Scene.09 勝つ以外負けれない虚しさ

第101話 モトフミクライヌシノオオミカミ

「とりあえず、この城は制覇できた感じね」


 一花さんが、そう言って現れる。


「城は制圧できても、テオスの幹部クラスはひとりも倒せなかったな。

 幹部クラスを倒せなければ、こんな城などただの入れ物だ」


 ゼンさんも現れる。


「とりあえず、みんな魔法陣に集まってー

 魔法陣の広さを広げるのー」


 ピトスが、そう言うと魔法陣がパンドラ・アンゲロス・ルシファーたちのメンバーがそれぞれ休めるくらいの広さに広まった。


「ってか、ピトスの魔力凄いんだな?

 こんな大勢の人数を一度に回復させることができるとは……」


 かみさまが、そう言ってピトスの方を見る。


「ピトスの魔力は、親譲りなのー」


「そう言えば、ビリーブさんたちって勇者の娘なんだよね?」


 万桜が、目を輝かせながら尋ねる。


「うん。

 魔王を一番倒したパーティーが、私たちの両親なんだ」


「そっか」


 俺が頷くとビリーブが答えた。


「一応、私たちは国家勇者の資格を持っているんだ」


「国家勇者って?」


「国が認めた勇者だよ。

 国家魔導師の集まりがファルシオン。

 国家勇者の集まりがスタンレイ。

 ファルシオンには、主に魔法がメインだけど勇者は魔法も剣術も全部人多リ出来ないとなれないんだ。

 あと血筋も重要で親が何らかの功績がないとなれないんだ」


「ファルシオンってギルドじゃないのか?」


「一応ギルドだけど国立ギルドだからね。

 色んなところで、好きにやっているよ」


「そっか。

 その部隊って強い?」


「強いに決まってるじゃないの」


 俺の問いにシズカが代わりに答えた。


「隊長クラスなら、テオスの幹部と互角かそれ以上よ」


「ふーん。

 なら、ファルシオンにも協力を依頼をだそうよ」


「一応、出している。

 今は、状況が状況だしな……

 国立だけあってなかなか尻を上げるのが遅くてな、なかなかOKが貰えないのだ」


 バルドさんが、そう言うと軍鶏爺がため息をつく。


「つまり世界の命運は、ワシらにかかっているのじゃ」


「ってか、テオスの目的は何なんだ?」


「封じられたモトフミの力を100%開放させ。

 人間界と魔界、天使界を我がものにしようとしている。

 それ以上の目的は知らん」


 かみさまが、そう言ってため息をついた。


「……モトフミ?」


 聞きなれない日本人っぽい名前に違和感を感じながらもかみさまの方を見た。


「モトフミクライヌシノオオミカミ。

 究極の神性という意味の神、まぁ要するに余の父親だな」


「って、父親?」


 俺は、少し驚く。

 かみさまって、神様の子供だったのか?


「今更驚くこともないだろう?

 万桜なんて魔王の娘だぞ?

 魔王の娘のくせに勇者を目指しているんだぞ?」


「いや、それは前に聞いたことがある気がするが……」


「敵の息子は、信用出来ないか?」


「それはない。

 かみさまは、かみさまだしね」


 親は親、子は子だ。


「うむ。

 お主ならそう言うと思っていた。

 ちなみに余の兄妹の何人かは、モトフミに何人か殺されている」


「え?どうしてだ?」


「自分の意に背いたからだ。

 余はまだ幼かったからな……

 余の姉、アマテラスに手を引かれこのギルドにやってきたんだ」


「そっか……」


「と言ってもそのアマテラスもガキだったがな」


 バルドさんが、そう言ってケラケラと笑う。

 人は見かけによらない。みんな色んなモノを背負っているんだな。

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