うさぎおばけ
A子
第1話
ある家に、女の子と一匹のうさぎが住んでいました。
そのうさぎはとても可愛がられて育ちました。
「箱入り娘」ならぬ、「箱入りうさぎ」でした。
うさぎも、その女の子のことが大好きでした。
そしてそのうさぎはとても賢く、善悪の区別のつくうさぎでした。
寿命を全うするまでの間、ただの一度も叱られたことがありませんでした。
最期の日、うさぎは思いました。
(ぼくが死んだら、ご主人様はきっとぼくのことを忘れてしまうだろう。)
うさぎはとても悲しくなりました。
うさぎが亡くなった次の日、女の子は庭に小さなお墓を作りました。
一晩中泣いていた女の子の目は、うさぎのように真っ赤でした。
うさぎはおばけになりました。
もう女の子にはその姿が見えません。
女の子はしばらくの間泣いて過ごしましたが、少しずつ元気を取り戻していきました。
うさぎは寂しくてたまりませんでした。
ある日、女の子はもう一度うさぎを飼いたいと思い、ペットショップに向かいました。
うさぎは、自分が忘れられたのだと思って居ても立ってもいられませんでした。
そして、女の子のワンピースの裾をちょん、と引っ張りました。
「え?」
女の子は驚いた様子で振り返りました。
しかし、そこには誰もいません。
うさぎは、自分に気付いてほしくて何度も繰り返しました。
女の子は何が何だか分からず、次第に怖くなってきました。
女の子はペンダントを握りしめ、「うさぎさん、たすけて」と小さな声で言いました。
ペンダントの中には、うさぎの写真が入っていました。
うさぎは、ハッとしました。
女の子は、うさぎのことを決して忘れていなかったのです。
うさぎは、優しく頭をなでてくれたことや楽しく遊んだことを思い出し、とても温かい気持ちになりました。
嬉しくて、涙が止まりませんでした。
そして、裾を引っ張るのをやめました。
「きっと、うさぎさんがたすけてくれたんだわ」
女の子は、ほっとすると同時に目をキラキラと輝かせました。
それからしばらくして、女の子は新しくうさぎを飼い始めました。
しかし、うさぎはもう寂しくありませんでした。
ペンダントの中にはうさぎの写真が入っていましたし、女の子はうさぎとの思い出話をいつも楽しそうにしていましたから。
うさぎおばけ A子 @usacord28
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