第22話 〝時代の時代″

【時代の時代】


リネン:『ねぇ、パパ?』


パパ:『なんだい?リネン?』


リネン:『こんな世界があったら、いいなぁって思うんだ。

この世界じゃ叶わないと思うけど…』


パパ:『どうしたんだい?』


リネン:『この間、すごいSF小説を見つけてさぁ、面白くて夢中で読んだんだけど、この小説の世界というのは、お金というものをどれだけたくさん持っているかで、色んな人生における快適さや幸せを感じる大きさが変わるし、巨大なチカラを得ることができる、そして世界をコントロールすることが出来るんだよ。

ようはさぁ、頭の使いかた次第でチャンスはいくらでもある世界なんだ!


すごいよね!


今の世界とは、大違いだよ…

純粋に闘う力が強いものが世界をコントロールするチカラを持っている。


学校ではさ…

色んな格闘技の授業や、気のトレーニングばっかりで…

僕はいつも成績が悪いしさ、このままじゃ高校にも行けないんじゃないかと不安なんだ。


せめて、労働者にはならないようにしたいんだけど…


あれは、僕にとっては地獄だもん。』


パパ:『そうか…

パパもね、子供のころは同じ悩みを持っていたよ。


この世界では、一般的な教養、知識は平等に与えられ、最低知能指数が定められ、生まれる前にチェックされ操作、調整される。


いわば最低知能指数、一般的な教養、知識さえあればよい。

そうすれば、色んな問題のリスクは限りなく抑えられ、劣悪な犯罪は発生しない。

そして、精神性の向上に身体的な強さを評価基準とした、そんな教えの中で洗練されてきた世界だ。


しかし、強いものがそれぞれの王国を作り、肉弾戦による争いがあとを絶たない。


いつしか国の数は、684にも増えてしまった。


ただ、国際武闘連合に加盟している国が半数以上ある限り、この世界は続くだろうな。


科学の進歩は必要なく、己の強さをいかに磨くことができるかそれを主体にした考えは、皆賛同している。


精神性を高める以外のことは、ロボット達に任せればいいのだから。


いや、ひとはみな、純粋に闘うことが好きなだけなのさ。


大昔から、人類とはそんなものなんだよ。』


リネン:『うん…だから、僕はこんな世界は大嫌いなんだ。

誰が偉いとか、誰が凄いとか、全て闘うチカラで判断されるんだもん…


僕は、闘うの好きじゃないんだ…』


パパ:『でも、身体を鍛え、強くならないと、リネンの嫌いな労働者の仕事をするしか生きる術がなくなるんだぞ。

だから、頑張って強くなるんだ。


さぁ、もう寝なさい。


明日は、パパが気の使い方を教えてやろう。』


リネン:『わかったよ。おやすみパパ。』


パパ:『あぁ。おやすみ…


しかし、人類は、どこに向かおうとしているのだろう…

精神性を高めるためとはいいながら、他人に対する嫉妬、世界を手にしたいという欲望は、消えるどころか激しさを増しているように思うほどだ…果てしない。


そして、我々をサポートしているロボット類の数はいまや人類の人口を超えた…


我々はどうなるのだろうか。』


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