Crazy Days~悪魔が舞い降りる夜~
蒼井 円
Day0 ~プロローグ~
夏の終わりの柔らかく穏やかな陽が車の窓から射し込む、そんな夕暮れの日だった。
夏休みの帰省だろうか、多くの県外ナンバーの車が反対車線を通り過ぎて行く。
助手席で、射し込む西日を遮るようにサンバイザーを下げながら優が涼介を見た。
「涼介、どうしたの?聞いているの?」
運転しながら、左手で両側のこめかみを揉むような仕草をする涼介を見て、優が声を掛けた。実家で送り盆を終えた帰り道、涼介の車で妹の優を駅まで送ろうとしている途中でのことだった。
「ん?前の車のナンバーがぼやけて見えるんだ.....目がおかしい。体も震えて、動悸もしているようだ」
「車を止めて!大丈夫なの?」様子のおかしい涼介を見て優が叫んだ。
「ああ、どうかしちゃったらしい。あのコンビニに入ろう」
涼介は道沿いにあるコンビニの駐車場に車をゆっくりと入れ、停車させた。「大丈夫なの?」優が亮介の顔をのぞき込みながら聞いてくる。
「ああ、ちょっと休めば大丈夫だと思う」
「私コーヒーでも買ってくるから。氷とか濡れタオルとかは必要?」助手席のドアを開けながら、優が涼介に声を掛けた。
「いや、冷たいコーヒーだけで大丈夫」優はそれを聞き、コンビニの中に駆け込んでいった。
「どう?落ち着いた?」優はコンビニを出て車に戻ると、運転席の窓から涼介に買ってきた缶コーヒーを手渡しながら聞いた。
「雲の上を走っているようだった。周りがセピア色に染まりだし、違う世界に入ったかのような。何が起きていたのかよくわからないんだ」涼介は胸に手をあて動悸を抑えようとしていた。
涼介は優に手渡された缶コーヒーを開け、一口飲んだ。
「冷たくておいしいよ。もう落ち着いた。大丈夫だと思う」
「ちょっと待って、大丈夫じゃないでしょ。私運転代わるから、席交換して」
涼介の様子に不安を感じ、優は車のドアを開け、涼介を運転席から助手席へ追いやった。
「どうしたの?仕事疲れ?」
「いやそういうことじゃないと思うけどな。申し訳ないけどマンションまで頼むよ。俺のマンションからなら駅まで歩いていけるだろ」
涼介は母親と離れ、市内の駅近くにマンションを借りていた。
この春から仕事がうまくいっていないことは優には黙っていた。
「大丈夫なの一人で?」優が不安げに聞いてくる。
「鼻の奥でなにかが焦げているような匂いがする。脳みそでも燃えているのかな」
「病院行った方がいいでしょ」
「少し横になれば大丈夫だと思う」
「なんかあったらすぐ連絡寄こしてね。絶対だよ」優がアクセルペダルを踏んだ。
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