉は大変美味しゅうございました。


 海は午前中までにして、午後からは温泉入って汚れを落とし、皆でお昼寝。水遊びは疲れるからね。明日はのんびり過ごそうかなー。


 明後日には、ダガードで交易品の追加をもらってこなきゃ。船団が買い込んだ交易品は、既に亜空間収納の中だし、問題はない。


 あー、いいリフレッシュになりました。

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