第76話 サンダーバード
サンダーバード……。 なんでこんな場所に居るんだ?
この場にいる全員が、唖然とした。
さすがはSSランカーと騎士団長、すぐに応戦しようとした…が。
雷鳥は休ませるつもりはないらしく、放電流を何本も流してくる。
あの放電はまた、魔法とは違う物だ。雷鳥自らの身体から雷を出している。
俺の吸魔の剣でも吸い取れないだろう。
行動を起こそうとしていた二人は、すぐに、その放電から、騎士団長は王様、バッカスさんはテュールさんを庇いつつ、うまく回避した。
ラハンドさんは、ミュリさん、リロさんから電流を遠ざけたが、彼は電流一本を、足に喰らってしまったようだ。
オルゴさん、ルインさん、そして意外にも大臣さんは自力で回避していたが、オルゴさんが右腕に被弾してしまった。
オルゴさんとラハンドさんには、後でポーションを渡そう。
ところで、俺とカルアちゃんのところだけ以上に本数が多い気がする。
俺はカルアちゃんを苦しくも突き飛ばし、電流から逃れさせる。
俺は、迫ってきた電流のうち、4本を捌ききれなくて、被弾してしまう。
一本は左腕、一本は右の脇腹。
そして残り二本は顔面に。
「ヴグガァァァァッ……………」
主に顔が燃えているのがわかる。痛い。苦しい。
唇が火傷で塞がってしまい、まともに声も出せない。左目も、焼き#爛__ただ__#れてしまったようだ。耳も聞こえなくなった。
幸い、右目と右手、両足は使える。
十分だ。俺の友達を襲った糞鳥を切り刻むには、足と片手と片目さえあればいい。
「あ………り………おが……かおがぁぁ……」
カルアちゃんが泣きながら何かを言っている。ただ、今の俺には全然聞こえないが。
周りのみんなも、俺の顔を見て口を抑えていたり、顔を背けたり、ふせたり、泣いたりしている。
そんなに酷いのだろうか?
騎士団長とバッカスさんはスクッと立ち上がり、怒りに満ちた顔つきで、サンダーバードに向かって行った。
……させっかよ。そいつは俺の獲物だ。
幸い、あのグローブはつけてきている。つまり今、俺は4倍の速さで動ける。
一瞬で、空中にいるサンダーバードとの間合いを詰める。
そして、気痛剣を取り出し、8000MPを注ぎ込み、剣の強さを20倍にして『剣極奥義・五の滅』を叩き込む。この間一瞬。
そして、奴は気絶。
俺は、サンダーバードが落下する前に、その巨体のくちばしを掴み、空いた壁の穴から、城の中に無理やりねじ込む。
そして、食会会場内で『剣極奥義・一の段』2回。トドメに『剣極奥義・五の滅』をもう一回放つ。
城内は、俺の攻撃によって付けられた傷はない。本当にこの剣は役に立つ。
ヤツは無傷で倒れた。
カルアちゃんが無事か気になり、ふと、その方向を見てみると、白い煙が何やらカルアちゃんに近づいてきている……。
その煙は実態化し、あの醜男の手となった。趣味の悪そうな装飾品をつけていたから、よくわかる。
なるほど、こいつはサンダーバードと戦ってる間にカルアちゃんをさらう。
そういう計画だったんだな?
俺は、その手に向かって、カルアちゃんに当たらないように剣を投げる。カルアちゃんが驚いてる。ごめんね。
だが、残念、完全に実態化する前だったらしく、煙が散るばかりで、ファウストの手は攻撃できなかった。
俺は今、痛みで動けない。さっき、身体を酷使しすぎた。
醜男を捕まえられない。また、カルアちゃんをさらいに来るかもしれないのに。
でも、でも、本当に痛くて動けない。
主に顔が……。ははっ、多分今、冗談でも美少女なんて言えない顔してんだろうなぁ…。
グレートポーションで治したいけど、口が開かない。
そんなこと考えてると、見張りの兵を含め、その場にいた全員、こちらに駆け寄ってきた。
そして、騎士団長さんは、俺の口をナイフでこじ開け、そこに、おそらく、俺が前にルインさん達にあげたであろうグレートポーションを流し込んできた。
わかる、身体が癒されていくのが。
わかる、全てが元に戻るのが。
___カルアちゃんが、俺に大泣きしながら抱きついた。
俺は自然と涙が出ていた。ちゃんと、両目からだ。
王様達もみんな、涙目だ。ははっ、ラハンドさんもだよ。
そして口々に『良かった良かった』と言っている。
俺は担架で医務室に運ばれた。別にグレートポーション飲んだからそんなの必要ないのに。
そんなに、様子が酷かったのだろうか?
医務室に一緒に来たルインさんに、俺はどんな顔をしていたのか聞いてみたが、『知らない方がいい』と言っていた。
まぁ、自分の感覚でも一部分、骨ぐらいは剥き出しになってた感じがしたし、相当なものだったんだろうね。
カルアちゃんが、やはり、大泣きしたまま『ごめんなさい、ごめなさい』と謝ってくる。
なぜ、そんなに謝ってしているのか聞くと、こう答えた。
「あ"りむぢゃんがっ……ぅっ……わだしを庇って……あんな、あんな風になっじゃっで……っ……うぁぁぁぁぁ……ごめなざいっ…ごべんなざおっ………おごっでっ!……ますよねっ……」
なるほど、庇って貰って、自分の不備だと感じ謝ってきたのか。その気持ちは嬉しいが、俺はおこってないぞ?
「え……ボク、全然怒ってないよ? むしろ、カルアちゃんが無事で良かったって思ってるよ?」
「え……そうなん……ですか? てっきり、怒ってるから、剣を投げつけてきたのかと……」
「そうだ、アリムよ。それは私も聞きたい。お前が理由も無しに、姫様に剣を投げつけるなんて考えられないからな。今日、一緒に過ごしてそう思った。……なぜ剣を投げたのだ?」
騎士団長さんが、食い気味で聞いてくる。
王様も知りたいようだ。まさか、誰も気付かなかったのか?
「え……? みなさん、気付かなかったんですか? あいつを…」
「なに? サンダーバードのことか?」
「いえ、違います。サンダーバードを倒したあとに、カルアさんに向かって、手が、不自然に浮かんでた煙から伸びてたんです」
「なんだって!?」
「はい、あれは確かに連れ去ろうとしてました」
「なるほど……このドサクサに紛れて姫様をってことか……とんでもない奴だ。今すぐ全兵を警戒させよう」
「ん? 煙だって? ………まさか」
バッカスさんが何かに気付いたようだ。
その煙というワードが強調されたためか、騎士団長さんも、その人物に気付いた。
「煙……まさかファウストか?」
「……確かに、あの手はファウストの手でした。趣味の悪い装飾品が見えましたから」
「…そうか……あのファウストか……サンダーバードもおそらく……」
そう、国王は呟き、一旦下を向く。
そして、次の瞬間、彼から膨大な魔力が溢れ出る。
この世界の人間は、本気でキレた時、身体から魔力が溢れ出るのだ。
すげぇ…この人も、相当強いな…。
そして、彼はこう、騎士団長とその場にいた兵士達に、鬼の形相で命令した。
「今すぐ、今すぐにっ! ヤツの指名手配を強化し、捜索をしろっ! 1000万ベルの賞金をかけてもいいっ! 各国に連絡し、見つけ次第、報告してもらうようにしてくれ! 俺の家族をサンダーバードにより攻撃した罪、神聖なる食会を怪我した罪、国に仇をなした罪、城を破壊した罪……そして我が娘の友を、一瞬でも、あのような姿にし、大怪我を負わせた罪を問うのだぁっ! 奴め……捕まり次第……二度と、二度と外の景色を見れると思うなよっ」
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