第13話

 灼熱の太陽が降り注ぐなか3人は各自の持ち場にうずくまりリディロの連中を待っていた。各自に準備は整えた。エッガー老人のくれた銃は型こそ古くはあったがよく手入れが行き届いておりそこらの下手な銃より使えるものばかりであった。

 ノーバディとコルダは大量のライフル、小型のピストルに手榴弾を持って行き。キテレツな銃好きがいたのだろう見たこともないような銃はアレルヤが大量に持っていた。

 彼女のボンクラ武器好きがこんな所で役に立つとは思わなかった。

 馬の蹄の音は益々大きくなっていた。もう奴らはまもなくここにやって来るだろう。そしてついに連中の姿が肉眼でも見えてきた。最初は小さな影のような大きさだったがそれが、どんどん大きくなっていくようであった。無理な走行を続けてきたのだろう。馬の蹄の悲鳴が聞こえてくるようである。

 馬は大事に扱えよな、荒くれの風上にもおけねえよとノーバディは思った。

 ノーバディは、罪がない馬は撃ちたくなかったが今は致し方なかった。3人はライフルを構え迎撃の準備に入りつつあった。

 しっかり狙いを定めて3人は一斉に発砲。たった3人だけの発砲である。あまり全体で鳴り響くような発砲音ではなかった。

 だが突如として共同墓地から発砲を食らったリディロの一味は亜卑怯間な状況であった。皆が馬を止まらせても発砲が鳴り止むことはなく狙いに定められた者はどんどん撃たれていった。3人は正確無比に撃ち続けていた。まだリディロの連中に3人の居場所がバレていない分こちらに有利である。こちらの有利が続くまで撃ち続けるのを止めなかった。

「た、体制を立て直せ!列を乱すな。突撃を、かまえッ!」

 リディロが大声で指示を出している声が聞こえるが、そもそも付け焼き刃で雇ったならず者にそんな事を聞く信頼や能力を連中は持ち合わせてはいなかった。

 3人の発砲は続き最初の数百人から少しづつではあるが数は減ってきているようであった。だがそれに合わせて連中も共同墓地には数人ほどしかいないというのがバレ始めていた。

 今まで闇雲に前進しているだけであったが連中は3手に分かれて墓地を覆うように馬を走らせた。それに気づいたノーバディは残りの2人に指示を出した。

「いいか、連中はここを回る気だぞ!こっちも対応しろ!」

 コルダとアレルヤはそれぞれ身を低くして持ち場から動き連中からの周りに動いていった。

 アレルヤこのご時世では珍しい手回しの機関銃を取り出して荒くれたちを蜂の巣にしていった。

「こいつはすごい!まさかこんな時代にバンバン撃てる代物があるなんて革命軍様々だよ!」

 コルダも手持ちの手榴弾で敵に爆発をさせた後横転した馬が壁となって後続の連中が来れないようにしていた。各自が結果的に協力し合ってる形でこの共同墓地は未だに守られているままであった。大半の連中を片づけた後、ノーバディは大声で2人に言う。

「今アタシは132人殺ったんだがよ。これ1番殺った奴が先に墓を開ける権利を決めるってのはどうだい?」

 ノーバディの問いに対してアレルヤは答えた。

「その提案に乗ったぞ。なんせ私は今数えで141人だ。乗らないわけにはいかないね」

 アレルヤの答えにノーバディは顔をしかめた。

「お前はその機関銃を使っていたからだろ!?そりゃあ反則だぞこのクソ尼!」

「屁理屈は無しだ名無し!どのみち多く殺らなきゃ私たちの命はないんだから!」

 アレルヤは大声でノーバディに言ってそのまま、銃を構えて発砲し始めた。

 

 死屍散乱とはまさにこのことであった。それこそ本当に死体の山が出来上がるのではないかと思うくらいにそれは散らばっていた。

「さて結局何人だ!アタシは150人だがね。これはアタシの勝ちでいいんだよな?」

 ノーバディは高らかに声を挙げた。いくら有利な形でリディロを攻め立てたとはいえこの数は人間業ではなかった。

「それなら私も150人なのだがね。あと1人はどこにいったのかね?まさか君が数を鯖をよんだ訳ではあるまい?こんなものいくらでも誤魔化しは聞くもんだからね」

 アレルヤの皮肉にノーバディは反論する。

「それはてめえも言えたことだろ?だいたいホントに300人いたのか?サバ読み過ぎて数がおかしいんじゃないのか?」

 2人がいがみあってるなかにコルダも走って戻ってくる。

「争ってる場合じゃないよ。リディロは何処に行ったのさ?」

 たしかにリディロの死体は見あたらなかった。そうこう一同が言っていると死体の中から1人出てきた男がいた。それは負傷して顔つきがぐちゃぐちゃになったリディロであった。

「このクソアマどもが!」

 雇った荒くれが全員やられてリディロの顔は激昂していた。いつもの柔和な顔つきは当に消え失せていた。リディロは銃を構えてノーバディとアレルヤの所に近づいていった。2人は銃を構えてリディロに狙いを定めていた。

 2人が撃とうとしたときに間から硝煙と発砲音が聞こえた。2人はまだ撃っていなかった。見るとコルダがリディロに容赦なく発砲していた。

うっ!とリディロが倒れると彼はそのまま動かなくなった。

「可愛がってくれた罰よ。そのまま地獄に堕ちなさい」

 フューとアレルヤが口笛を吹いた。

「やるじゃねえか嬢ちゃん。いいぞこれで全員なはずだ。合計301人。これでマーシャの財宝は私たちのものだよ!」

「それで、結果はどうなるんだよ?」

 結局、決着がつかない状況にノーバディは不安そうであった。彼女の言葉にアレルヤは言った。

「勝負はお預けさ。なに、遺産を手に入れたなら、また後で勝負すればいいだけの話じゃねえか」

 アレルヤの言葉にノーバディはしぶしぶ同意するしかなかった。


 エッガー老人の所に戻ると彼は既に作業を終えており椅子に座ってパイプを吹かしていた。

「ようやく終わったかい。年寄りには酷い耳鳴りになるわい」

 エッガーはそう言いながらも修復していたベルスタアを持ってきた。

「ほれ、お目当ての物じゃ。こいつさえあれば、若造の遺産に必要なもんは全て揃ったよ」

「ありがとうな爺さん。これでようやく全ての事は終わったんだよな?じゃあとっととアーチストンの墓まで行こうじゃじゃないか!」

 ノーバディとコルダがエッガー老人に礼を言って部屋から出ようとしたとき呼び止められた。

「もし遺産を手に入れたなら、中身がなんだったか教えてくれないか?この老いぼれに死ぬ間際への手みやげとしてあの世に持って行きたいんじゃ」

 ああ、いいぜとノーバディは言って部屋から出ていった。コルダも老人を見つめていたが、すぐに入り口に振り返り部屋から出ていった。


 ノーバディとコルダがアーチストンの墓に着くと既にアレルヤが待っていた。

「おい待ちくたびれたぜ。これ1人じゃ開かないんだ。手伝ってくれ!」

 そう言ったアレルヤにコルダは無言で2本のスコップを地面に投げた。アレルヤは、はっとコルダを見つめた。

「世の中には二種類の人間がいるわ。財宝を取ろうとする奴と財宝を取ろうとする奴を見守る者よ」

 コルダの言葉にやにやとアレルヤを見ていたノーバディも今の言葉に耳を疑った。それはアタシにも掘れってことかい?とノーバディも思い顔をしかめた。

 2人が墓を掘り進めてから数十分が経過した。アーチストンの墓の無名戦士の墓には粗末な棺が堀り出てきた。ノーバディとアレルヤはスコップで乱暴に開けると棺には何も入っていなかった。

「こりゃあどういうことだ?・・・棺に何も入ってない」

 ノーバディの落胆の声とは裏腹にアレルヤは、から笑いをしていた。

「はは、私たちのやってきたことは全部無駄になった訳だ」

 アレルヤはスコップを放り投げると匙を投げるように言った。

「そのマーシャの遺産とやらはアナタ達に譲りますよ。やってられないね。私はもう降りるよ」

 そうアレルヤが言った瞬間にコルダは言った。

「いいえ。ここに財宝はないわ。もっと別の・・・そうこのアーチストンの墓は、いわば目印なのよ」 

 コルダはそういって空になった棺の板を叩き始めたかと思うとそのまま棺から鈍い音を立てると棺の奥底をコルダは叩き壊していた。その中から小さな地図が現れたかと思うとコルダは地図を広げて言った。

「やっぱりね。ここまではあくまで遺産の中継地点にしか過ぎないのよ。ここを通って初めて本当の遺産にたどり着く権利がもらえるのよ」

 コルダの説明にノーバディとアレルヤは首を傾げた。

「つまりどういうことだ!?アタシ等は、また最初から宝探しごっこに追われるのかい?」

「いいえ遺産の場所はここから近いわ。鍵も手に入れたしそう長い道のりではないわ」

 コルダの言葉にノーバディとアレルヤは地図を見てみるとどうやら本当に近いようであった。ここからなら、ものの半日も掛からない。

 

「なあこんな所に入っても大丈夫なのかい?」

 ノーバディは先頭を切って歩いていたコルダに言った。口には出してないがアレルヤもいぶかしんでいた。

 3人は今ウェイトランドと看板に書かれていた現在では使われていない廃墟の町にまできていた。コルダが言うにはこの町に遺産があるそうであったがこんな所に財宝があるとは2人には思えなかった。

 コルダが町の一角にあった一軒家に入ると床をそそくさと調べ始めた。家の中は埃にまみれており長年人は住んでいなさそうであった。コルダは床下を黒い鷹でコンコンと叩いていた。そして床下から軽い音が鳴り響きたら彼女は床をはがして床下を見た。ノーバディとアレルヤも床下を覗くとそこには空洞になったいる階段が眼に見えた。

「降りるわよ」

 コルダは一言いって下に降りていった。

「おい、なんでお前場所分かんだよ!そこまで地図に載ってなかっただろ!」

 ノーバディの質問にコルダは簡素に答えた。まるで、何も思い入れがないかのように、

「簡単な話よ。ここ私の家だったの」

 3人は床下の階段に降りながら話を続けていた。

「ええと、つまりアンタの親父さん。イングリッシュ・マーシャは家の中に財宝を隠していたのか?」

 アレルヤは驚いたように言った。コルダはアレルヤに「そうよ」とだけ言った。アレルヤは階段の状態を確かめていた。木造建築の階段が数十年で風化している状態ではなかった。見るからにかなり古い作りの階段である。

「まさに木に隠すやら何やらって奴ね。この階段も何年も前から作られたものじゃないみたいだな?」

「そうみたい。元々脱出用に作ってたみたいだけどその中に宝物庫も作ってたみたい。一度だけ聞いたら何代も前に先祖が作ったみたいよ」

 3人は黙々と地下の階段で下り続けていた。数分すると大きな扉の前にたった。

「でけえなここが遺産の場所なのかい?」

 アレルヤの問いにコルダは首を縦に振った。

「しかしまあどう開けるよ?何せこんな大きさだ。エッガーの所から拝借した爆薬を使っても開くかどうか」

 それを聞いたコルダはおもむろに自分の腰からベルスタアを抜き取った。そしてベルスタアを持って扉の目の前まで歩いていった。

「ここで爺に直してもらったこのベルスタアを使うときが来たのよ」

 コルダはベルスタアの銃身を扉に付けられた鍵穴に差し込みそれを思いっきり回した。

 扉から鈍い音が鳴るとそのまま奥へと扉が開いていった。ベルスタアは文字通り遺産のカギとなっていた。

「ようこそ。イングリッシュ・マーシャの遺産へ」

 コルダの説明に2人は言葉を失っていた。扉を開けた瞬間にそこには数々の美術品や金銀財宝が目に映った。2人はコルダにここの説明を受けていたが、あまりの情景に耳には入らなかった。2人はただ目の前の財宝に眼を奪われているだけであった。

 ようやく事の状況に気づいた2人は駆け足で財宝に走り向かっていった。

「これでホントにマーシャの遺産まで案内したわ。この財宝はアナタ達にあげるわ。好きにして頂戴」

 コルダは、そう言ってマーシャの部屋に置いてあった資料置き場のような所に向かい何か資料を探し始めた。

 以前、約束した通りノーバディとアレルヤは財宝を山分けする事にした。互いに財宝を目の前にしたらいつ裏切るか考えていたが、ここまでの財宝を目の前にされるとそんなことは当のとっくに吹き飛んでしまった。何せ一生掛かっても消費できるか分からないくらいの財宝である。今更、半分にしてしまっても不利益になるとは思えなかった。ノーバディとアレルヤは互いに同意をして財宝を持ち帰ろうとした。

 しかしあまりに量が多いので小分けにして少しづつ持ち運ぶことにした。最初に小分けしたノーバディが袋に詰めた財宝を隠すために町の入り口まで歩きそこから馬に乗って隠し場所まで走らせていった。その間アレルヤは地下の部屋でコルダと留守番をしていることになる。もし彼女が財宝を持ち逃げするには厳しいほどに溢れているし、こうして互いに交互に持ち運ぶようにして運んでいった。

 

 これでよし。

 ノーバディがそう言って財宝を隠し終えると一息着いた。2日ほど掛けて彼女の故郷の近くにある荒れ地に埋めた。町には何もないことは分かってはいたので、寄る気などさらさらなかった。彼女の記憶にとって汚点とも呼べるような場所であった。今でもここに来ると昔の記憶を思い出した。だが、ここは何時来ても様変わりとは無縁の場所である。だから彼女にとって、ここは故郷以上に財宝を隠す場所として重宝してきた。人気もないのも合わさって誰もが気味悪がって近づかないのも幸いした。彼女は今回もこの辺りにマーシャの財宝を隠す予定であった。

 思えば案外あっけない形で終わりを迎えそうであった。ノーバディにとってこの2週間近い旅はかなり短い旅のようであった。そう考えると少し寂しい感じもした。その寂しさを紛らわすかのように酒場で数え切れないほどの酒をあおり男婦を買って気を紛らわしてもいた。

 だが今さら自分にそんな贖罪は許されない2度と友を作らない、仲間を作らないと誓ったのにこの有様だ。アタシの心には未だにこんな生っちょろい言葉で埋め尽くされ、まだ病原菌のように生き延びていやがった。10年前に兄を革命で亡くしてから毎日考え続けてきたことだ。アタシは孤独だ、いや孤独であり続けなきゃならない。先に死んじまった奴らに申し訳がたたないんだ。


 コルダの家の地下に戻るとアレルヤだけがいた。聞くところによるとコルダはノーバディがいなくなった数日後に出て行ったらしい。

「さあ、お前の番だよ」

 ノーバディはそう言って近くの酒場で売っていた酒をアレルヤに投げ渡した。

「アンタえらく気が利くじゃんかよ。正直これがなくてつらくてね」

アレルヤはそう言って酒瓶を開けグビグビと飲んだ。

「さて私はそろそろ行くよ」 

 ウォッカを飲み終えたアレルヤはノーバディに言った。

「この詰めに詰め込んだ財宝を隠すのには何日掛かるんだい?」

 ノーバディの質問にアレルヤは答える。

「何そんなに掛けるつもりはないさほんの数日さ。アンタがあまりにも遅かったんでね。ここで暇をつぶすのは中々に苦労したぜ」

「なあに時間をつぶす方法はいくらでもある。せいぜい楽しんできな」

 ノーバディの言葉にアレルヤは笑った。互いに遺産という財宝は手に入ってからというもの気分が非常に良かった。

 それから数日過ぎにアレルヤが帰ってきて今度はまたノーバディが財宝を埋めに行った。また彼女が戻ってくると今度はまたアレルヤが埋めに行った。

 そんなことを何度も何度も繰り返した。だが繰り返していくいくうちにノーバディはアレルヤを見かけなくなった。あのガメツい女が財宝を余らせて帰るのも変な話ではあったが、あまり気にせずにノーバディは財宝を隠し続けていった。


 アレルヤは財宝の隠し場所は見つけずに仲間の待つアジトに持って行った。彼女にとってここが家であり家族がいる場所であったから自分1人で横取りするなどとは考えにも及ばなかった。だから彼女は自分のホームに帰ってきた。あいつ等を養うにはもっと金がいる。その為にはもっと稼がなくちゃならない。彼女は馬を走らせて財宝を片手に帰宅についた。

「アレルヤだ、アレルヤが帰ってきたぞ!」

 アレルヤがアジトまで戻ると多くの仲間に出迎えられた。彼女は抱き抱えられる形で馬から降りてもみくちゃにされていた。

 アレルヤの周りは喧噪に満ちており皆口々に「体は大丈夫なのかい?」、「あの変な女に嫌なことでもされたんじゃないの?」と彼女を気遣ってくれていた。アレルヤは手荒い歓迎を抜けると皆に言った。

「みんな聴いてくれ!アタシはついにイングリッシュ・マーシャの財宝を見つけたんだ。今は何も言えねえが少なくとも皆の暮らしは今よりもぐっとよくなる。だから安心してくれ!」

 アレルヤの言葉に彼女の所にいる者は黙って彼女の話を聞いていた。

「もう煩わなくて大丈夫なんだ。アタシ等は金持ちになれるんだ!」

 アレルヤの言葉を聞いて誰も口を開かなかった。アレルヤは周りを見渡し目があった仲間の老婆に視線を傾けた。視線を感じた老婆はアレルヤに何か言いたげな顔をしたが、それでも口ごもり何も言わなかった。

「おい、皆なんだよ水くさいな。何か言いたいなら何か言えって!何でも欲しい物が手にはいるんだってば!」

 そう聴いた老婆は恐る恐るアレルヤに言った。

「アレルヤ私はね。金なんていりゃあしないよ。ここにいる連中と毎日、今のように楽しく平和に暮らせればいいんだよ。せがれも孫も殺されちまって途方に暮れてたアタシを身を持って接してくれたのはアンタじゃないかアレルヤ・・・」

 老婆の言葉に皆がうなずき始めた。彼らにとってアレルヤはリーダーという立場以上に精神的な柱になっていた。老婆の言葉に続いて皆が口を開き始めた。

「ああ、そうだよ婆さんの言うとおりさ。事実、俺たちは金がなくても何とか暮らしてるし最近皆で学校だって作ろうって話もあるくらいだ。だからアレルヤよお。そんなに気を背負い込むなって。アンタはよくやってるし皆の誰もが信頼してるさ」

 そうだ、そうだ!と皆は声を張り上げて若者に賛成した。

「おまえら」

「だからよおアレルヤ俺たちのことも少しは信頼してもいいんじゃないかなあ?俺たちに出きることなら何だってやってやるさ!」

 皆がワイワイと騒ぎ始めようとした、その時、隠れ家の入り口から乾いた拍手の音が鳴り響いた。それはパチパチと気味の悪いくらいに洞窟内をよく鳴り響いていた。

「財宝よりも日々の糧を取るか。何とも美談だな」

 富裕層のスーツを着た男が、洞窟の入り口に立っていた。明らかに賊の連中を10数人引き連れて、

 不味い状況だと、すかさずアレルヤは判断し銃を引き抜き男のいる方向に発砲したが、スーツ姿の男のすんでの所で外してしまった。アレルヤの行動に男の取り巻きの連中も銃を腰から抜こうとしたが、スーツ姿の男に止められた。

「躊躇がないな。だが、銃はよく見てから狙え。ガンマンとしての常識だぞ」

「アンタどこのどいつだい?見たことない顔だけど、悪いけどここの場所を知られたんだ。生かしちゃいけねえよ。アンタ賞金稼ぎか何かかい?名前くらい名乗ったらどうなのさ?」

 アレルヤの問いに男は一呼吸置き淡々と答えた。その名前の意味をよく知りながらも、まるでその受け答えには躊躇がなかった。その名前を聞いたとき誰もが耳を疑った。

「マーシャ。イングリッシュ・マーシャさ」

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