第3話 隙間

 猫は狭い隙間が好きだ。ひげで入れるかどうかを判断して、大丈夫なら隙間へ突進していく。

 ウチの子(猫)を一部屋で生活させることに失敗し、どの部屋にも行けるようになった。しかし、二部屋だけ猫を入れるのを止めようと思っていた。それは、トイレと洗面室だ。トイレは狭くて奥に入られると何かあった時に困る。洗面室は洗濯機があるためだ。洗濯機の後ろに入られると手が届かない。

 しかし、猫は自分の縄張りで知らない場所があることが嫌なようだ。

 わたしがトイレへ入り出ようと扉を開けた時、猫がするりと入ってきた。止める間もなく奥へと入っていく。わたしは扉を開けたまま猫の動向を見守る。猫は隅から隅まで見てから出てきた。満足したようだ。


 ほっ、何もなくて良かった。


 次に目をつけられたのは洗面室だ。洗面室もわたしが出入りする時を狙われた。わたしが洗面室の扉を開けた時、猫が入ってきた。あっ、と思った時には、猫は洗濯機の横に入り始めていた。


 どうしよう。自分で出て来られるだろうか。


 ハラハラしながら見ていると、洗濯機の反対側の横から出てきた。埃とともに……。

 あぁ、だから洗濯機の後ろには行ってほしくなかったのに。仕方がない。猫が掃除してくれたと思おう。

 こうしてウチの子の行けない場所は、玄関だけとなった。

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