第35話 遠くから

 わたしがベッドの上で本を読んでいる時だった。


「ゥゥァゥゥゥゥゥゥァウウウアアアアア」


 だんだん近づいてくる声。走りながらなのだろう。声が震えている。叫び声のような、そうでないような声らしきものを発しながら猫がわたしの所へやって来た。


「ンアウッ」


 猫は何か怒っているようだ。鼻息が荒い。一体どうしたんだ。先ほどまで猫はケージで寝ていたはずだ。そうか。猫が寝る時わたしが側にいた。しかし猫の目が覚めたら、わたしがいなかった。それで慌てたのかもしれない。

 それにしても、なんて声を出すんだ。

 ウチの子は本当に猫なのだろうか。

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