ヘスペリデスの園で 第1章-後を負う者-
葛宮 真琴。/2019年~活動再開未定
ヘスペリデスの園で
プロローグ
...インクの滲んだその日記は、それ以降、続くことは無かった。その日記が書かれた直後、時の女王・オリビアの長女・アンリエットは、幼いながらにこの国の統率を迫られる。
鴉は見ていた。始まりのことも、終わりのことも。
ヘスペリデスの園で。
......。
─我が主君の恐れていたことが、現実に起きてしまったのだ。それも、我が国で最も尊ばれるべき祭日、建国記念日の前夜にである。
それは、国中の者たちが集まる城内の
壇上ではいつにも増して華やかな装いのオリビア女王が、大窓を飾るステンドグラスの幾重も浮き上がる神秘の陽光に包まれながら、前夜祭の開会式でご挨拶とご祝辞を宣う。そのお隣では、大変緊張した面持ちであらせられるアンリエット様が控えて居られた。
─その時である。
我が主君は...残念ながら我が主君は、特定のできない敵の凶弾により崩御なされた。それも突然のことである。その
陛下の後継者たるお方ではあるが、彼女はまだお若い。このような惨劇を目の当たりにされては、暫くの間は、精神的に立ち直られることは出来なかろう。壇上には、大臣など国の有力者や城に仕える者たちが駆け寄って来た。
─またしても犯人が発砲して来るようなことがあれば、姫君もご無事ではおられないだろう。恐らく、...否、犯人は確実にこの時機を狙っている。
ご息女をこのままにしてはならない。彼女までもを失うわけにはいかない。
それは 、
...そう、気が付いた時には、
しかし、その
ただ、
そんな中、
(......あの者が犯人ではないだろうか...?)
どう考えても、その人物は不自然なのだ。...ただ、あれ程人々が密集する中で発砲するというのは可能であろうか。あの発砲音は正に銃弾のそれであり、御尊骸の傷口を見ても、
直ちに部下等に 彼の者を追わせ、詳しく取り調べさせることにした。もし、その者が犯人なのであれば、国の脅威にもなりかねない組織と関連もあるだろう。この祭典の警戒の中、単独犯とは考えにくい。
アンリエット様は、既に城の者たちにより裏の控え室へと移られていた。この数分間の内に疲れ切っておられるようだった。
─その
......。
六年という歳月の中で、あの事件は未だに解決出来ないでいる。
今、
月日の経過というのは、早いものだ。あの頃は前線にて勤めを果たさんとばかりに執念があった
─我が国イギリスの、うら若き女王として。
......。
これは、遂げることのない復讐劇。報われることのない終わり。決して止まらぬ歯車は、今日も今日とて廻り続ける。欠けたものなど気にせずに。
これは、神話か現実か、そして、未来か過去なのか───。遠い遠い、未来の希望。過ぎ去って逝った、過去の思い出。思いが交錯する、群衆劇。
ヒトが人であり続ける以上、歯車は廻り続ける。そんなこと、鴉は分かっていた筈だ。未熟者なりにでも。
【ヘスペリデスの園で「プロローグ」終】
第一稿 2015/02/18(初出:FC2ブログ)
前回改稿 2017/08/02(カクヨム)
【ヘスペリデスの園で 第1章-後を負う者- To be continue…】
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