吸血鬼N

りっぺ

第1話未踏の駅へ


夜が深まっていく時間帯・・・。


少女Rは上野から終電の常磐線に乗っていた。


今日は夜の7時まで東京でバイトをしていた。


その後に夕飯を外で済ませていたために、こんな時間帯に帰ることになってしまった。


「はあ・・・」


少女Rは大きな溜息をつく。


溜息をついた後、自分のカバンからスマートフォンを取り出す。


「新着1件?」


新着メールが来ていることに気づいた少女Rは、素早くメールを開いた。


『帰るの遅いけど大丈夫か?多分、終電には間に合っていると思うけど、家までまっすぐ帰って来なさい。父より』


父からメールが来ていた。とても心配している文面だった。


「帰るの遅いって言ったって、バイトして夕飯食べてたんだからしょうがないじゃない・・・」


そう独り言をつぶやく少女R。


そんな少女Rを睡魔が襲う。


「ふぁぁ・・・眠い」


ウトウトとしてきた少女R。


寝るな寝るなと思っても寝てしまいそうになる。


そして、やがて意識がもうろうとしてきた。


『この電車は常磐線特別快速土浦行きです。次は日暮里です』


その車内アナウンスを子守唄に、少女Rは眠りについてしまった。


......................................................


ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン。


「ん?」


やがて少女Rは目を覚ました。


「ここは・・・どこ?」


まだ意識がもうろうとした中、少女Rは車窓の景色を確認する。


夜の暗がりのせいで、はっきりとは辺りは見えないが、一面の田んぼが広がっていることが確認できた。


少女Rの住む柏とは全然違う景色。


そして、


『まもなく、藤代、藤代。お出口は左側です』


と車内アナウンスが流れた。


その車内アナウンスでやっと少女Rは自分が寝過ごしてしまったのだと自覚した。


「どうしよう・・・」


戸惑う少女R。


そんな少女Rのことなんか知らぬというように、電車は減速していき、やがてゆっくりと停車した。


「とりあえず、ここで降りないと」


少女Rはそう思い、席を立った。


ピンポン、ピンポン、ピンポン、ガタッ。


軽やかなドアの開く音とともに少女Rは藤代駅へと降り立った。


「どこよ、藤代って・・・」


目の前の駅名表示板を見てそうつぶやく少女R。


名前さえも知らない未踏の駅へ降り立ってしまったのだ。

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吸血鬼N りっぺ @kassy5310

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