第49話 全面戦争

 景色が変わる。

 そこにいたのはソラとヴィンだった。

 俺は、何が起きているのかわからない。

 ソラは、膝をついている。

 ヴィンが、銃をソラの頭に当てている。


「ご主人様……」


 ソラが泣いている。

 なんだ?これ……

 どういう状況?

 ヴィンは、俺の方を見たあとすぐに視線をソラに移す。


「どういうことだ?

 ひとりで来いと言ったよな?」


 ヴィンの声が冷たい。

 ソラは、何も答えない。

 ただ、俺の方を見てこう言った。


「逃げて、ご主人様……」


 俺は、その声に反して体が動く。

 気がついた時、俺はヴィンを殴っていた。

 ヴィンの冷たい目に俺は凍りつく。


「お前、今何をしたのかわかっているのか?」


「さぁ?」


 それは、俺が唯一できる抵抗だった。


「愚かなものよ。

 ここで死ぬがいい」


 ヴィンが、銃を放つ。

 銃弾は、俺の眉間に命中する。

 死ぬのか……ソラ、護ってあげれなくてごめんね。

 俺は、その場に倒れた。

 目の前が暗くなる。

 思い出すのは前世の嫌なことばかりだ。

 子供の頃から死ぬ時までずっとイジメられていたこと。

 つらかったな……

 次に転生するときは、争いのない世界がいいな。

 そう願った。


「ご主人様!」


 ソラの声が聞こえる。

 柔らかい感触と生暖かい何かが顔に落ちる。

 俺は、ゆっくりと目を開ける。

 俺は、死んでいない?


「ソ……ラ……?」


「よかった。

 ご主人様、生きてた」


 俺は、死んでいない?


「どこまでも勘に触るやつだ……

 魔力をかなり籠めたつもりだが……

 なぜ、死なない?」


 ヴィンが、不機嫌そうな目で俺を見る。

 そうか、俺はオリハルコンの森に救われたのか。

 俺は、ゆっくりとソラの手を握りしめる。

 そして、念じた。

 ここから出してくれ!

 するとオリハルコンの森は、それに答えるように俺たちを外に出してくれた。


「ソラ!走るよ!」


「ご主人様……でも、私……」


「話は後!今はバルドさんのところへ――」


 俺が、そう言いかけると男の声が俺の耳に入る。


「俺のところへ……どうするつもりだ?」


 バルドさんが、そこにいた。

 そして強そうな人たちも傍にいた。


「兵長の勘。

 外れましたね」


 ミズキさんがため息をつく。


「まぁ、そういうこともある。

 で、ソラこれはどういう状況だ?」


「ヴィンから、メールが来たんです。

 ひとりで森に来いと……

 来なければこのギルドを壊滅させるって」


 ソラは、そう言って携帯をバルドさんに渡す。


「まぁ、それは信じる。

 だが、どうして相談してくれなかったんだ?」


「今、もう一度襲撃されたら……」


「はぁ。

 俺たちは、そこまで信用されていなかったんだな?」


「そんな……」


 ソラが、首を横に振る。


「まぁ、なんだ……

 昴!お前は、ソラと一緒にいてやれ。

 アイツらの相手は、俺たちがする。

 ここからは、全面戦争だ!」


 そう言ってバルドさんは、鉄球を構える。

 その視線の先には、ヴィンとクレイジーと数人の人間たちがそこにいた。

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