第73話 初のメフィラド城-2

 本当に唐突だ。

 なんで突然頭を下げたんだ、この大臣は。

 そんかこと考えていると、彼は話し出した。



「アリム殿…この節は……娘を助けていただき…本当にありがとうございました!」

「ふぇ? ど…どうしたんですか? 娘さんですか?」

「はい、ルイン様と娘から聞きました。灰騎犬の攻撃により、死にそうだったところを助けて頂いたと」



 え、じゃあまさかこの人……



「じゃあ、まさか、オラフルさんって、リロさんのお父さん!?」

「はい、そうです」

「え、でも髪の色が…」

「あの娘の髪の色は妻譲りでして…」

「じ、じゃあ、オルゴさんとミュリさんは?」

「オルゴ君のお父様は我が国の騎士団長、ミュリちゃんのお父様は教会の大司教です」



 あぁ、やっぱりそんな感じの権威ある人達の子供達なのね。

 まぁ、驚きはしたけども。

 じゃあ、なんで冒険者なんてやってんだろう?



「ではなぜ、ルインさん達は冒険者を…?」



 これにはルインが答えた。



「まぁ、武者修業ってやつだよ。超極秘のね」



 ルインがそういうと、ラハンドが慌てた。、



「極秘って…オレァ知っちまってんですが…」

「それなら問題ないですよ。ラハンドさんは奴隷制完全撤廃で活躍した、いわばこの国の英雄の一人。僕たちは貴方のことを信用してますから」

「はは…そりゃ、どうもでさぁ…」

「だから……」



 ルインさんはドアの方をチラッと見つつこう言った。



「入ってきていいよ、リロ、オルゴ、ミュリ」



 俺が入ってきたドアから、リロさん、オルゴさん、ミュリさんが出てきた。

 おそらく、待機してたんだろう。リロさんは部屋に入ってくるなり俺に抱きついた。



「きゃーっ! アリムちゃーん! 会いたかったよぅ~」

「これっ! やめんかリロ。他のお客様だけでなく、テュール様もカルア様もいらっしゃるのだぞ!」

「あ……すいません……」



 まるで親子漫才のようなこの状況。この場に笑いが起きる。リロさんは少し恥ずかしいそうだ。俺はもっと恥ずかしかったけどな。

 セインフォースの4人はこう話す。



「いや~、ごめんね? 連絡できなくて。一向に君の手がかりが無くってさ」

「でも、アリム、名字言ってたよな? 記憶が戻ったのか?」

「いえ、それはカードを作るときにテキトーに…」

「なんだ…そうだったのか。テキトーって…」

「それにしても、アリムちゃん。驚かせてごめんなさいね」

「ミュリ、私達はもっと驚かされてるわよ?」

「そうなんだよね。まさかアリムちゃんが、武闘大会に優勝して、さらにもうSランクだなんて」

「本当よね。特別観客席から見てたけど、目玉が飛び出そうだったわ」

「ほら、でもよ…ピピー村でもアリム、かなり不思議だらけだっだろ?」

「まぁ…それもそうですね」



 意外な人達と再会もできた。嬉しいな。

 それにしてもこの場にあのファウストって人が居なくてよかったよ……。

 それに関して、ラハンドさんも疑問に思っていたようで、割入るように喋りはじめた。



「あの…もし、ファウストのヤロ…奴が、この場に居たらどうしたんですかい? かなり重要な話しばかりしてやしたけど…?」

「あぁ、それは大丈夫です。兵達には彼を11時30分になるまで通さないように言ってありますからね。彼は信用なりません」

「あ、じゃあ最初から」

「そう、アリムちゃんが優勝した時点で色々準備してたってわけ」

「そうだったんですかぃ…安心しやした」



 今は10時30分。あと1時間は来ないのか。

 ゆっくりこの方達とお話ができるね。


 そんな感じで、ラハンドさんや、王族の皆さんと話して過ごす。

 ミュリさん、リロさん、俺で女子トークしていたら、カルア様が入りたそうな目でこちらをみている。しょーがねーなー、話しかけてやるか。



「カルア様っ! 一緒にお話しましょう?」

「えっ…でも…」

「カルア様、アリムちゃんとカルア様、年がちかいんですよ? お話してみたらいかがですか?」

「そうですよ、緊張することはありません」

「でも…リロお姉様…ミュリお姉様っ…」

「えー、こんなにほっぺたスベスベなのに~」

「そうですよー! プニプニしておかないと損ですよっ!」



 やめろ、どさくさに紛れて俺のほっぺたプニプニするのやめろ。

 そんなに頬の肉あるわけじゃねぇだろ!? ただスベスベだからってよぉ……

 なんてことだ! 姫様も姫様で羨ましいそうに見てるぜ。

 ついにしびれをきらしたのか、向こうから話しかけてきた。



「あの……アリム様?」

「はい…なんですか?」

「お年はいくつですか?」

「ボクは12です」

「まぁ……私もつい2ヶ月前まで12歳でしたのっ! 本当に歳が近いのですね!」



 あぁ、やっと笑ってくれた。

 ミュリさんとリロさんの話じゃ、歳が近い友達がいないらしいもんね。可哀想に。

 しばらく、ミュリさん、リロさん、姫様、俺の四人でガールズトークした。

 姫様はとても嬉しそうだった。いい笑顔だ…。アリムとはまた別の可愛さを持っているな。


 そんなこんなで一緒に話していると、第一王子のテュール様がとんでもない提案を持ちかけてきた。



「ねぇ…アリム様…いや、アリムちゃんでいいかい?」

「え…えぇ」

「よければ城に、こういう時だけじゃなくて…たまにでいいから、遊びにきてくれないかい?」

「え……いいのですか?」

「是非、お願いしたいんだ。カルアがあんなに嬉しそうにしてるところを見るのは、久しぶりだったから……ずっと寂しそうでね。………というのは建前で、本当はお父様…国王様も最初っからそのつもりでいたみたいで」

「というと…?」

「カルアと、友達になってくれないかい? ルイン達とも関わりがあって、リロちゃんを助けてくれてるし……それに…いや、ともかく。お願いできないかな?」



 なんだ、そんなことか。確かに、俺は自分で言うのもアレだけど、強いし、既に関わりを持ってるしで、姫様の友達としては最高なのかもしれないな。俺もずっと、同年代居なくて寂しかったし。

 けどね、友達になってくれは違うと思う。だって_____



「ふふ…もう、既にボクとカルア様は友達ですよ!」

「そうか…そうか…よかった」

「アリム様…これからも、遊びにきてくれるんですか?」

「はい! 度々遊びにきてもいいですか?」

「………っ! 勿論、勿論ですぅぅっ!」



 あぁ…とても嬉しいそうな顔をしている。

 これだけでも、ここに来て良かったと思えるね。

 ミュリさんもリロさんも嬉しそう。



「あぁ…これで度々、アリムちゃんに会えるよ~!」

「プニプニし放題ですね!」

「あの……私も、その…アリム様のほっぺをプニプニしてもよろしいですか?」



 まさか、カルア様もまで触りたいと言い出すとはね。



「え……? あ、ええ、いいですよ?」

「それでは………(プニプニプニプニプニ)」

「なら、私達も……」

「ほふたりはすこしひかえれくらはい(お二人は少し控えてください)」

「「え~」」



 そんな感じで一時を過ごしていた。



 だが、そうもいかないようだ。大臣さんが、慌てたように叫ぶ。



「しまった! もう11時25分だ! リロ、ミュリちゃん、オルゴくん、ルイン様、顔を見られたらまずいですぞ! はやく、どこか別の部屋へっ!」

「「「はっ、はい!」」」



 4人は急いで去っていった。



「テュール様、カルア様、私達も一旦さりますぞ」

「はい、わかりました」

「アリム様…また後で」


 

 そう言って、カルア様たちも去っていった。

 どんだけ嫌われてるんだよ、ファウストってやつは……。

 ラハンドさんの不機嫌さや、周りの状況をみるに、やはり昨日のみた記事の内容は本当なのかもしれないな。



 11時32分。ファウストはこの部屋に入ってきた。

 体型は醜悪なのは勿論、顔は身体の油でてかっている。さらに悪趣味ないかにも成金の服。鼻毛もでてる。……と、いちいち数えてたらきりがない。

 正直に言おう、近寄りがたい見た目だ。


 そして、彼がこの部屋に入ってきて最初に言った一言。それはその見た目同様、心も醜いと理解するに、十分な一言だった。



「ラハンド……ブッフォッ…ハゲだ。ハゲだな、やっぱり、ププー! で、そこにいる娘がアリムねぇ……どう? 君、俺に抱かれてみねぇか? 金ならやっからよ。ブッフォッフォッフォッ……」

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