第131話 俺はお前を倒す

「ふぉっふぉっふぉ……

 降参するか?降参しても殺すがのぅ」


 くそ……

 フィサフィーの顔が嬉しそうだ。


「俺は、倒されない!」


 亜金君が、そう言ってプレゲトンを構える。


「ほう?

 そんな武器でワシに勝てるとでも?」


 フィサフィーは、そう言って杖を亜金君に向けた。


「俺は全てを武器に変える!」


「そうか……

 試してみるかいのぅ?」


 フィサフィーは、杖から光を放つ。

 杖は、亜金君ではなく玉藻さんの方に向けている。

 亜金君は、素早く玉藻さんの方に駆ける。

 そして、体全体でその光を受け止める。


「亜金!」


 玉藻さんが、涙目で亜金君の方を見た。


「玉藻……

 そんな顔しないでよ」


「だけど、亜金!お前体が……」


「うん。

 俺、死んじゃうか異世界に行くかどっちかだね……」


「死ぬな!何処にも行くな!

 ずっとそばに居てくれ!」


 玉藻さんの言葉に亜金君は、小さく笑った。

 俺が見るはじめての亜金君の笑顔だった。


「どうしてだ?

 どうして笑うんだ?

 今までそんな顔したことなかったじゃないか……」


 玉藻さんが涙目でそう言った。

 すると亜金君が答える。


「そっか……

 これが笑顔か……」


「亜金!」


 亜金君が、目を閉じて言う。


「プレさん。

 俺、きちんと笑えているかな?」


 亜金君は、そう言って姿を消した。

 その場には、壊れたプレゲトンのみが残される。


「ああ、亜金君。

 きちんと笑えているぞ……」


 俺は、そう言ってプレゲトンを掴んだ。

 重い。

 大きさは半分以上無くなっているのにこんなに重いんだ……

 亜金君、こんな重いものを振り回していたのか……

 俺は、そう思うと俺の心にプレゲトンの声が響く。


  「亜金は逝ったの?」


 俺は、その声に答える。


  「たぶん……」


  「そう、私はまた置いてけぼりくたっちゃったんだ……?」


  「また……?」


  俺の問いにプレゲトンは答えない。


  「昴、アンタが私を使いなさい」


  「使うって?」


  「アンタの能力は何?」


  「ゴミを武器に変える力……」


  「うん、今の私はガラクタ……

   つまりゴミよ」


  「ゴミって……」


  「貴方も今の私なら最大に使える。

   私が言えるのはここまで……

   私の意思ももうすぐ消えるわ。

   さぁ、昴。

   やることは、わかっているわね?」


  「フィサフィーを倒す」


  「わかっているじゃない。

   頑張りなさいよ。昴」


  「ああ……」


 プレゲトンの声が消える。

 もう、プレゲトンは語らない。

 もうただの残骸のようだ……

 言いたくはない。

 口にしたくはない。

 だけどもうゴミなんだ……

 最強の武器を最大の凶器に俺が変える。


「さぁ、フィサフィー。

 勝負だ……」


 俺は、そう言ってフィサフィーを睨む。


「そんなゴミでワシを倒そうと?」


「俺はお前を倒す」


 俺は、プレゲトンを構えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る