第18話 〝時間の時間″

【時間の時間】


マビ:『ねぇ?あなたは、どっちへ向かっているの?

どっちのひとなの?』


パビ:『な、なんだよ急に…意味不明なんだけど。』


マビ:『ふふっ!

実はこの間ね!ラテ公園で会った不思議なおじさんに教えてもらったんだ!

ザ・仙人!ってな風貌でさぁ、めっちゃくちゃおもしろそーって思ってさ、声かけたんだ。

そしたら、大当たり!

なかなかおもしろい話をするから、結構長いこと話したんだけど、あれはなかなかのイッちゃっているひとだったわ。』


パビ:『お前よくそんな危ないことするなぁ。

いい加減ヤバイことに巻き込まれても知らないぞ。』


マビ:『まぁいいじゃない、すっごい話聞けたんだもの。

これは、あなたもおもしろいって思うわよ!』


…数日前…


マビ:『あの〜すみません。

あなたは、さっきから不思議なほど、空を見続けていましたけど、何をしてるんですかぁ?』


不思議なおじさん:『……。』


マビ:『お〜い…おじさ〜ん。

聞こえてますか〜?

ねぇ!』


不思議なおじさん:『…。』


ジロリ…。


不思議なおじさん:『お主は、どっちへ向かっておるのだ?

どっちのものだ?』


マビ:『えっ?どっち?

え〜と、向こうから歩いてきたのであちらからこちらまで…ですね!』


不思議なおじさん:『違う。

お主は、どっちへ向かっておるのだ?』


マビ:『うん?ちょっと新しいタイプだわ…手強いわよあなた。

そうね…ここで止まっているから、今はここにいるわ。

どっちに向かっていると言えば、今に向かっているんじゃないかしら。』


不思議なおじさん:『ほぉ?今に向かっておるだと?

なかなかおもしろい答えだ。

なるほど…その方向は思いつかなかった。

ありがとう。

なんとか私の行くべき方向が見出せたよ。

長い間、本当に長い間、私はある流れから抜け出せていなかったのだ。』


マビ:『あの〜ちょっとあなたの会話についていけていないわ。

何を言っているのかチンプンカンプンなの。

もう少し分かりやすく説明してくれません?』


不思議なおじさん:『そうか。

そうだね。

これほどのプレゼントをくれたのだ。

お主には、教えてもいいだろう。

一つ聞きたいがいいかね?

時間を知っているかね?』


マビ:『時間?もちろん!

ちょっと馬鹿にしすぎじゃない?

わかりますよ!』


不思議なおじさん:『ほぉそうか。

さっき、わたしがお主はどっちへ向かっておるのか?と訊ねたが、それは時間の事なのじゃ。』


マビ:『…?

あのさぁ!

馬鹿にしすぎです!

その質問なら簡単じゃない!

もちろん私は、未来に向かっているわ!

あたり前じゃない!』


不思議なおじさん:『いや違うな。

人は皆それぞれ向かっている方向が違う。


お主は、すべて、皆が同じ方向、つまりお主が未来と言っている方向に向かっていると思っているだけじゃ。


ある人からすれば、お主は過去に向かっている。』


マビ:『はぁ?なにそれ?

ちょっとおもしろそー!

なんなのそれって?』


不思議なおじさん:『我々は、時間というものがあり、それは、過去から未来へと永遠に向かい続けていると思い込んでいる。


ここが一番の盲点になっている。


人は、過去は知っているが未来は知らないものと思い込んでいる。


なぜじゃ?


わからない…


そう。

わからないが、そう教えられてきた。


しかしな…違うのじゃよ。


この世界の人たちは、お主から見た未来へ向かうものと、過去へ向かうものがいる。


信じられないと思うだろうが、これは事実なのじゃ。


だから、わたしは、お主にどっちへ向かっているものだと聞いたのじゃよ。』


マビ:『ちょ〜ブッとんでるわ!

なんなのすごい!

その発想は、変人レベルよ!

あっ…ごめんなさい…

で…でも、何を根拠にそう言い切れるのよ?』


不思議なおじさん:『お主は、未来には進めるが

過去には進めないと思っておる。

しかしな、この世界というのは、過去があるから未来があり、右があるから左があり、前があるから後ろがある、いわば表と裏が常にセットになって世界が成り立っておるのじゃ。

そして、お主は右に進めるし、左にも進める。

前にも進めるし、後ろにも進めるじゃろ?

なぜじゃ?

なぜ未来には進めて、過去には進めないと言い切れるのかね?』


マビ:『そ、それは…。

…と、とにかく過去には進めないものなのよ!

あたり前のことなの!』


不思議なおじさん:『あたり前か…

なぜか人類は、あたり前のようにそう思い込んでいる。


しかし、もし仮にそうだとしたら、いや、そう思い込んでいるがために、説明出来ない不思議なことがこの世界には時々現れ、不思議なままで置き去りにしているものがあるのじゃ。


例えば、お主は、オーパーツというものを知っているかね?』


マビ:『もっちろん!

そのテのことなら、任せて!

大好きなの!


オーパーツは、それらが発見された場所や時代とはまったく考えられないような、当時の技術では不可能な代物だったりするものなの。


それが、なぜ存在するのか、どのようにして作ったのか、未だに解明されていない現代科学の水準を超えるようなものや、中にはタイムトラベラーが存在してるんじゃないかって思えるようなものが発見されているものよ!


すっごい魅力的!


例えば、コスタリカの石球やアステカの水晶髑髏が有名よね!


ザンビアで発見された、弾丸のようなものが貫通したネアンデルタール人の頭蓋骨の化石なんかも、そうよね。


1968年にアメリカのユタ州で発見された、サンダルで踏まれたような三葉虫の化石なんかもあったり、素敵なものだと、ミッキーマウス壁画っていうオーストリアのマルタ村教会で発見された700年前の壁画なんかもあるの!』


不思議なおじさん:『いやはや、なかなかのものだ。

そうしたオーパーツと言われるものを皆、なぜ?不思議なもので片づけてしまうのだろうか。


しかしだ。


これらを時間の概念を変えた見かたをすれば、理解しやすくなる。


過去に進むものたちがいるという事実を受け入れたら、すんなり解決しないかね?』


マビ:『うわっ!すっごい、納得!

でも…実感がないっていうか、信じろって言われてもムリかも。』


不思議なおじさん:『いや、お主も、別の視点で言わせてもらうと、今まで過去にも未来にも自由に行き来しておるではないか。』


マビ:『えっ?どういうこと?』


不思議なおじさん:『お主は、後悔をしたことがないかね?

後悔だ。』


マビ:『後悔?

あるわよ。でも何の関係があるわけ?』


不思議なおじさん:『後悔している時、お主は、過去へ向かっておる。

その、後悔した場面に心が向かって行く。

そして、心はそこにとどまる。


その時は、未来になど向かってはおらぬのじゃ。


わかるか?』


マビ:『な…なんとなく…

そう言われたら、後悔している時って、その後悔した出来事を思い出して…っていうよりも、本当にその場面を強烈に心の中で再現して、そこにいるかのように悔やむわ!

確かに、過去に向かってしまっていると言われたらそうかもしれないわね。』


不思議なおじさん:『理解が早いな。

中々見どころがあるな。

そのまた、逆も然りじゃ。

夢を描く時、お主は未来へ向かっておる。


その、夢を描いた場面に心が向かって行く。

そして、心はそこにとどまる。


その時は、過去になど向かってはおらぬのじゃ。


わかるか?


しかも、これが夢を叶える方法であることも知っておくことだ。


心を未来に向けるのじゃ。

そして、その未来に今を近づけていき、いつしか、その未来が今になった時、それが夢が叶う瞬間になるのじゃ。』


マビ:『なるほど!なんだかとってもわかった気がするわ!

夢が叶うってそういうことなのね。

あなたなかなかやるじゃない!


でもさぁ?

過去に向かっているひとって見たことないんだけど。


どこにいるのよ?』


不思議なおじさん:『周りを良く見てごらん。』


マビ:『周り?

…見た感じ、それらしいひとは見あたらないけど。

どこにいるのよ?』


不思議なおじさん:『わたしにもわからん。』


マビ:『はぁ?なにそれ?』


不思議なおじさん:『見分け方はわからんが、この人たちの中にもいる。

本人も過去へ向かっているという認識はない場合がほとんどだ。

それがあたり前だからだ。

見た目は変わらない。

だから、わたしはお主にどっちだ?と聞いたのじゃ。

中には、認識しているものもおるからな。

たまに出会うことがあるが、どっちに向かっておるか聞いた途端、ニヤリと笑って消えたものがいる。


おそらく、時間をジャンプすることまでできるのかもしれん。


最初は、恐ろしくなったよ。

そのまま、わたしの過去に向かわれて、わたしの存在を消されるのではないかとな。


しかし、そこまでのチカラはないようだ。』


マビ:『へぇ〜周りのひとたちみんなが、わたしと同じ未来へ向かっているというのは、わたしのかってな思い込みなんだ。

これは、すごいこと聞いちゃったかも!

ありがとう!おじさん!

また会おうね!』


不思議なおじさん:『また会おう。

会わなければならないからな。』


マビ:『ん?まっいいか。

それじゃバイバイ〜!』


パビ:『へぇ〜過去に進むひとかぁ、考えもしなかったな。

でもさ、博士が喜びそうな話だね。』


マビ:『そうでしょ!

だからさぁ、博士のところに行こうよ!』


パビ:『なるほどね。

だから、珍しく出てきたってわけか。』


マビ:『まぁね。』


パビ:『しょうがない。

久しぶりに、博士に会うとするか。

あんまり邪魔したくないんだけどね。』


マビ:『よし!決まり!行こっ!』







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