第61話 お風呂

 わたしがお風呂に入っている時、猫はバスマットの上で待っている。基本的にお風呂に入っている時はお湯が飛び散るので扉を閉めている。たまに扉を開けると、猫が入ってくる。だが床が濡れているのが嫌なのだろう。手足を振って水気を散らしながら進む。そして、湯船に入っているわたしを見て中を覗く。お風呂の中に入ってくるかとわたしがわくわくしていると、そのまま踵を返して出ていく。わたしはそんな猫に声をかける。


「ちゃんと足拭いてから出てよ!」


 しかし当然のことながら猫は聞いていない。わたしがお風呂から出ると、猫の足跡が点々とついている。

 また別の日湯船のお湯を抜いていると猫が入ってきた。そして湯船の縁に飛び上がった。湯船の縁も濡れていたのだろう。猫は滑って湯船に落ちてしまった。あっ!と驚いたが、お湯はほとんど抜けていた。しかし、猫はびっくりしたのだろう。慌ててお風呂から逃げていった。そして、濡れた体を毛繕いしていた。

 猫はもうお風呂には入ってこないかもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る