第31話 この世界の肉は美味すぎる!

 俺たちは、ゆっくりと山を登った。

 川がある場所に出た。

 そこには、肉を持った元太君と疲れ果てている万桜さんがいた。


「さぁ、肉を焼こうぜ!」


 元太君がニコニコ笑っている。

 亜金君も疲れて潰れている。

 子供たちは元気なのか、あっという間にバーベキューセットを組み立てた。


「お肉美味しいかな―?」


 ソラが、そう言って笑う。


「さぁ、どうだろうね……

 って、ソラ!出てきちゃったの?」


「大丈夫だよ!兵長さんに許可はもらったよー」


 ソラが元気に笑う。


 すると歩ちゃんがソラに興味津々で尋ねる。


「ねね、サキュバスってせいえきを食べるって本当?」


「え?」


 俺の頭がフリーズする。

 ソラも同じく固まっている。


「違いますよ。

 歩ちゃん」


 充くんが指を立てて答える。


「せいえきじゃありません!

 せいよくです!」


 違うよ。

 せいよくじゃないよ。


「精力だよ」


 隼人君がさらりと答えると愛ちゃんがウンウンと頷いた。


「こ、子供たちになんて話をさせているのよ!」


 万桜さんが、そう言うとソラの方を見て固まる。


「この子が、昴君に忠誠を誓ったモンスター?」


「そうだよー

 ソラって名前なんだー

 よろしくねー」


 ソラが無邪気に笑う。


「お前……

 肉食えるのか?」


 元太君が、ソラに尋ねる。


「うん!

 羊の肉とか大好きだよ!」


 ソラが元気良く答える。


「おう!

 じゃ、俺たちは仲間だな!」


 元太君がニッコリと笑うと他の子供達も笑った。


「って、子供たちはソラのことを怖がらないのか?」


 俺は、万桜さんに尋ねた。


「そうね、ソラさんに敵意がないことがわかってるし……

 ここの子供たちは強いしね。

 こんなの普通よ」


 万桜さんが、優しく笑う。


「そっか……」


「こんなに子供たちに好かれるのなら、ソラさんも子守の仕事を手伝ってもらおうかなー」


 万桜さんが、そう言うとソラの目が輝く。


「いいの?

 私、子供大好きなの!」


「そう……

 なら、あとで兵長に申請しとくわ」


「うん!」


 ソラがニッコリと笑うと、お肉と野菜に串をさしていく。

 妙に手際がいいけれど、気にしないことにした。

 そして、お肉を焼く。


「ご主人様、お肉どうぞ!」


 ソラが、僕の所にお肉が刺さった串を持ってくる。


「ありがとう」


 俺は、そのお肉をかじる。


「や、柔らかい……」


「うん!

 子羊の肉だよー」


「美味しい。

 この世界のお肉の美味しさは尋常じゃないよ!」


「もう、ご主人様ったら!

 おおげさですよー」


 ソラがそう言って笑う。


「ソラは食べないのか?」


「私は、皆が食べ終わってから――」


 そらが、そこまで言いかけた時、元太君が串を出す。


「ソラ!お前も食え!」


「え?」


「そうだよ。

 バーベキューは皆で食べるから美味しいんだぞ?」


 そういった俺の心の中がどこか満たされていく。


「でも……」


「じゃ、命令だ。

 ご飯は皆で楽しく食べる!」


「本当にいいのですか?」


「もちろんだ」


 ソラは、静かにお肉をかじる。


「美味しいです」


 そういったソラの顔に涙が浮かんでいるような気がした。

 でも、きっと気のせいだな。

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