102話 邂逅

扉を開けた瞬間、目に飛び込んできたものにデイーは直立した。

 裸の美女がうつ伏せで寝台上に横たわっていた。

 彼女はこっちに気付き、デイーに向かって少し微笑んだ。

 デイーの胸が音をたてて弾けた。


 彼女がこちらに背を向けている画家に何か言った。

 画家が筆を置いてデイーの方を振り返った。

 デイーは画家のことなんか目に入らなかった。

 彼が自分の方に歩いて来る間も、微笑んで自分を見ている彼女から目が離せなかった。


「昨日、十時に来るように君にはお願いしたはずだが」


 デイーと同じくらいの身長のアルケミストはシアンから目を外そうとしないデイーを見て、わずかに眉根を寄せた。


「時間より早く来るという心遣いは嬉しいが、私に限ってはそういう心遣いは無用だ。私にとっては、それは無意味の極みだから」


 アルケミストはデイーとシアンの間に立ち、彼の視界を遮った。

 デイーは我に返ったように、アルケミストに焦点を合わせる。


「……聞いていたかね? ……時間まで君は隣室で待っていてくれ」


 アルケミストはそう言うと、デイーの目の前で扉を閉めた。


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