【スキンヘッドビーム】
アザミは両目を覆うとその場にしゃがみ込んだ。
「気をつけて!」セリが叫び、回転レシーブのように転がるとアザミを抱きとめてさらに回転した。
そこに強烈なビーム砲が突っ込み、地面からジリジリと煙が立ちのぼった。
「さっきのと同じ光よ! シガキマサルのつるピカ○○丸光線よ!」セリはアザミを庇いつつ全員に大声で注意を喚起した。
不良連中の中にひとりスキンヘッドの男がいる。個平スタイ学園の牧、シガキマサルだ。そいつが太陽光を頭部に反射させ、ビーム砲に変換して発射していたのだ。
シガキマサルはいったん顔を上げると太陽光をいっぱい頭頂部に集め、ふたたびスキンヘッドを今度はツムリたちに向けた。
「ハレーションだ! 近くから光を見ないで!」ヒロシが叫ぶと同時につる○○ハゲ丸光線が発射された。間一髪全員がうまくよけたが、敵のひとりがまともに光線を浴び、バッタリ倒れた。
「おいおいおいおいなかなか本格的やないけコラ」さすがのオサムも焦りの色を隠せない。
マサルはふたたびスキンヘッドの頭頂部を太陽に晒し、エネルギーを充填しはじめる。
「来るよ! 溜めてる溜めてる!」
「ヤヴァいやんけボケ……」熊が振り回していた鮭をピタリと止める。
シガキマサルはなかなか充填を終わらせない。おもいきりキツい一発を放ち、スズナを除く全員を亡き者にしようとする意志が感じられた。
スキンヘッドが熱で光りはじめた。殺戮のエネルギーがあふれ出そうになっている。
マサルがサッと頭頂部をこちらに向けた。ハレーションがツムリたちの視界を一瞬真っ白にさせ、続いて強烈な○○ピカハゲ丸光線が発射された。
「ぐあっ」
「ぎゃっ」
「すごっ」
「へげっ」
火炎放射器がジャングルの木々を焼き尽くすかのごとくに、マサルのつるピカハゲ○光線は校庭一帯を舐めた。逃げまどう味方のはずの不良軍団どもは次々に倒れていき、バラバラに散っていたツムリたちのうち、とうとうチヂワレヒロシに光線が命中した。
「スズナちゃん……」かすかにそうつぶやいたのち、ヒロシはバッタリ倒れて動かなくなった。
スズナと一緒に逃げるツムリは足をつまずかせ、コロンと転倒した。いったん光線を止めたシガキマサルは今度はそんなツムリをロックオンし、砲台を向けるような感じで頭頂部をツムリに向けた。
「スズナちゃん逃げて!」ツムリがオロオロしているスズナに向かって叫んだ。どうやら足をくじいたようで動けない。
「……バカだな、狙ってんのはてめえだけさ」シガキマサルは下を向いた状態でニヤリと笑った。
「……!」ツムリは観念し、両目を閉じた。
やられる……。
これでもう最後だ。
と、不意にドサリ、という音がした。
なんの音だ。目をつぶっているのでわからない。
それに、いつまでたっても光線が来ない。
おそるおそるツムリが目を開くと、そこにはシガキマサルの姿はなかった。
いや、いるにはいたが、誰かに後頭部を踏まれており、うつぶせに倒された状態で手足をジタバタさせていた。
マサルのかわりにそこに立っていたのは……シガキマサルの後頭部を踏みつけているのは……モミノコヂョーだった。
どうやら空からプチドラゴンに乗ってやって来たヂョーが、そこから飛び降りてシガキマサルに靴の裏で打撃を与えたようだった。
「……」ツムリは声が出ない。かたわらのスズナも同じだ。
「ヂョー、あなた来たのね」
ツムリが見ると、目の見えないアザミに肩を貸しているセリがそこに立っていた。
ヂョーは金髪をかき上げ、
「第二多魔湖まで行ったんだけどよ、竜巻が上がってんのが見えたから急遽こっちにコース変更したのさ」ニヤニヤしながらそういうと、踏みつけているシガキマサルの後頭部をさらにグリグリと靴の裏で地面に押しつけた。マサルは体をえびぞらせ両手足をピンと伸ばすと、気絶したのかパタリと動かなくなった。
その間も周囲で乱闘は続いている。
「おもしろいことになってんじゃねえか。俺も噛ませてもらうぜ」
いきなり地響きが聞こえてきたかと思うと、南多魔エリアの不良騎馬軍団が、動物たちととも一気に校庭になだれ込んできた。
味方がいっぺんに増えた。とりあえずの味方が。
「パオーン!」
「ウガーッ!」
「キーッ!」
象が唸り、ゴリラが吠える。
上空を旋回しているプチドラゴンが火炎弾を放ち、火だるまになったたくさんの不良連中が逃げまどう。ヂョーに率いられた騎馬軍団は校舎の中にもなだれ込み、廊下、教室、そして屋上にあふれ返った。それぞれの場所でさらに混沌とした乱闘が展開され、あたりはカオスと化した。
ヂョーはその場にしゃがみ込み、後頭部を踏みつけていたシガキマサルのズボンを脱がそうとしはじめた。
「……あなた、何をするの?」セリがヂョーに声をかける。
「決まってんだろうがよ」ヂョーがセリの顔を見ずにいう。
「兄貴」そこへヂョーの直参であるモヒカン、スキン、パンチ、ピアスヘッドの四人がぞろぞろと集まってきた。
「おお、てめえらも手伝え」
「へえ」
そうして、五人は寄ってたかって個平スタイ学園の牧、シガキマサルの尻をむき出しにさせようとしはじめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます