第36話 肉きゅう

 わたしは、猫の肉きゅうが好きだ。見ているだけでも可愛いが触るとプニプニしてなんとも言えない幸せがこみ上げてくる。

 ウチの子(猫)の肉きゅうは、三毛猫らしくピンクや黒っぽい部分がある。しかしウチの子の肉きゅうに触るのは容易ではない。元々体に触られることを嫌っているのだ。肉きゅうのような敏感な部分を触られたがる訳がない。だからわたしは眺める。猫の肉きゅうを。

 そんなわたしが、猫の肉きゅうを触ることができるのは、猫が横になっている時だ。猫がだら~っと横になっている時が良い。肉きゅうが無防備なのだ。わたしは隣で横になっている猫の肉きゅうを触るため手を伸ばす。


「肉きゅうボタン、スイッチオン!」


 わたしは、バカな叫び声をあげ、肉きゅうをプチッと押す。だが肉きゅうの感触を堪能できるのは一瞬だけだ。何故ならすぐに猫パンチがわたしの手に炸裂するからだ。

 わたしは、少しでも肉きゅうを堪能するべく、今日も猫の肉きゅうが無防備になる瞬間を待っている。

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