第68話 逢瀬

 彼女と逢うのは、水曜日と日曜日。


 二回目は、午後にホテルを訪れた。

 三回目は、待ちきれずに午前中に。

 四回目の今日に至っては、早朝に彼女の部屋の前に来てしまった。


 我ながら三十路近いのにイタいと思うし、今、後ろに立って自分の身体をチェックしている若干眠そうなジミーに、朝っぱらからアホかこいつ、と思われているのは確実だが、これもゼルダ人の境遇ゆえ仕方がないと自分を弁護する。


 ズボンの後ろポケットに入ってるものを、ジミーが取り出した。


「あ、それ、避妊具だから。……重要です」


 リックの言葉に中を確認して、ジミーが何も言わずに元のポケットに収める。


「OK」


 ジミーがあくびを噛み殺しながらリックの肩をたたいた。


 待ちに待ったドアを開けて、部屋に入ると彼女はベッド上で猫のように丸くなって寝ていた。


 静かに近付いてベッド傍に腰を下ろすと、彼女は薄目を開けてわずかに顔を持ち上げた。


 部屋に入った瞬間はいつもこうだ。


 言葉を交わすこともなく、ただ、お互いの服を脱がせて、始める。


 ウーは二十歳前後だと思うが、まだ身体に幼さが残る。

 モデル体型に近く、筋肉質だった。

 肌は信じられないくらい滑らかで、シミなんて見当たらない。


 積極的に彼女から自分に触れてくることはない。

 たまに、自分にしがみつくことがあるだけ。


 終わると、やっと会話が始まる。


 専ら話すのは自分の事で、主にグレートルイス時代のこと。

 彼女は、自分の事を話さない。

 聞いているだけだ。

 だから、今だに彼女の相手が分からない。


 会話に途切れると、そのまま、彼女も自分も眠る。


 彼女はわりと寒がりで、知ってか知らずか、自分にかじりつくように身を寄せてくる。

 暖かさと窮屈さに目覚めると、リックは彼女を見下ろして見つめる。

 彼女が求めているのは、本来はこっちではないかと思う。


 そうやって彼女を見下ろすたび、身体をつないだ満足感とは別の満足感が、湧き上がってくるのを感じる。


 そうして、ルームサービスを食べたり、また再開したり、くっついて寝たりしながら、一日が終了する。


 もし自分がグレートルイスに居たままだったなら、休日はいつも誰かとこういう感じだったかもしれない。


 彼女と過ごす時間はあっという間で、次に逢える日が待ち遠しい。


 いつものように彼女との素っ気ない挨拶を交わした後、後ろ髪引かれる思いで部屋を出たリックは、いつものようにジミーの検査を受ける。


 だが今日は、チェックが終わると同時にジミーが言った。


「次の日曜は、来ても無駄だ」


「え、彼女、帰るの?」


 今日が最後だったのかと、あせってリックはジミーを振り返った。


 ジミーは首を振った。


 リックは理解した。


 彼女も、パーティーに出席するのだ。



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