少年は探偵であり、王であった。
トトが暮れ
プロローグ
第1話 王の死
我は王であった。
生まれた時は継承権も低く、王になることはないと周囲から思われていた。別に我も王になりたいとは思っていなかった。ただ、無能として切り捨てられるより役に立つ人間として王都でぜいたくな暮らしがしたかった。
だから、我は努力した。残念なことに我に武術の才能はなかった。それに軍を指揮する機会にも恵まれないことはわかっていた。だから魔法の研究に全てを捧げた。
気を失うまで魔法を使い、鍛えた。過去の文献を寝る間も惜しんで読み、研究する。魔法の効率化、及び威力の増大に関する論文を山のように書いていった。そうしているうちに我の有用性は周囲から認められ、我の王国での地位は比較的向上していった。
周囲の人から魔導の申し子と呼ばれ、探究者として充実した日々を過ごすのはとても楽しく、この生活が永遠に続けばいい、と思っていた。
しかし、王はそんな我の気持ちを察してはくれなかった。地位が向上し、名声を高めた我が王の座を脅かす存在になっていたのだ。
王に暗殺されそうになり、平和な生活はすぐに崩れた。
我は自分の生活を取り戻すために戦い、権力やコネなどありとあらゆる手を使った。
そして、勝利する。
かつて兄であった王を倒し、
その結果、得たのは王としての地位だった。
小さいころからなりたいとは思わなかった王の地位だが、やはり実際になってもつまらないものだった。魔法の探究をすることはできなくなり、我は王としての責務に追われる日々を過ごすことになる。
我は王として何年も何十年も国を統治した。し続けた。国に住む民のために全力を全てを捧げた。
しかし結局、我は毒殺されて死んだ。
殺した相手に思うことはあっても恨みはしない。目の前にいても殺しにかかるつもりはない。
なぜなのか。
それは我が奪われて悔やむような生き方をしていなかったからだと思う。何をしても満たされない。何を見ても感動しない。
人形のようなつまらない人生だった。
死んでようやく、つまらない冷めた生き方をしていたことを悔やむようになっていた。
十分な国づくりは行ったので我が死んでも立派に続いていくと信じている。
言い残すこともなければ、思い残すこともない。
ただ、一言。
何かわがままを言えるというのならば
来世では死にたくない、と思えるほど楽しい人生を謳歌したいものだ。
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