第63話 SSSランカー

 俺は、透明化をやめ、三人の前に出る。

 

 ウルトさん、金髪のダンディーな男の人、銀髪の20代前半くらいの美人な女性が居た。

 二人とも驚いたようで、こう言った。



「おいおい、まさか、俺等が隠れてる者の存在気づかないなんてな。こりゃぁ、驚いたぜ」

「ウルトの言う通りじゃないの。この娘、将来有望ね」



 それに対してウルトさんも言葉を述べる



「ね? だから言ったでしょ。SSSランクになりうるって。あ、アリムちゃん、とりあえず空いてるところに座ってね」



 すすめられるままに、空いてる席…銀髪の女性の隣に座る。

 ダンディーな人は何が不思議なのか、わからないが、珍しい物を見るような顔でこう言った。



「あれ、珍しいなこの娘。俺等が居るってのに緊張とか興奮とか、してる様子がねぇ。まさか、俺等のこと知らねぇわけじゃないだろうしよ」

「どこからくるの? その自信。知らない人だっているかもしれないでしょ?」

「いやだけどよ…ウルトならわかるぜ? 今のウルトのこの姿を知ってるのはSSSランクの奴等ぐらいだ。普段、別の姿してるしよ。 でも、俺もお前も、まるで知らないみたいじゃねぇか。特に俺等は変装とかしてるわけじゃないんだぜ?」



 成る程、SSSランカーだから有名人でもあるのか。そりゃそうか。アナズム全体で最強の人達だもんな。

 でも、知らないもんは知らないし。

 記憶喪失設定を発動しよう。



「すいません…気を悪くしたのなら…その…ボク、二週間前より前の記憶が無くて…」



 金髪のダンディーな男の人はその言葉に反応する。



「なんだと? 成る程、嬢ちゃんも色々抱えてるんのか。なら、知らなくて当たり前…いや、忘れてるって言った方がいいのか? 俺の名はギルマーズ。≪武神≫ とも、呼ばれるぜ。[ピースオブヘラクレス]っていう、チームのリーダーをしてる。よろしくな。で、このベッピンさんが_______」



 ギルマーズさんは、銀髪の女性に話をふる。



「はぁ……ベッピンさんて…。私の名前はパラスナ。SSSランカーよ。≪森羅万象の大魔導師≫って呼ばれることもあるわ」



 この人は、パラスナさんって言うのか。改めて挨拶をば。



「ギルマーズさん、パラスナさん、よろしくです! ボク、アリムって言います!」

「あぁ、知ってるさ。それにしても本当に可愛いな…どれ、俺があと3~4年もしたら、アレコレだな…」

「アリムちゃん、だめよ? こんな怪しいおじさんについていっちゃ。それにしても本当に可愛いわね。抱きしめたくなっちゃう。いい? 抱きしめて」



 返事をする前に抱きしめられた。デジャビュ。いつもなんでこうなるんだろうか。

 ギルマーズさんはそんな様子を見て、こう言った。



「あ、いいねぇ、アリムちゃん。どれ、パラスナちゃん、俺も抱きしめてくれないかな?」



 パラスナさんは、俺を抱きしめながら言葉を返した。



「本当、ギルマーズさんの、その女に軽いの、どうにかなんないの?」

「そうだよな…。お前にはウルトがいるもんなぁ…」

「ちょ…違っ…」

「あれ? いいのかな? ウルト君のこと嫌いなのかな?」

「そういうわけじゃないってば……すぐそうやってからかうんだから、ギルマーズさんは」



 口を膨らませて、反論するパラスナさん。

 なるほど、パラスナさんとウルトさんができてるのか。

 そういえば、ウルトさんのことはなんも聞いてねぇや。

 俺はパラスナさんの膝の上でウルトさんについて聞く。



「えっと…ウルトさんは何者ですか? SSSランカーですよね?」

「そうだ、俺はSSSランカー。ウルト・ラストマンだ。世間一般ではラストマンの方の名前で通っているが、ウルトがファーストネームだ。≪不死身の#英雄__ヒーロー__#≫とも呼ばれてる」



 さらにパラスナさんが会話を付け足した。



「ウルトは凄いんだよ。なんせ、3年前、たった一人で奴隷制を完全撤廃したからね。アナズムから奴隷制をなくした張本人。だから、ウルトを英雄視する人が多いのよ」

「でもなぁ…今は見た目、好青年だけど、お前普段は変な格好してるもんな。鎧のような、魔物のような、なんかすごい奴」

「へ? 変な格好ですって? カッコいいじゃないですか、あの格好。ギルマーズさんにはわからないんですか?」

「……はっきりいってわからん」

「そうですか…」



 ウルトさんがおちこんでしまった! 一体、どんな格好なんだろうか。でも、今は聞くのをやめておこう。

 他にも聞きたいことがある。



「あの…さっき盗み聞きして…皆さん、マスターの名前がついたスキルを持ってるって聞こえたんですが……」



 三人ともが答えてくれる。



「あぁ、持ってるぜ。俺が"バトルマスター"だ。ありとあらゆる武器の扱いや、戦術を司るスキルだわな」

「私は"マジックマスター"よ。魔法を司るスキル。全種全属性の魔法が使えるし、消費するMPもかなり減るの。相手の魔法を吸収したり、反射したりもできるわ」

「俺は"クリーチャーマスター"さ。魔物含め、全生命体を司るらしい。相手のステータスを見ることは勿論、俺の身体を自由に変化させたりと、生きてる物が対象なら、なんでもできる。分裂することも可能、鳥になったり、体内で猛毒を作ったり、腕を何本も生やしたり……身体の無限再生だって可能だ。不死身と呼ばれてるのはそこからだな」



 やっぱり、マスターって相当すごいスキルだな。全員チートじゃねぇか。

 でも、こんなにホイホイとスキルの説明しても良いのだろうか?



「す…すごいですね…でも、こんなに簡単に、自分のスキルを話して良いものなんですか?」

「あぁ、問題ねぇよ。そんなことSSランク以上になりゃ、逆にスキルの自慢のしあいだぜ? スキルの説明を渋るのは、Aランクぐらいまでだな。まぁ、他人に習得されたら困るから、どうやってスキルを手に入れたかは話さないけどな。アリムちゃんはどんなスキルなんだい? 教えても良いんだったら、教えてもくれないかな」



 なら、俺も教えても、問題ないな。



「あ、はい。ボクは"アイテムマスター"です。物全体の扱いを司るのだとか。例えば、伝説級のアイテムを自作することもできますし、普通の人では考えられないスピードや技量で、道具を使うこともできます。鑑定もできますし、採取も欲しい物の場所が、感覚でわかったりします」



 ウルトさんは知っていたのだろう、頷いている。パラスナさんは『便利ね』と言っていた。

しかし、一番食いついたのは、ギルマーズさんだった。



「おい、アリムちゃん! つまりは武器とかも、他とは比べもんにならないくらい、良いもん作れるってことか?」

「えぇ、まぁ」

「そうか…。俺は武器をコレクションしてんだけどよ、素材も用意するし、金も渡すから、時たま俺の為に武器をつくってくれねぇか? 鑑賞用だけど、ちゃんと実用的なやつをよ」



 これは俺と利が一致するだろう。俺は作りたい。彼は集めたい。ぴったりじゃねぇか。



「えぇ、良いですよ。作りましょう。明日からでも」

「本当か? 本当に良いのか?」



 すごいグイグイくるな。どれ、1つ、見本でも見せてやるか。



「ええ、勿論ですよ。この前、自分用に作った剣、お見せしましょうか?」

「あぁ、見せてくれ、是非。俺は武器だけ鑑定できるしよ。じっくり見せてもらうぜ」



 俺は、最高傑作。極銀の吸魔の魔剣をギルマーズさんに見せる。

 鑑定してみているのだろう。暫く眺めてからこう言った。



「すげぇ…本当に伝説の武器が作れるのか。ダンジョンから出てくるような武器だぜ、これ…。お願いしよう。頼んだぜアリムちゃん」

「了解です!」



 ギルマーズさんとの商談が成立してしまった。

SSSランカーの武器を作るのか…。期待に応えなくちゃな。

 それならば、私も俺もと、パラスナさんとウルトさんもこう言った。



「な…なら、アリムちゃん。私にも、その、杖とか、服とか、アクセサリーとか作ってくれないかな? 勿論、素材も渡すし、お金も払うから……ね?」

「あ、二人とも。俺なんて、今まで知ってて我慢してたのに…。アリムちゃん、俺もいいかな?」

「勿論ですとも!」



 これで、SSSランカー三人との商談が決まったわけだ。

 仕事から帰ってきて、疲れてるのに、よくやるな。俺。

 

 パラスナさんが何かに気づいたようにこう言った。



「でも、アリムちゃん、武闘大会出場するのよね? その…準備とかしなくていいの?」



 俺はその問いにこたえる。



「ボクが作った武器があれば、大丈夫ですよ」

「それはそうだな」


 

 ギルマーズさんは笑いながら、相槌をうつ。

 納得されてしまったようだ。


 

 そのあと、しばらくは四人でたわいもない話しをして、たのしんだ。



_______

____

__



 しばらくして、彼は椅子からゆっくりと腰をあげると、そろそろ帰ると言いだした。



「なら、私も帰るわ。またね、アリムちゃん」



 どうやら、パラスナさんも帰るようだ。

 


「と帰る前に、これら、渡しとくわ、アリムちゃん。これで、剣を一本、作ってくれないかな」



 渡されたのは、アルティメタルと、オルトロスという、Sランクの魔物の解体素材だ。

 俺はその依頼を引き受ける。完成した品物は、ウルトさんに渡せば、彼が届けてくれるという。


 ウルトさんと、俺で、二人を見送ったあと、ウルトさんに部屋に戻って寝るように言われた。


 その言葉に従い、俺は部屋に戻り、眠った。

 いろいろありすぎて、つかれた。


 大会開始まで、あと4日。

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