第91話 それならいける!
デンセットから帰る途中、砦を見てみる。うん、確かに何かでかいのが見えるね。しかも、また大きくなってないか!?
じいちゃーん! 本当にそれ、何作ってんのー!?
「ほ? おお、帰ったか」
「いや、帰ったかじゃないから」
「何ぞ、あったか?」
「大ありだよ! これ!! さっきより大きくなってるじゃん!」
もう、箱船どころの騒ぎじゃない。小山程度に大きくなってる! 作業区域一杯一杯だよ。どうすんの? これ
「ふっふっふ、これなら空の上でも楽に暮らせるぞい」
「本当に!? 凄ーい! ……って、そうじゃないから!」
あやうく丸め込まれるところだった。さすがじいちゃん、やるな。
この大きさだと、浮かべるのにかなり魔力を使いそう……飛びウサギの素材を使っても、うまく浮かぶかな……
「何なんじゃ? 帰ってきて早々きゃんきゃんと」
「何でこんなに大きくなってんのよ! 設計図とは違うでしょ!?」
「大きさの事かのう? それなら、あとで縮めればいいんじゃよ」
「縮める?」
何言ってんの? せっかく作ったゴンドラ縮めたら、意味ないでしょうが。
不審な目で見る私に、じいちゃんは胸を張って答えた。
「亜空間技術を応用しての、この船をもっと小さい箱に入れてしまえば――」
「あ! そうか! 狭い空間も広く使えるって訳だ!」
「う、うむ。そういう事じゃ」
私が途中で言葉を盗っちゃったから、じいちゃんがちょっとしょげてる。ごめんね、じいちゃん。
でも、そっかー。亜空間収納の技術を応用すれば、こんだけ大きなゴンドラでも、小さく出来るんだ。
さすがじいちゃん。凄い!
本日の作業も全て終了し、ひとっ風呂浴びて夕飯の時間。
「ほう、飛びウサギか」
「うん。でも、ゴンドラ部分を小さく出来るなら、いらないかなあ」
「いや、魔力は温存しておいた方が良かろう。それに、寝ている間も飛行させたいんじゃろう? なら、術式で飛ばすより素材を使った方がいいんじゃないかい?」
それもそうか。じゃあ、やっぱり明日は海水汲みと飛びウサギ狩りに行ってこないと。
じいちゃんにそれを言うと、なんとじいちゃんも一緒に行くという。
「わし、まだ飛びウサギ狩りはした事ないんじゃ」
「なるほど、やってみたいんだね?」
「うむ」
まー、じいちゃん一人籠に入れて吊り下げるくらい、どうって事ないし。砦の方は侵入者よけの結界を張っておくし。
あ、迎撃システムは亜空間収納の中で地味に量産しておいたから、あれを起動させておくのもいいかも。
食事後は、少し食休みしつつ空を見上げる。澄んだ空には満天の星。もう少ししたら、ダガードは冬に入る。
初めての北の冬。どんな感じなんだろう。
その前に、冬になる前にこの砦、修繕し終えるのかな……ちょっと心配。
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