第24話 〝博士の博士″

【博士の博士】


マビ:『博士ぇ~!

来ったよ~!』


パビ:『おい!なんでお前はいつもそうなんだよ!

失礼だろ!』


マビ:『いいじゃない、ねぇ博士!』


パビ:『あれ?いないよ?』


博士:『こっちだ。そのきらめくような能天気な声は、マビだな?

とりあえず、こっちへ来なさい。』


マビ:『ねぇ博士!んっ?何これ?何してるの?』


博士:『いいところに来たな。

最新の発明品だよ。

ようやく完成しそうだ。』


パビ:『あの、これは何なんですか?』


博士:『お?パビも一緒に来たのか?珍しいじゃないか。

これはな、《いたずらサンタ》って言うんだ。』


マビ:『いたずらサンタ?

何それ!面白そー!』


博士:『私が子供の頃の話だが、私はね、よくある子供と同じように、小さい頃はサンタを信じていたんだ。


でもね。

いつしか、毎年当たり前のようにプレゼントがもらえるものだという時期が訪れた時に、私の父がちょっとしたサプライズを与えてくれたことがあってね。


それが《いたずらサンタ》だったんだよ。


あるクリスマスの朝起きた時に、私はどんなプレゼントが届いているのかなと、枕元を見たときに、あっかんべーをしたサンタの手紙が置いてあったんだ。


そりゃあビックリしたし、ガッカリしたよ。


プレゼントがあるものだと思っていたからね。


そして、ガッカリした私は、その

手紙の裏を見た時、この上ない喜びを感じることが出来たのだ。


そこには、プレゼントの置いてある場所が描かれていたのだ。


父はね、プレゼントをもらえることが当たり前になって喜びが少なくなった私に、プレゼントをもらえなかった時の辛さを与えることで、同じプレゼントでも最高の喜びを感じることが出来ることを演出してくれたんだよ。


私はね。

大人になってから、このことを思い出した時に、幸せというものは、結局自分の想いかた次第なんだということを学んだのだ。


そして、辛い出来事を経験出来たことは、いつも当たり前と想っていることに対して、幸せを感じることが出来る為に、目の前に現れてくれたのだと想えるようになったのだよ。


これは、世界中に与えるべき、教訓であり、愛の行為だと私は想うのだ。


だからだ。


だから私は、この《いたずらサンタ》を発明したんだよ。』


マビ:『へぇ~すごいなぁ。

じゃぁこれは、クリスマス限定の発明品なのね。』


博士:『いや。

わたしは、これをクリスマス限定にしようとは考えていない。


常に活動し続けるものにしたいのだ。


人は、今得られているものや、得られていることに対して、当たり前と感じてしまった時には、次のさらなる欲望が生まれるものなのだ。


それは、きりがない、人間の性というべき習性だ。


そこで私は、人がイヤだと認識している思考が現す波長を感知するセンサーをまず開発したのだ。


そして、この《いたずらサンタ》に内臓させることに成功した。


そして、さらに空気がある限り、活動できるモーターを開発し、《いたずらサンタ》に搭載したのだ。


さらにだ。


カメレオンの擬態変色の能力を素材に活かし、気づかれない姿を構築したのだ。


だからこの《いたずらサンタ》は、世界中に、本当の幸せを与える為に飛び回り、イヤなことを人々に与え続けるようにするのだ。


まぁ、言ってしまえば、いたずらし続けるという悪趣味な人形ということだな。


でも、その行為の真理としては、与えられたイヤなことがあるからこそ、今まで感じることができなかった幸せを、感じることができる経験を与えてくれるというものだ。』


マビ:『相変わらず、こじつけ理論が好きですね。

私から見たら、いたずら好きの変なおっさんだけど。』


パビ:『こらー!失礼だって!

博士に向かって変なおっさんなんて言うなよ!』


マビ:『何よ!

パビは、博士を尊敬していて弟子を気取っちゃってるけど、私にとっては、友達なの!

言いたいこと言って何が悪いのよ!』


博士:『また…いつもの兄妹喧嘩かね。

私は友達だと思ってくれることほど、うれしいことはないよ。

ありがとう、マビ。』


マビ:『ほら!ね!ね!』


パビ:『でも、変なおっさんは、ないよ…

こんなすごい人はいないんだ。』


博士:『まぁまぁ、ところで二人そろって何の用だ?

まさか、喧嘩を見せに来たのではないだろう?』


マビ:『あっ!そうそう!

実はね博士!

私がこの間出会った人に教えてもらったんだけど!』


……


マビ:『…ということで、過去に進む人々がいるんだって!

おもしろいでしょ?』


博士:『なるほど…。

私の睨んだ通りかもしれんな。

しかし、その教えてくれた人は興味深い発言をしているぞ。

気づかないかね?』


マビ:『えっ?なんだろ?なになに?』


博士:『長い間、本当に長い間、ある流れから抜け出せずにいたといったんだね?』


マビ:『うん、確かに言ったわ。

私は特に気にしなかったけど。

博士は、どう気になったの?』


博士:『本当に長い間、ある流れから抜け出せずにいた…

何の流れだろうね?

時間の話をしていたのだから、そのことのようにも思えるが、ただ時間軸だけの流れとは限らないからね。


マビが今に向かっていると答えたこたが、すごいヒントになったということを思い返してみると、今、にも方向性があることを見出したということだ。


そして、我々が未来と考えている先から過去に向かって進むものもいるという。


という事はだ、時間軸は、キレイに線引かれたものではないだろう。その仙人は、それに気づいたのではないかな?


となるとだ、パラレルワールドの存在があることに繋がるんだよ。』


マビ:『ヤッホー!

パラレルワールド、いい!

待ってました!ってやつ。』


博士:『人は、事あるごとに何かを経験する時、同時に二つのことに分かれるんだ。


あなたが幸せと思うと、ツライと思うあなたも生まれる。


もっと簡単に言うと、あなたが右に行くか左に行くか迷った時、あなたが右を選んだとしたら、左を選んだあなたも同時に生まれるんだよ。


その左を選んだあなたにも、進む未来が生まれるのだ。


これが無限に生まれる。


これがパラレルワールドというものだ。


君が出会った仙人は、今という方向性にも進めることを理解した。


ここに何かを発見したんだよ。


神の道でも見つけたのかな?


私にはわからんがね。』


マビ『神…?』



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