プレイボール!

@ryusei-0525

第1話「帰ってきた」

「もう、数年以上も会ってないな。」拓也たくやは、電車の中でそう思った。

拓也の親父、和幸かずゆきは、プロ野球選手で日本やアメリカで活躍してたスーパースターだ。

「平成のミスタープロ野球」と呼ばれ伝説の男になったのだ。

和幸が引退してから2年が経ち家族は日本に帰国したのだ。そして今。

生まれ故郷の長野県に帰る途中なのだ。

拓也の家族は、6人家族で、4人の兄弟姉妹きょうだいだ。

母の奈緒美と、長男の拓也と次男の裕也ゆうやの双子と、

1歳離れて長女の菜奈美ななみと次女の菜穂子なほこの双子という珍しい兄弟姉妹なのだ。

そんな拓也たちには友達と呼べる親友は数少ない。と言っても、今になってはそれさえも不安であった。

(菜奈美)「拓也兄ちゃん。何考えてるの?久しぶりに帰るのに嬉しくないの?」

菜奈美が不思議そうに聞いてきた。拓也は、「そんな事ないよ」と言って誤魔化した。

「次は~長野中央駅~。長野中央駅~。」電車の中にアナウンスが響き渡った。

和幸は、「さてと。じゃあ降りるぞ。」と言って席から立ち上がった。それに続いて拓也や裕也、美咲、菜奈美と続いた。

駅に着くと、人で込み合ってた。屋根を見ると、「本田選手夢をありがとう!」と書かれた横断幕が飾られていた。どうやら、みんな親父和幸のファンらしい。和幸は、笑顔でファンに手を振った。駅前にはタクシーが待っていた。拓也達はそれに乗って、新しい家に向かった。

拓也と裕也は、残り1ヶ月【長野中学校】お世話になる事になった。早速、拓也の前にある壁は

高校入試だった。拓也と裕也の間で意見が分かれていたのだ。

裕也は、確実に甲子園に行きたいからといって私立の強豪校に行こうと考えてる。

俺は、全日制の公立高校に行きたいと考えていた。

親からは、2人が納得する意見を出せと言われてたのだ。

そこで、拓也達は一打席勝負をする事になってたのだ

もちろん拓也は納得してた。引越しが終わってからする約束だった。

裕也は、中学野球最強のスラッガーとして全国や全米に名前が知れ渡っていた。

日米合わせて100校がスカウトしてきた。

それに対し拓也は、少年野球の時にエースピッチャーとして活躍しただけで

ブランクは相当あった。

(裕也)「じゃあ、兄さんそろそろ決着をつけようよ。」

というと裕也は木製バットを持って俺の準備を待った。

拓也は、「はいよ。」と言ってジャージに着替えた。

決着の舞台は、拓也が完全試合をやった思い出の公園。

久しぶりの拓也は念入りにアップをした。

時計が3時を指した時、拓也はゆっくりと左肩を回しながらマウンドに向かった。

もちろん、あの中学最強スラッガー本田裕也が野球をしてるとしった高校の関係者、近所の方々も見に来てフェンスの後ろは人でいっぱいだった。

マウンドの土をゆっくり慣らし、18.44m先の裕也を見るつめた。

拓也は、ゆっくり投球フォームに入って、投げた。

すると、裕也は見逃した。アウトコースぎりぎりの球だった。大きな声で裕也が言った。

(裕也)「ストライクか、さすがのコントロールだよ、兄さん。

     俺が今までのいろんなピッチャーと対戦したけど一回も打てなかったのは

     兄さんだけだった。でも、今日こそは必ず打つよ。」

そう言うと再びバットを構えた。

それを見て拓也は投球モーションに入って2球目はカーブを投げた。


                 「カーーン!!」


打球は、面白いように伸びたがレフトのポールをわずか左にそれた。

「おぉーーーーー」

観客達は、歓声を上げた。と同時に拓也の敗北を意味する歓声だった。今の打球で完全に

アウェーの洗礼を受けた。もうどこに投げれば良いのか判らなかった。本来なら、カーブでタイミングを狂わせてインコースのクロスファイヤーで仕留めるのがセオリーなのだが、

そのカーブを見事に打たれた。もう拓也の知ってる裕也ではなかった。


拓也は怖かった。


何をすれば良いのかわからなかった。

その時だった。

(???)「おいおい!何ビビってるんだよ!」

低い男の声が聞こえた。それに続いて。

(???)「そうだぞー。いくら弟が凄いからって弱気なピッチングになるなよ!」

(???)「てか、そこ負けちゃだめでしょ!」

今度は女の声が聞こえてきた。

拓也は、プレートを外してあたりを見渡した。

すると、最後に俺の人生でもっとも聞き覚えのある声が聞こえた。

(???)「裕也君なんかに絶対負けちゃダメ~!拓也君は絶対負けないんだから!」

この声・・・、とうとう気が狂ったのかあいつらの声が幻聴してきた。

いや、いつも幻聴はしていた拓也が唯一親友と思えた人達だから。

拓也は、やっと正気に戻り、プレートを踏んだ。

そして大きく振りかぶり、右足を上げた。拓也の真骨頂であるダイナミックなフォーム。

両手を広げて、勢い良く上げた右足を地面に着けて腕を上から振り下ろすように投げた。

ボールは直球、しかもコースはど真ん中だった。裕也は笑ってバットを振り出した。

すると・・・。


                     「ブン!!!」


バットのスイング音が聞こえた。ボールはバックネットに当たってコロコロ転がっていた。

拓也は、思わず大きな声で

(拓也)「ヨッシャー!!!」

と、ガッツポーズをしながら叫んだ。

結果は、三球三振で俺の勝ちだ。

『また、お前達に助けられたな。ありがとう。』拓也は、そう思って天を仰げた

すると、

今度は、より近くでさっきの声が聞こえた。

(???)「何、人を死んだふうにしてるんだよ!拓也。」

(拓也)「え・・・。」

拓也は、振り向くとそこには四人の人が立っていた。拓也は、頭の中が真っ白になってると

(???)「あ、もしかして忘れてるでしょ。」

背の高い女性が俺に問いかけると、小さい男性が怒って

(???)「酷くないか?俺達はお前のこと忘れたりはしなかったぞ!」

それに続いて、拓也の前でに可愛い女性がでてきて拓也に問いかけた。

(???)「本当に・・・、忘れちゃったの?拓也君・・・。じゃあ、あの時の約束ね。」

そう言うと、女性は、背伸びして拓也の左頬に顔を近づけて、

(???)「思い出して・・・。拓也君・・・。」

女性はそう言うと、拓也の左頬にキスをして元の場所に戻った。

きずいたら拓也は、顔を赤くしていた。そして、

(拓也)「城本・・・、夏目・・・、緑川・・・、南美・・・。」

すると、四人は笑って「おかえり!」と答えた。

(新次郎)「それにしても、最後のストレート凄かったな。」

(芯)「鳥肌立ったよなぁ。」

拓也は、不思議だった。

(拓也)「でも、最後に会ったの数年以上の前だろ?良く覚えてたな。」

(ルイ)「南美がね、あれは拓也君だって言うから見にきたらそうだったのよ。

     褒めるなら南美を褒めてあげてよね」

ルイがそう言うと、拓也は南美の方を見ると南美は少し頬を赤くしてた。

(南美)「だって、拓也君だよ。家も隣で、誕生日も同じで、名字も同じなんだよ。

     確かに一緒に居なかった時間の方が長いけど・・・

     でも一緒に遊んだ時間はちゃんと覚えてるよ。」

拓也は、正直嬉しかった。帰ってきてすぐに南美達に会えるとは思ってもいなかったし、

何より、ちゃんと覚えてくれてたのを知って少し落ち着いた。

(???)「あなた達が本田兄弟ね。さっきは凄い物を見させてもらったわ。」

拓也は、声が聞こえる方を振り向くとそこにはスーツを着た女性が立っていた。

(???)「私は、【信州長野大学附属中央高校しんしゅうながのだいがくふぞくちゅうおうこうこう】の理事長の『長澤ながさわ 真沙美まさみ』です。」

拓也は、そんな学校は聞いた事がないのでビックリした。すると、裕也がこっちに来て聞いた

(裕也)「確か、来年に開校する新設校ですよね?」

(長澤)「ええ、そうよ。今、新入生を集めてたところなの。

     そこで、あなた達兄弟をスカウトしに来たの。

     長野県いや、日本中を騒がせた2人なら甲子園も夢じゃないわ。

     もちろん、そちらの条件はのむわ。」

長澤さんの話を聞いて拓也は考えた。拓也が公立校に進学をしたいのは目の前に居る南美達と学校生活を送りたかったからだ。そう考えてると、南美が聞いてきた。

(南美)「何で答えないの?」

拓也は、頭の中の事をそのまま答えた。

(拓也)「あ~、俺はお前達と再び学園生活を送る為に公立校に行きたいからさ。」

すると、裕也は何かを思い出したかのように言い始めた。

(裕也)「あ、じゃあ俺達の条件はここに居る全員を貴校に入学させてください。

     もちろん君達もだよ。」

裕也はバックネットの方に顔を向けるとそこから4人がこっちに近づいてきた。

(裕也)「兄さん。みんなにも紹介するよ。」

というと、裕也は紹介してくれた。

細身の体をしている「松井まつい 勇気ゆうき

このメンバーの中で男は彼と裕也だけだった。

メンバーの中で背が高く腰までかかるロングヘヤーの「岡里おかざと まい

彼女は新体操をやってるらしい。

その隣に居たのが元気が取り柄のショートヘヤー「南條なんじょう 千夏ちか

彼女は陸上部に所属してて足の速さは一流だ。

最後に、眼鏡を掛けていてるツインテールの髪型「山岸やまぎし 詩織しおり

吹奏楽部でパートはトランペット。

彼らは裕也がこっちで仲良くしてたメンバーだったので拓也や南美達も知っている。

以上の「8人を学費免除の特待生入学させろと」、言うのだ。普通なら無茶苦茶しすぎて、

話にならないのだが、長澤さんは笑ってこう答えた。

(長澤)「え~~っと、この8人ね。丁度特待生の定員人数で収まるから良いわ。

     それぞれの中学校で、志願理由書と願書等の書類を書いて送ってね。」

なんと、無謀な賭けが通った。信じられなかった。拓也だけじゃなくみんなビックリした。


まさに奇跡ものがたりはここから始まったのだ。


拓也達はその後、言われたとおりに願書等を書いた。そして、すぐに特待生に関する書類と入学に関する書類が入ってた。拓也は、それを持って再び中央高校に集まった。

今日は、4月6日。

入学式の前日に特待生だけの決まりを簡単に説明を聞いた。まだ、校舎も新しく、何もかも最先端の技術が集まってる。学校の中を案内してもらった。体育館は二つ、バスケ部とバレー部の練習場所だ。その隣には、卓球部、柔道、剣道の練習施設、さらに室内プールがあった。グランドは、授業で使う予定だ

学校の近くには野球部、サッカー部、テニス部、陸上部、ソフト部、の練習施設があった。

それを、【信州長野大学附属中央高校屋外運動部練習場】と呼ぶらしい。

野球部はとても敷地面積が大きい。

照明やスタンド、バックスクリーン付のグランドに室内練習場、ウエイトルーム、ミーティングルーム、合宿所、など充実している。

特待生の野球部入部希望者は本田兄弟と4名しか居ないのだ。後は、一般入試の生徒が入ってくる。

明日から、ここで毎日野球に取り組む日々が始まる、特待生の決まりで上の大学に進学が高校からの第一条件なので俺達はおよそ7年間の学生生活がこれから始まる。




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