十色の刀 ~少年料理人は勇者召喚に巻き込まれました

渦巻 汐風

第一刀 日常乖離

ここはとある世界のとある国の城の一室。



そこにはこの国では見慣れない服装の五人の男女が魔法陣の上に立っていた。



『勇者様、この世界を救ってください!』


この時俺達は歴史の転換点に立っていたことをまだ知るよしもなかった。






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俺は最上(もがみ) 颯汰(そうた)17歳、平凡な高校の高校二年生で、特に変わった容姿でもすごい才能があるわけでも無い成績だって平均的な普通の高校生。

夢は人を笑顔に出来る料理人になること、その為に高校は専門学校に行くかで迷ったが、親父達の側で勉強した方が楽しいので普通の高校に決めた。


俺の家はちょっと変わっていて家族が全員『料理』と言うカテゴリーの職業についていることだ。

学生の俺は除くが、じいちゃんとばぁちゃんは昔は東京のホテルで猛威を奮ったシェフだそうでよくじいちゃんとばぁちゃんの弟子という人が家に来る。


両親は自身経営のレストランの料理長と副料理長をしている。

店自体はそんなに大きくは無いが美味しいと評判でよく俺も店の手伝いをしている。

そんな生活からか厨房に立たされることが沢山あったからか、必然的に料理は日常生活の一部となっていた。

と言うか、周りにはどう見ても英才教育と見られてもおかしくないくらいの料理のノウハウを詰め込まれてはいるが。


そんな俺の家族の話を少しだけすると、俺には3歳年上の姉がいる。

姉は有名雑誌などで取り上げられるような有名なパティシエで、そんな姉さんが作るお菓子は凄く美味しい。

お菓子が大好きな姉さんは新人の頃の失敗作を俺の元へと持ってきて食べてくれとお願いされ仕方なく食べていたら俺が一時期太ったと言うのは俺の忘れたい過去だ。

その事実に気がついた時俺は慌ててダイエットをしてなんとか元の体型に戻したわけではあるが。


そんな俺の家族だが俺は毎日が楽しい生活を送っていたがある時こんな不可解な事件が起こった。



その事件の始まりはいつも通り両親の店の手伝いをした帰りの途中だった。







「っ!くはぁ~!!今日も店は大盛況、お客さんは大量で疲れたわ」



その日は何の変哲もない平和な日曜日の夕方だった。

背伸びをしながら信号が青に変わるのを待っていると横から楽しげな男女複数人の声が聞こえてきた。



「あ〜。今日は本当に楽しかったね〜」

「特に光輝のあの顔本当に面白かったねぇ〜♪」

「あんな、変な格好して恥ずかしくないの?僕には絶対着れないよ……でも…君を誘惑するには…」


声が聞こえてくる方へと目線だけを向けてみてみると2人の女の子と一人の男?がこちらに向かって歩いてくるのが見える。


「あはは〜ゴメン、ゴメン」

「そんなことより、気になることがあるんだけどさあの水本さんの好きな…」


別に聞きたくもない話であったわけではあるが、哀しいかな俺の耳はその会話を一言一句聞き逃すことなくその声を拾ってしまう。

そのせいで盛大な暴露話を聞いてしまうこととなった。

彼女いない歴年齢イコールである俺にとって、女子の恋バナなど不利益以外の何者でもないのだが。

だからといって聞こえてくる声を自主的にカットできるはずもなくそのままズルズルと声を聞いてしまう。


「静ちゃんいっつもあの例の男子を後ろから見てるじゃん、凄い目で見てることがあってちょっと怖いけど。」

「周りにはバレバレだったけどね、まぁあの男子は気がついてないどころか水本さん、のことを認識すらしていない様子だけど」


(そいつ逆にすごいな、みんなが気がついてるのに気が付かないとか強者だなそいつ)


本当に聞きたくもない話だ。


「水本って、あの水本さん?」


そんな2人の話の中に、中性的な男のようだが女の声のような凛とした声が聞こえた。

どうやらこれまで黙っていた一人の男が話に参加してきたようだ。


「光輝、あんたには関係無いからいーの」

「そうそう、光輝っちは男だから女子の恋バナに首を突っ込まないの」

「…気になるでしょ、…君に僕以外が近づくなんて許せるわけ…」

「何ブツブツ言ってんの?本当に貴方可笑しいわよ」


男?の方は何事か呟く。

それを女の子がいつもの事なのか心配をする。

うわぁ遠くだと顔が分からんかったが女の子達は結構可愛い。

俺と同じくらいの歳の男女だ、しかもさきほど喋っていた2人はなんと2人とも美少女。

逆にすごいな、あれだけの美少女が2人も揃うことなんてそうそうないぞ………一人の男とつるむのは。


俺がちょっぴり黒い感情を光輝と言う美少年、いや見ようによっては美少女にの野郎に心の中で向けていると、突然驚いたような声が聞こえた。

条件反射でそちらに顔を向けると、向こうはこちらを向いていた。


「あっ」

「ん?あそこにいるのは〜、おやおやァ?最上君では無いですか (ニヤニヤ)」

「えっ!!…君!?」


何故か俺の名前を呼ばれた。

そして何故か男、が驚きの声を上げる。俺の顔を見て。

なにか俺の顔についてんのかよ。

ところでなぜ俺の名前を知っていたのかは知らないが、おそらくは同じ学校でどこかで会ったのだろう。

というかなぜ俺を見ながらニヤニヤする何故かわからないから俺にとっては気持ち悪いだけだぞ。

美少女だからって何やっても可愛いと思うなよ!!

………ごめんやっぱ訂正するわ、正直いって可愛いです (ゾクゾク)


というかこのまま呼ばれたまま無視するのもなんかアレだからそろそろ答えないとな。

そろそろこちらを見て訝しがられそうになってるからな。


「何か用「な、何なのこの光は!!」か?」

「分からない、だけど何かヤバそうだ!!皆この光の外に出るんだ!!」


俺の言葉が遮られたと思ったら次の瞬間俺たちの視界が白く染まっていた

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