第39話 俺の名前は、ジル=ジルベルト

「糞が!

 覚えておけ!

 俺の名前は、ジル!ジル=ジルベルトだ!

 と言っても、ここでお前たちは死ぬ!

 お前たちを殺す男の名前だ!覚えておけ!」


 ジルは、そう言って剣を召喚した。

 そして、亜金君に突っ込む。


「亜金!

 私で受け止めなさい!」


 プレゲトンが、そう言って亜金君に指示を出す。


「……うん!」


 亜金君は、ジルの剣をプレゲトンで受け止める。


「そう!それでいいわ!

 次は――」


 亜金君は、プレゲトンの指示に従う。

 そして、ジルの攻撃を次々とプレゲトンで受け止める。


「糞が!糞が!糞が!

 糞が糞が糞が糞が糞が糞が糞が糞が糞が!

 糞が!」


 ジルが、同じ言葉を連呼して亜金君に攻撃を続ける。


「亜金様!援護します!」


 ソラが亜金の援護をしようとした時、それをカイが止めた。


「ジル様の邪魔はさせない」


「カイ!どうして邪魔をするの?」


「……邪魔?

 逆に聞くわ。

 どうして貴方は、そんなに幸せそうなの?

 どうして、そんなに白い肌でいられるの?」


 カイのその表情はどこか淋しげだった。

 そして、ゆっくりと上着を脱ぐ。

 すると痣だらけの肌が見える。

 痣だけじゃなかった鞭で叩かれた跡に火傷まであった。


「カイ……?」


 ソラが小さく声を出す。


「ねぇ、ソラ。

 貴方は、あの傷をその男に見せたの?

 見せた上でその男は貴方をそばに置いてくれているの?」


「傷?」


 俺は、首を傾げた。

 ソラの顔が真っ青になっている。


「見せてない……」


 ソラが小さく答える。


「だったら、その男はアンタを捨てるわね。

 惨めに捨てられるわ!」


 カイは、静かに笑う。


「ご主人様は、私を捨てたりしない」


「聞こえない。

 ソラの声なんて聞こえない」


 カイは、そう言って自分の耳をふさいだ。


「……カイ。

 カイもこっちに来なよ。

 私と一緒にご主人様と暮らそう?」


「受け入れるはずがない。

 私をこの人が受け入れるはずがない」


 カイがそう言って水の魔法を放った。

 ソラが、それを炎の魔法で蒸発させる。


「ご主人様は、下がってください。

 カイは私が足止めします!」


「大丈夫!

 魔法なら俺が引き受ける!

 ソラは、俺を盾にしてその子を止めるのだ!」


 俺は、そう言ってソラの前に立つ。


「腹が立つ。

 貴方!本当に腹が立つ!」


 カイは、問答無用で俺に水の魔法を放った。

 結構痛いぞ……


「ご主人様!

 下がってください。

 本気のカイの魔法は強力です。

 あとその水は触れた後にも攻撃が続きます。

 触れたモノに侵食させたり腐食させたり出来ます」


「そ、それは怖いぞ……」


 ソラの言葉に俺はビビる。


「大丈夫です。

 ご主人様の防御力ならカイの魔法に負けません!」


 自信はない。

 でも、それは俺を信用してくれているってことなんだ。

 頑張らないと!

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