第95話 ふみふみ

 猫は赤ちゃんの頃お母さんのお乳を飲む時、手でお乳を揉んで「ふみふみ」する。大きくなってもその名残で、人に対してや柔らかい毛布などでふみふみする。そうすると落ち着くようだ。ウチの子(猫)も子猫の頃わたしのお腹をふみふみした。今は柔らかいぬいぐるみや手触りの良い膝掛けでふみふみをしている。わたしのお腹ではふみふみしなくなった。

 しかしある日一緒にベッドで寝ていた時、猫はふみふみを始めた。わたしの二の腕で。確かに肉がよくつき、ぷるぷるしているから気持ち良いだろう。だが、痛い。それになんだろう。このもの悲しさは……。そんなに二の腕がたるんでいるのだろうか……。猫がわたしにふみふみするのは安心しているからだと思うと嬉しいが、複雑な気分だ。

 そんなわたしには目もくれず、喉を鳴らしながらふみふみするウチの子の姿があった。

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