アンドロイド(仮)
二月 赤猫
アバン
朝、俺が教室に入ると友人の溝口真と清水ももが声を掛けてきた。
「おーす晶」
真はツンツン頭で、いつも通り俺より早く登校する自称イケメン。自分の事をおれっちと言う。
実際にイケメンではあるのだが自分で女好きを豪語しイケメンを名乗っているので、周りの女子からの評価は微妙だ。
俺の評価としてはお調子者で煽てれば木に登るような奴……いい奴ではあるけれど。
「おはよう、あっきー」
ももはこのクラスのヒロインらしい。これは真の勝手な評価だが、確かにクラスでも上位に入るであろう美人。と言うよりかはかわいいタイプの女の子だ。それに男心をくすぐるドジっ娘らしいが、俺から言わせてもらえばドジをあまりに多く踏まれるのは頂けない。
長髪で手入れが行き届いた黒髪なのは評価できるのではないだろうか。
ちなみに、あっきーっていうのは小学校から呼ばれている俺のあだ名だ。
この二人は小学校からの付き合いで幼馴染に該当する。
「おう」
軽く返事をして自分の席に座る。
真は俺の前の席で窓側一番後ろから一つ前。
ももは教卓のまん前の席だが今は真の隣に座っている。
席の決め方は教師が作ったパソコン内でのくじ引きで、俺と真は自分に配られたパソコンから教師のパソコンにハッキングしてくじ引きの内容を改ざんして毎回好きな所を選んで座っている。ももにその技術と知識はない為毎回運で席が決まるが今のところ教卓の前から移動したことは一度しかない。
「今日、学園集会だってね」
「らしいな。めんどくさいけど出ないとうるせーしな」
真の父親はこの学園の学長の息子でそれなりに融通の利く学園生活を送ってはいるが、それは親父さんに言われたことを守ってこそらしい。学園全体行事の出席と学年成績三十位以内と結構簡単なものだが、真曰く縛られることが嫌らしい。
「親父さん何話すんだ?」
「知らねーよ。最近は帰ってくるのも遅いし話してねーな。と、言うか会ってない」
「学長先生すごい働き者だよね。何やってるか知らないけど」
適当なことを言うのがもも。ドジとか言う前にアホである。
「とりあえず、ホール向かうか」
廊下に目をやると他の生徒たちがぞろぞろと歩いているのが目に入ったので二人に言いながら席を立った。
○
ホール内では学年とクラスごとに座る列が決まっているが席は適当。
友達同士で座るため話し声でざわざわがやがやしている。
俺、真、ももの順番で適当な所に座り真が早速ポテトチップスを食べ始める。
この行為は親父さんの言いつけを守る事によって生まれた特権の一つだ。
三人で集会が始まるまで昨日見た番組の話をしながらポテチをつまむ。
全生徒が集まったのか照明が暗くなる。
先ほどまで賑わっていた声はなくなりポテチを食べるパリっという音と、生徒会長がマイクテストをしているコツコツという音だけになる。
生徒会長は周りの教員に目配せすると頷いてから、学校行事について話始めた。
「部長って部活中は真面目に見えねえよな」
ポテチを食べながら話を振ってくる真。
「そうかな? 真面目だから毎日部活で頑張ってると思うんだけど。生徒会長だし」
なにやら論点がずれているもも。
「真面目にやってるわりには未だにプログラムには弱いよな」
と俺。
「真面目に見えない晶はプログラム強いよな」
大きなお世話だ。
「確かにすごいよね。授業中寝てるのに」
「ももは起きてるのに成績悪いよな」
アホのももは何故か照れながら頭を掻く。
「確かに悪りーな。けど、部活の出席率悪りー俺っちたちが部長に対して何か言うのは間違ってるかもな」
ポテチの袋を丸めながら真は言った。
話を持ち出した奴が何を言っているんだ。
「うん、言えないね。手伝ってもいないし。あ、学長先生の話始まるみたい」
ももと違って俺は手伝っているんだけど。
学長の話はどこの学校でもある。おはようございます。から始まった。
「R委員会からの通達がありました。先日、政権が交代があった事は皆さん知っていると思います。えぇ、それでですね。学校の判断でアンドロイドを辞めさせる事が出来るようになってしまいました。しかし、私は皆さんが好きです。誰一人として私から辞めるようには言いません。ですが、自ら辞めたいと言う方に対して、残念ながらそれを取り消す権利を与えては貰えませんでした。書類を出されたら私はその方をこの学園から去れるように手配しなくてはなりません。書類を書く前に一人で考えないで生徒同士、または先生や私に相談してください。また、周りの方が辞めさせてくださいと言った場合。十名以上の署名を用いることで同じように学園から去ってもらう事になります。この学園において、そのような事が起こる事はないと私は信じています。私はこの学園と皆さんが好きです。これからも学園生活を良き物に出来るよう全力で取り組みます。皆さんよろしくお願いします。私の話は以上です」
集会が終わり教室に戻る。
そのまま授業が始まり、真はゲームを始めて、ももは真面目に教師の話に耳を傾けている。
俺は机に突っ伏して学長の話しについてぼんやり考えながら寝た。
二時限目の授業は体育で男子はグラウンドでフットサル。女子は体育館でバレーボール。
試合開始までの軽い運動時、俺と真はストレッチをしながら会話していた。
「親父さん熱く語ってたな。お前と違って」
「俺っちにはよくわかんねー話しだったよ」
「お前と違ってロボット大好きだよな」
「そんな話しだったか?」
「親父さんアンドロイドって一度しか言わなかったよ。言いたくなさそうだったし、あの話し途中から聞いたら何に対しての話かわからないぞ」
「そうだっけか? 聞く気もなかったけどよ」 真の顔を覗いてみたが特に何も考えてはいないようだった。
「それだけ好きなんだろうけど学園とかさ」
親はロボット好きなのに真はそうでもない。
「おれっちには関係ないな」
「そうか」
「そうだ。ほらボール取りに行くぞ」
真は走ってボールを取りに行った。
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