第68話 武闘大会-4

 俺は、開始早々、キザムに、捌けるであろう強さで自分の力を調節し、仕込みナイフを投げる。


 思った通り、剣で、はじこうとしてくれる。



 キザムの双剣と俺のナイフが触れ合った瞬間に…!


 ドカーンと巨大な爆発音をを立て、ナイフが花火のように色とりどりに爆発する。中の麻痺薬も相手はモロに吸い込んだはずだ。


 あまりに突然の爆発で、会場がシーーンとなってしまったみたい。


 煙が晴れると、そこには気絶したように麻痺して、動かなくなっているキザムが。

 

 そこで審判が来てジャッジをした。彼は、俺の方に掌を向ける。


 そして気づいたように、司会のカイムさんが、やっと口を開く。



〔き…き…決まったぁぁぁっ! およそ一瞬の出来事! 前大会優勝者、秒速で倒れてしまうぅっ! 速い、強いぃぃっ! 勝者、アリィィィィムッナーーリウェェェェイッッ!!〕


「「「ワァーーーーーーーーーーッ!!!」」」



 拍手! 喝采! 大歓声! アリム(ちゃん)コールが鳴り止まない。


 俺は清々しい気分で、手を振って、お辞儀して、天使の笑顔を見せてから、退場した。



〔今のはどうやってキザム選手をたおしたのでしょうか? ギルマーズさん?〕

〔あれは仕込みナイフだな。しかも、火薬の量が、大きな怪我をさせず、なおかつ気絶させるほどのダメージを与えるように、絶妙な調節がしてあり、さらに綺麗に見えるように色もつけてやがる。あれこそ、アリムナリウェイ選手の強さっていったところか〕

〔と…すると、あのナイフはアリム選手自身で作ったと?〕

〔ん…まぁ、そうなるわな、武器コレクターの俺が言うんだから間違いねぇよ〕

〔それは凄い選…………_________________〕




 はぁ、緊張したぁ…。


 この後暇だなぁ…いいや、試合まで、控え室でしばらく寝ちゃえっ!


____________

_______

___



 ん…?

 ほっぺたプニプニされてるよーな気がする…。

誰だよ…俺のアリムちゃんのほっぺたプニプニしてるの……。

 そのプニプニしてる者は何か語りかけてくる。



「おい起きろ、アリム」

「ふぇ…? 誰でしゅかぁ……!? オリェのほっぺたプニってしてるのはぁ…?」

「俺だ、ガバイナだ」

「ほぇ…? ガバイナさん…? え、ガバイナさん!?」

「そうだ」



 なんでガバイナさんがここに居るの? しかも毛布とかかけてあるよ。優しいね。



「なんでガバイナさんがここに?」

「あぁ、次のアリムの試合だからな。起こしたんだよ」

「あ…ありがとうございます! それで…ボクの対戦相手は誰でしょうか?」

「俺だ」

「へ? ガバイナさんがですか?」

「そうだ」



 ガバイナさんここまで勝ち上がってきたんだね。やっぱりそこそこ強かったのか。



「悪いが…俺も全力を出させてもらうぞ」

「勿論ですよ! ボクもその全力に応えますっ。ところで……」

「なんだ?」

「なんでボクのほっぺたプニプニしてたんですか? 起こすのなら肩を揺するなり…」

「………」

「ガバイナさん? あ、まさかっ!」



 俺は、意地悪い顔でニィっと口角を吊り上げてこう言ってみた。



「ボクのほっぺた触ってみたかったんですかぁ?

ねぇ、ねぇ、ガバイナさん、触ってみたかったんですか? ねぇ」

「ち……違うっ…」

「じゃあ、なんで?」

「………その……あれだ…」



 むっ…認めないのか……ならば…。



「正直に言ってくれたら、勝手にプニプニしたことは許してあげますがぁ…?」

「くっ……」

「どうしますぅ? 認めますぅ?」

「………そう…だ」

「ふふーん、いいですよ! 許してあげましょー!」



 おぉ、認めたぞ。やっぱり俺の柔肌は触り心地がいいんだな。

 だって毎日お風呂で、自分でもムニムニしてるもん。…あれ、ガバイナさんがなんか考え事してるみたいだ。



「(本当は、また、うなされていたからな…笑わせてやろうと思っただけなのだが…。いや、確かに笑ったが…まさかあんな悪戯な顔をされるとはな…………。触りたかったわけじゃないぞ? 本当だぞ。……しっかりしろ…俺…)」

「? ガバイナさん? どうかしました?」

「いや…別に。俺の控えはあっちだからな…もう行く。じゃ、また後でな、アリム。一応、呼ばれるのは俺が先だからな」

「はい、わかりましたー! では、また後で」



 ………どうやら、前の試合が終わったようだ。

この第4回戦で勝った人5人と戦うんだ。

 でも、まずはガバイナさんを倒さないと。


 スタッフに準備をするように言われる。いよいよをもって入場だ。

 まずはガバイナさんから。



〔第三回戦では華麗な槍さばきで相手を気絶させた彼っ! 第四回戦も巧みな槍の技で相手を翻弄するかっ!? 第440回、第442回、第443回武闘大会Bランクの部優勝、第447回、第448回武闘大会Aランクの部優勝…と、多数の優勝記録を残した実力者! ≪鬼槍士≫こと、ガバイナ・ドラングニアぁぁぁぁっ!〕



 へぇ、ガバイナさん何回も優勝してるのか。俺でも気を抜いたらやられるかもしれない。今回一番の強敵かもね。

 さてと…俺の出番ですか。



〔第三回戦では前大会優勝者を、いとも簡単にやぶった、この少女! 第4回戦もあの高速劇を見せてくれるのかっ! アリム・ナリウェイィィィィ!〕



 俺は先程とは仕草を変えて入場する。可愛いとかたくさん聞こえてくるよ。

 ふふーん、どうだ? 可愛いだろ~。最近俺、あざとくなってきた気がする。


 さてと、試合がはじまるぞ。



〔それじゃあ、始めようかっ! 第四回戦…勝負開始っ!〕

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