Jewels 第1話
4月。
俺、
去年俺たちが作ったスマートフォン向けアクションゲームランサーはバージョン2.0の大規模バージョン以降、何度か細かなアップデートを重ねた。しかし、現在は一旦バージョンアップ作業を控えていた。なぜ控えているかについてだが、やめよう、と話し合ったわけではない。自然にそうなっただけだ。
自然にというのはどういうことか。
それは多分、俺たちが通っている学校が地元では有名な進学校、ということが少なからず影響している。俺たち3人は今は同じ高校に通っている、が中学は別々の学校に通っていた。それぞれその中学である程度優秀な成績をとりこの高校に通っているわけだ。そう、だから俺たちは高校でも優秀な成績をとり、そしていい大学に行き、いい会社に就職して・・・みたいな見えないレールをひかれている。
それなのに1年前。
俺たちはゲーム作りに熱中した。
熱中しすぎた。
成績があれよあれよと急降下していくのは想像に難くないだろう。もともと勉強のできるやつらが集まっている高校だ。単純に勉強に使っている時間が彼らより少なくなればそうなってもおかしくはない。
中でも杉本の成績が一番下がっていた。
もともと悪かったから、と本人は言っていたがそれでも355人中200番台後半をうろちょろしている、というのだから、もうちょっと勉強しなよ、と植村に言われていた。
ただ杉本は数学の成績だけは良かった。
学年で2桁の順位に入ることもあったのだ。なぜかというと、これはすごく杉本らしい理由なのだが、アニメーション、演出などを作るときに数学の知識は役に立つからというものだった。
例えば三角関数。(サイン、コサイン、タンジェントのあれだ。)
三角関数はアニメーションに必須の知識だ。単純にある画像を回転させようとするときには三角関数の知識がいる。ライブラリ(プログラムを容易に書くためのツールの集まり、というイメージで大丈夫だ)があるから知らなくても、と思うかもしれないが手の込んだアニメーションを作ろうとすると三角関数を知らないとけっこう苦労する。他の生徒が、三角関数なんて何に使うんだよ、と嘆いてる隣で杉本はG-engine上でこの三角関数をガリガリ使っていたわけだから飲み込みも早いのは当たり前だ。この点については先生たちの間でも不思議だったようだが、杉本の数学の成績だけがいい理由はこういうことだった。
と、杉本の批判ばかりしていると悪いので俺と植村の話もしよう。
結論からいうと俺と植村は成績をなんとかキープしていた。
すごいじゃん、と思うかもしれないが、正直二人ともなんとかキープしていた、というのが現実だ。中学まではこんなに勉強を頑張らなくてもいい成績はとれた。(少なくとも俺はそうだった。)
でも高校に入るとここまで違うのか、こんなにやらないとダメなのか、というのが去年1年の高校生活の感想だ。
ゲーム作ってる暇なんてないじゃないか、と。
高校生とか暇なんだろ、と世の中のおっさんたちは思っているかもしれないが、そんなことはない。仕事サボってるおじさん達よりよっぽど俺たちの方ががんばってるよ。俺は声を大にしてそう言いたい。
学校の勉強、成績、G-engine、ゲーム作り。
やることが盛りだくさんな中でランサーのアップデートは自然に後回しになってしまっていたのだ。
そんな中。
高校2年になり学年が1つ上がったこの4月。
俺たち3人は同じクラスの仲間になっていた。
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