ライチ

菜穂美

明日は私の誕生日。彼は付き合って5回目の誕生日だし、何でも買ってくれると言っていた。でも私は何も欲しい物がなかった。欲しい物がないと言えば嘘になるが、彼に買って欲しい物は思いつかなかった。身に付ける物は身に付けないと文句を言われるし、壊したり失くしたりするのも怖い。やっぱり例年通り、美味しいお寿司とお花をリクエストしよう。彼は張り合いがないと怒るだろうけど。

「これ下さい。」とお客様がレジに出したのは美白効果があるパックにコラーゲン入りのドリンク。高そうなバックに高そうな服。化粧品も百貨店でしか買わなそうなのに意外と庶民的、おっとネイルもしていないんだ、なんて思っていたら、「これ使えますか？」と提示されたのは10%offのメルマガクーポン。使えますよと返事をして割引コードを入力すると彼女は嬉しそうに「ありがとうございます。」と笑った。

あ、素敵なピアス。どこのだろう。

彼女は私の視線に気がついたのか手を耳にやって「kate spade new yorkの新作なんです。何色かあって私はブルーにしたけど店員さんはピンクが似合いそうですね。」と言って私の手から袋を受け取り颯爽と店を出て行った。

いいかも。ピアスにしよう。色は彼に選んで貰おう。それでそれを付けてデートに行こう。彼は喜んでくれるかな。