誰だ。

@butasan

第1話ー

「私」は看護師。

「あなた」は患者。

その中で何が生まれる?

生まれてからどうする?


ねえ、どうするの?

「私」はどうするの?




-1話-


「いつも、ありがと。」


毎回必ずそう言う高齢の男性患者がいた。


何が?

と思いながらも

ーはいはい、こちらこそー!

適当にあしらい次の受け持ち患者のもとへ向かう。


しかし、「いつも、ありがと。」じいさんは看護師から人気であった。

感謝されにくい職業の看護師であるため

いつも感謝してくれる「ありがとじいさん」は、看護師にとって自分の存在意義になるんだろう。

存在意義というものは言葉だけで埋まるものであろうか。

「言葉」は「言う葉」と記す。

葉はヒラヒラと儚く、重さもなく、散っても生えても誰も気が付かない。

そんな葉を集め、一喜一憂する彼女たち、同僚たちには全く賛同できずにいた。



そんなじいさん、松木さんは肺炎で入院中。

肺炎に付きものの「絶食中」だ。


ー松木さん。早く元気になって御飯食べられると良いですね。


「ありがと。」


ーありがとって?


「…。」


ほうら。

やっぱり唯言ってるだけじゃないか。


馬鹿馬鹿しくなり、この場を立ち去ろうとする。

そんな私に松木さんは


「元気に、なるよ。」


天井を見ながらそう言った。


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