第102話 戦争は勝てるからするものじゃない

「亜金君は、大丈夫なのだろうか?」


「さぁ、どうだろうな」


 俺の質問にバルドさんが答える。


「早く助けに行ってあげないと……」


「気持ちだけ焦っても仕方がないわ」


 一花さんが、そう言った。


「そうだぞ、昴。

 亜金は、殺しても死ぬやつじゃない。

 多分、大丈夫だ」


 バルドさんの言葉に不安がよぎる。


「……でも」


「亜金は強いよ?

 昴が思っている以上に……

 なにせあのオールウェポンは何でも武器にしちゃうからテオスも殺すに殺せないと思うよ?」


 タナトスさんがそう言う。


「でも、プレゲトンを殺されて気分も落ちていると思う。

 それにあのいずみって人、かなり強いし……」


「そのいずみについてだが、情報が入った」


 ゼンさんがそう言うとみんながゼンさんに注目した。


「いずみは、元々は魔族界火の海地獄の隊長。

 フィサフィーに弱みを握られ、テオスに力を貸しているとのことだ」


「フィサフィー?」


 俺は、首を傾げるとバルドさんがそれに答えてくれた。


「テオスのギルド長モトフミの執事のようなものだ。

 執事と言ってもクレイジーやヴィンなどが足元に及ばないくらい強い」


「そんなに強いのか?」


「ああ、強いな……

 ヘタすると俺よりも……な」


「そんな相手と戦って勝てるのですか?」


「戦争は、勝てるからするものじゃない何かを護るためにすることもある」


「護る?」


「ああ、愛しきものをな」


「そうか……」


 俺もカイを護るためにこの場所に立っている。

 だから、バルドさんの言うことが少し理解できた。


「さて、そろそろ戻るか……

 我が家に」


 バルドさんが、そう言うとみなが立ち上がる。


「了解です」


 ミズキさんが、頷くとバルドさんがニンマリと笑う。


「アンゲロスとルシファーの兵士をパンドラに迎え入れてくれ!

 宴の準備だ!」


 バルドさんが、そう言うとミズキはため息をついた。


「お酒は、一樽までですよ?」


「3樽くらい許してくれよ」


「ダメです」


 流石のバルドさんもミズキさんには逆らえないんだな。

 そう思うと少し笑えてきた。


「相変わらずね……

 その様子だと関係は進んでないようね」


 一花さんが、そう言うとミズキさんの顔が赤くなる。


「私たち、そんな関係じゃ……」


「そうなのか?

 似合っていると思うのだがな」


 ジョーカーさんが、そう言って笑う。


「まぁ、俺はもっとボインちゃんが好きだな」


「セクハラで訴えますよ?」


 ミズキさんが、笑顔で言う。

 女に縁のない俺でもわかる。

 女のこの笑顔は怖い……

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