255豚 風のデニング公爵家①
台風の目。
それは、雲のない空洞部分のことであるという。
ならば今、俺たちがいるこの場所は荒れ狂う
ごおごおと荒れ狂う風の世界。
力強い
高い城壁に囲まれたダリス王都においても王城の次に高さを持つこの時計塔が決戦場に相応しいと思ったからこそ、俺たちは今、ここにいる。
王女を助ける方法として、俺がこんな回りくどい手を選択した理由は二つ。
「
「爺さん。あんたが持っているそれは只の杖じゃなくて
一つ目の理由。
それは戦いの余波を出来るだけ王都ダリスに波及させないためだ。それこそ街中で所かまわず争えば、街並みへの被害は甚大になる。本気でカリーナ姫を奪取しようとする
だから、時計塔の屋根なんかが決戦の場としては相応しい。
そのために、膝をついてぜえぜえと息を吐いている爺さんをここまで連れてくること、てかそれが一番難しいと考えていたんだけど……。
――意外と簡単に、
「あんたが持つ
この爺さん、エレクトリック・ペトワークスのことはよく知っている。
アニメの中では帝国に組した
決戦場をこの場に移してからは、俺の独壇場だ。
時計塔を囲むように
この中で
「何か………見落としておる……先の攻防……あれはまさしく……」
「無視かよ……ぶひぃ……」
ここは養豚場じゃない。だからいまのは俺の声。
…………今のところは何とか思っていた筋書き通り。さらに厄介な爺さんを
「ぶひぶひ……」
少しだけ余裕が出ると思考が横道に逸れる。
店に置いてきたシャーロットとアリシアは無事に兵士達に保護されてるだろうかとか、シャーロットは王族であるアリシアとの待遇の格差に絶望したりしてないだろうか……ま、それはないか。シャーロットは庶民的感覚の持ち主だからな。
「――ねぇ!」
あぁ、そうだそうだ。二つ目の理由。
それは彼女を見て一つの疑問を感じたからだ。
「ねぇ君、ぶひぃじゃなくてさ!」
精霊を映し出す俺の瞳。
これは便利な力で相手の魔法使いが放ってくる魔法が予測出来たり、相手が何の魔法属性に適正を持っている魔法使いが大体分かるチート能力。だから俺は、敵が純粋な魔法使いであれば負けることは無いと勝手に思っている。
しかし、この力は時に可笑しな事実を俺に教えてくれることもある。
例えば今。
屋根に必死にしがみついている例のあの子。今も光の精霊に纏わりつかれている彼女の姿を見れば、自然と導かれる一つの答え。
恐らく彼女は――。
「私、落ちるって! こんな高い所から落ちたら私、死んじゃうよ‼」
――彼女の魔法使いとしての力量は、既に
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