第105話  魔族界火の海地獄隊長、光狩 いずみ

 それから、数日後。

 テオスの部隊が攻めてきた。

 そこには、いずみの姿もあった。


「魔族界火の海地獄の隊長、光狩 いずみ!」


 俺は、そう叫びいずみの方に向かって走る。


「小野寺 昴……!」


 いずみも俺の方に鎌を向け俺の方に向かって走る。

 衝突する俺の拳といずみの鎌。

 防御力のみで押し切るのはつらい。

 だけど、ゴミの拳である俺の拳は誰よりも硬く強い。


「昴!

 そいつは、お前に任せたぞ!」


 バルドさんが、そう言ってその場を離れる。

 他のメンバーも各々の敵と戦いをはじめている。

 5分、10分、15分。

 どれくらい時間が経ったのかわからない。

 それほどまでに僕は、いずみの鎌を殴った。


「あは!

 いずみ、殺っちゃえ、殺っちゃえ!」


 1人の少女が、そう言ってはしゃぐ。


「東(あずま)!」


 カイが、そう言ってその少女を睨む。


「カイ、ダメじゃない。

 生産機は生産機らしく兵を生産しなくちゃ!」


 東と呼ばれる少女の声が嫌でも耳に入る。


「余所見する余裕なんてありませんよ!」


 いずみが、そう言って俺に向けて鎌を振り下ろす。

 俺は、拳でその鎌の棒の部分を掴んだ。


「そうだね……!

 カイ、その子の相手は頼んだぞ!」


 俺は、カイにそう言うとカイはうなずいた。


「昴任せて!」


 カイは、そう言ってうなずく。

 よし!あっちはカイに任せて俺はいずみの説得をしないと……

 でも、そう思うものの説得できる要素はない。

 すると赤き閃光が、俺の前に現れる。

 見覚えのある炎の大剣。

 そして、見覚えのあるぽっちゃりお腹。

 その姿は、まさしく亜金君だった。


「亜金君!」


 俺は、思わず声を上げる。


「うん。

 昴君、久し振りだね」


「ああ!」


 俺は、うなずく。


「いずみさん、救出成功しましたよ」


 亜金君の言葉にいずみが、鎌の召喚を解除した。


「そう……」


「お姉さま!」


 そう言って黒い髪の少女と白い髪の少女が現れる。


「クロ、シロ!貴方たちも来たの?」


 いずみが、驚いた様子でふたりを見る。


「はい!

 亜金に頼んで連れてきてもらいました!」


 白い髪の少女が、そう言うと黒い髪の少女が言葉を付け足す。


「他307名の兵及びその家族の救出に成功しました!」


「そう……

 よかった」


 いずみが、その言葉を聞いた途端涙をこぼす。


「ん?亜金君。

 これはどういう状況だ?」


「いずみさんの部下とその家族はテオスによって捉えられていたんだ。

 その人たちの救出をいずみさんに頼まれていた……

 一応昴君に渡したメモリーカードにもその情報は書いていたと思うけど……」


「ああ。

 書いてあった。

 でも、どうやって救出したんだ?」


「いずみさんにテオスの本拠地の地図を貰って、みんなが捉えられていた扉を俺が開けた。

 ただそれだけだよ。

 元々海地獄の兵の皆さんは強いから扉を開けるだけで後は皆で戦ってくれたよ」


「扉に鍵はなかったのか?」


「俺の螺子の力鍵を開けたよ。

 それは、難しいことじゃない」


 亜金君は、そう言って笑った。


「ちょっと、いずみ!

 私たちを裏切るわけじゃないわよね?」


 東が、そう言っていずみを睨む。


「私たちは、もう貴方たちとは組まないわ。

 私たちは、貴方たちと戦う!

 楔(くさび)はもう何もないのだから!」


「キー!!

 これは、モトフミ様に報告よ!」


 東は、そう言って姿を消した。


「逃げた??」


 俺が、そう言うといずみがうなずく。


「逃したの。

 とりあえずはね……」


「そうか……」


「今までのことを水に流せとは言わないし言える義理もない。

 良ければ貴方たちのリーダーと会わせてくれないかしら?」


「会ってどうする?」


「テオスを共に倒したい……

 それを頼むの。

 ダメだと言われたら単独でテオスを戦うわ」


 いずみが、そう言うとバルドさんが現れる。


「いいぜ」


 たったひとことそう言った。

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