ヒーローがいるのに平和な街

ヒーローがいるのに平和な街の裏


「初めましてだな。私を殺す権利を持つ者よ」





ヒーローがいるのに平和な街の表


「アハハハハ! わーいわーい、私を追っかけて来てくれたんだー!」






ヒーローがいるのに平和な街の裏


「ああ……やっと会えた……だから僕に殺されてくれ……徳永切裂!」







ヒーローがいるのに平和な街の表


「アハアハうるせぇよ! あゆみをとっとと返せや、叶!」











暗闇の空間


「「嫌だ」」


 とうとうここまでやって参りました。いやー、長かったです。本当に長い間、前兆を観ていただきありがとうございました。ですが、まあこの長い時間を使ったおかげで私たち暗闇の空間の苦労を、この物語を通じてわかっていただけたかと思います。そうです。そうなんです。私たちは、ずっとずっと前からこの日の為に様々な準備をしてきたのです。

 刀銃という奇怪な育ちと名前をしている子供を見つけ出し、その子供を観察対象においた上でヒーローがいるのに平和な街で生活をさせ……整形して田中雄二そっくりの外見にさせたり。時期が来たと同時に死んで情報成分とだけなった田中雄二と、実験の段階でいじらせてもらった徳永切裂の情報を遠い遠い国から奪い取り、それを更にいじり無理矢理刀銃の中に入れたり。そのおかげで刀銃は徳永切裂の殺人術と田中雄二の銃操作能力……田中雄二の肉体に近い運動能力と、刀銃としての温和な性格を持ち合る一般人になりました。何ですかねこのクオリティ。私は平成ライダーが好きなのですが。

 そして、佐藤栄作という復讐に燃える若き警察官を利用する為、入街の段階で記憶をいじり、田中雄二に似た刀銃の存在に気付かないように仕様。更にこの街の地下で生活をさせ、叶香里という佐藤栄作の殺された彼女に似た人物に会わせました。

 皆さん方がこれだけの仕事をして凄いと私たち暗闇の空間を褒めてくださることでしょう。ええ、いいんです。全く不満はありませんよ。私なんてただここで解説してるだけで、実際には何の処置も施していませんから。苦労なんてこれっぱっちもありませんので、私は褒められて幸せです。

 ですが、私たちが行った演出は、これだけではないのです。そうです。皆さんご存じかと思います。というよりここまでの話を聞いてあの人物のイレギュラーさに気付かない人はいらっしゃらないでしょう。すいません。あの人物の変化を懇切丁寧に語ってくれる主人公は、誰一人いなかったので。


 そう。叶香里です。


 平和な街に住む変態。刀銃の最初の友人。ですが徳永切裂の記憶の中で快楽殺人犯の幽霊という半端じゃない立ち位置のキャラになり、その上佐藤栄作の恋人の姿に瓜二つという彼女。

 叶香里。

 彼女の説明を、していません。

 しかし、まだこの段階では何もいうことがありません。何故ならそれは、この先の展開のネタバレになるからです。これから先の展開上、彼女の説明を根掘り葉掘りした直後、皆さんは私につかみかかってくることでしょう。いやこれ本当なんですよ。信じてください。いえ……職務怠慢ではないです……はい……すいません……二度とアンキパンを使って演説の内容を覚えようとはしません……はい……あの……すいませんでした……。

 えー、ゴホン。それでは気を取り直して、参りましょう。

 今までの私たちの努力の結晶をとくとご覧ください。

 ヒーローがいるのに平和な街。いよいよクライマックスです。


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 それじゃ、最後の仕上げよろしくね、セバスチャン。

 ……ってあれ?

 これまだ、回線切れてないんじゃない?

 え、嘘。あ、ちょっと皆さん、待ってくださ

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