君と私の転生記 ~リセット続きの転生者の記録~

テトリミノ

第1話 君の物語「始まり」

「超能力とか、異能の力が欲しいと思った事はある?」


このような問いかけをした時に、不思議なことに大半の人間がはい、と答える。いや、恐らく普通の人から見ればそれが普通なのだろう。だけど普通の人間じゃない、異能の持ち主として断言さして貰おう。そんなものはない方がいい


[人生のリセット]それが俺こと、天道てんどう 勇気ゆうきの異能、いや最早呪い言うべきなのかもしれない


この異能を簡単に説明するなら、死んだら人生が一からやり直される異能だ。周りの人間に「こんな能力があったら欲しい?」などと聞いてみると大半が欲しがるが、持ち主から言わせればこんなものはない方がいいに決まっている


人生は、やり直したところで良い物になるとは限らない。例えば、AとBという選択肢があって、一回目にAを選んだら失敗したとしよう


だからと言って安直にリセットしてBを選択したらいいのかと言ったらそうではない。Bの方がもっと酷い結末になることだってある、というか殆どBの方が酷い。経験者が言うんだから間違いない


リセット前の記憶を引き継ぐ、という点に着目して「ある程度生きたところでリセットして、未来が分かるのを利用して大金持ちになればいい」などと言われた事もあるが、そんな事は何千回と試した


結論から言うと無理である。未来と言うのは不変ではなく、行動によって大きく形が変わるものなのだ。例えば朝食にご飯を食べるかパンを食べるか、それだけの違いで未来が180度変わる


極端な話だと、ご飯を食べたら何もないがパンを食べたら大規模なテロに巻き込まれたりする。そのくらいの違いが生まれるときもある。ちなみに実話だ。その程度の些細な違いで大きく変わる未来を知るなど、何万回リセットしても無理なのだ


またある人には、「何回もリセットすればそのうち誰も真似できない様な技術を身につけたり、勉強しまくれば凄い天才になれるのではないか」とも言われた。コレも無理である。人間の才能や性格というのは何度リセットしても変わらない


例えば、今の自分がずっと練習すればメジャーリーガーになれると思うだろうか?飽きずにずっと勉強し続けてノーベル賞が取れると思うか?もし出来るならそいつは多分リセットなしでも出来る奴だ。何回リセットしても出来ないことは出来ないのだ。もちろん、ずっとやり直し続ければどんな分野でもある程度までにはなれる。しかし、いくらやり直しても本物の天才相手に凡人は勝てないのだ


これだけ言えば分かってもらえると思うが、人生をリセットしたところで偉くなったり、強くなったりすることはない。何度やり直そうが、特に大きな変化のない平凡な人生がずっと繰り返されるだけだ。それどころかリセットを重ねるごとに人生に飽きて、生きるのが面倒になっていく


魅力的な容姿に生まれていればもう少し面白い人生になるかもしれないが、残念な事に俺は顔は凡人の中の凡人と言わんばかりに特徴のない顔つき、身体はどちらかと言うと細い方で、男らしさなどとは無縁の身体である。そして中身も凡人なのだから稀代のプレイボーイなどなれないのである


それならリセットをやめればいいじゃないかと当然思うだろう、しかし厄介な事にこの異能は俺が死ねば自動で発動してしまう、そして俺に発動させるかを選ぶ権利はないのである。永遠と繰り返されるリセット、もう何千回繰り返したかも忘れた


そんな風に今までの自分を思い返しながら歩いていたら、いきなり横から強い衝撃と痛みが襲われ、俺の身体はふっ飛ばされた。薄れゆく意識の中でさっき今で自分が立っていた場所を見ると炎がメラメラと燃えていた。どうやら誰かが仕掛けていた爆弾にふっ飛ばされたらしい


何が原因だろうか?今朝紅茶じゃなくてコーヒーを飲んだから?それともさっき気まぐれで買った宝くじ?……まあいいや、どうせまた繰り返す。俺は静かに瞳を閉じた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る