モノクロームの首夏

田久 洋

プロローグ

プロローグ

 代わり映えのしない、退屈な日常。

 気がつけば、勉強ばかりの毎日。


 自分の将来のために、他人を蹴落とすことを前提とした勉強。

 いい大学に行き、一流の企業に就職する。

 事あるごとに、親から言われ続けた。

 それが一番だ、と。

 それが、当たり前だ、と。

 疑いもしなかった中学時代。


 勉強する以外何の目的もなく、味気ない毎日を過ごしていた。

 本当にやりたいことなど、思いつかなかった。

 自分は何がやりたいのか、本気で考えたことがない。そういうものだと、はなから思っていた。

 進学校に入り、有名大学に進む。

 それが、唯一の目的。


 うんざりだった。


 息子に、多大な期待をする両親に。

 そういう生き方しかできない自分に。

 そんな生活に。


 だけど、すぐにこの生き方を変えられるほど器用な人間でもないし、親に反発をするような子どもでもない。

 変える変えない以前の、どんな風に変えればいいのか。それ自体がわからない。

 適当に友人と付き合い、適当に勉強する。今の自分にうんざりはするが、どうせ今と同じようにしか過ごせない。

 関心が向くようなモノは、年々減っていく。


 色せた、モノクロームの世界。


 いろどりを失った日常に、余計興味を持たなくなった。


 ――彼女を知るまでは。

 

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