第61話 騒動後の帰還
ガバイナさんのみならまだしも、グレープさんにまで、あの光景を見られてしまった。
俺が、ガバイナさんが追い詰められた、ミルメコレオとかいう蟻とライオンが合体したような、Aランクの魔物三匹を葬り、グレートポーションを惜しげも無く使ったところを…だ。
なにがまずいかって、グレープさんはギルドと繋がっているのだ。
「ん~、悪いんだけどね、アリムちゃん、これ、決まりだから…。ランクをAランクに上げさせてもらうよ。反対してもダメ。いいね?」
「はい…」
「ん~、本当はSランク以上の強さなんだよ? なんだけど、倒したAランクの魔物の数から言って、君はAランクだ。Sランクになるには後、Aランク三匹倒さないとね。魔核でもいいけど。でも君は持っていたとしても出さないんだろう? Aランクになるのも嫌がってたし」
案の定こうなった。
本当は、もっとゆっくり進みたかった。
しかし、そうもいかないみたいだ。
グレープさんはさらに話を続ける。
「ところで…あのグレートポーションはどうしたのかな?」
やっぱり聞かれた。もうこんな状況なのだ。正直に答えたって、いいだろう。
「自分で作りました」
それには、ガバイナさんが驚いていた。グレープさんは、納得したみたいな表情をしている。
「ん~、やっぱりね。普通は皆、アレを使うのを躊躇うんだよ。すっごく高価だからね。でもアリムちゃんは、さも何本もあるように使っていたもんね。それに料理や解体技術、やっぱり只者ではなかったわけだ」
やっぱり商人ってそういうのわかるんだな。
下手なことできないな、商人の前では。
グレープさんは次に、ミルメコレオの処理について話し出す。
「ん~、ミルメコレオを倒したのはアリムちゃんだから、魔核は勿論アリムちゃんのもの。ミルメコレオの死骸はどうする? ガバイナさん」
「俺はなにもしてません。全てアリムがやったことです。ミルメコレオの解体品はアリムの物でしょう」
俺はミルメコレオを丸々全部受け取ることになった。こいつの身体は鎧とかに使える。
ガバイナさんの頑張った分を本当は分けたいが、それはおそらく、守ろうとしていた者に、逆に情けをかけられるという、恥をかかせることになるのではないだろうか。
俺にあんなに、逃げろ、逃げろっていってたし。
「では、お言葉に甘えて、この死骸、全てもらいます」
俺は全部、ポーチで吸い込んだ。
しばらくして、また馬車は走り出す。
グレープさんは、『アリムちゃん、今後ともメディアナ商人組会をよろしく』と言い残し、俺らの部屋から去る。
俺とガバイナさん、二人っきりとなった。
ガバイナさんが口を開く。
「すまない…情けないな…俺は。守ろうとしていた者に守られるなんてな…。それと、グレートポーションの代金はキチンと払おう」
すっかり、しおらしくなってしまっている。
俺はガバイナさんに言葉を返す。
「そんなことないです。逃げろって…ボクを気遣ってくれる言葉、とても嬉しかったですから…。グレートポーションに関しては1つ、頼みがあります。それでなかった事にしてくれませんか?」
「ほう、頼みとはなんだ。俺にできることなら、なんでも言ってくれ」
俺は、粉々に砕けた金属の塊を2セット、ガバイナさんに見せて言う。
「これはガバイナさんの槍と盾です。槍はガバイナさんの大切な物なんですよね? これ、素材がミスリルでしたから…。この槍と盾、好き勝手に弄らせて下さい。お願いします。必ず返すので」
「そんな…ことで良いのか? つまりはこの槍と盾を直すということだろう?」
「いえ、好き勝手に改造させて下さい」
「………………わかった、すきにしてくれ」
このような言い回しにしたのは、ガバイナさんに断らせないため。
直すとか、強化する、なんて言ったら、その代金まで払おうなんて言い出すに決まってる。
俺は金を取るつもりは(今は)無いのだ。
ただ、作りたいだけ。
俺はポーチから、マジックルームを取り出す。
ガバイナさんはもう、驚き疲れたという顔をしていた。
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そうして、できた物がこの2つ。
【「聖銀の超槍」
・状態→ 最良
・出来→ 最高
・価値→ 宝
・材料→ ミスリル
エンチャント
・種類→ 超槍
・説明
:攻撃力+370(185×2)
:槍としての性能を超物的に上昇させる(貫通力、耐久性、攻撃力2倍)
:少し軽くする
:壊れにくくする
:常に最良の状態を保つ 】
【「合・ミルメコレオの鉄の超盾」
・状態→ 最良
・出来→ 最高
・価値→ 宝
・材料→ 鉄
エンチャント
ミルメコレオの最硬皮
ミルメコレオの顎骨
・種類→ 魔物合の超盾
・説明
:守備力+294(147×2)
:槍としての性能を超物的に上昇させる(耐久性、守備力2倍)
:少し軽くする
:壊れにくくする
:常に最良の状態を保つ 】
あぁ、暫く武器を作れなくて、若干欲求不満だったんだよね。
武器を作るって本当好き。プラモとか組み立ててる感覚。わかるよね?
でも、あんまり作っても、自分じゃ使わないし。
グレートポーションの対価としては、自分にとって最高なんだよね。
俺は完成した品をガバイナさんに渡す。最初は渋っていたけど、『受けとってくれるまでがポーションのお代です』というと、受けとってくれた。
彼は槍と盾をマジマジと見つめ、こう言った。
「アリム、お前は何者なんだ? この2つ、明らかに壊れる前より良いものになっている。鑑定スキルを持っていない、俺でもわかる程にな。こんな武器、店では売ってないぞ。それに、お前がその箱に入ってから、20分程度で出てきたよな…。普通では考えられないような速さで、これらを修復し、改造したということになるが…?」
俺はその問いに返答する。
「はい、そうですよ。ボク、鍛治のスキルとかも持ってますから。でも、あんまり武器を作りすぎても、使わないんですよね。だから、武器を改造させて頂いたんです。武器を作ること自体は楽しいですから」
ガバイナさんはその返答に対し、こうかえした。
「アリム…お前は……いや、なんでもない。ありがとう、感謝する」
今は深夜4時。
とてもじゃないが寝れる状況じゃなかったのか、全員起きていた。
御者さん達の、俺を見る目が変わった気がする。
こう、可愛がる対象に向ける目から、まるで偉い人でも見ているような目だ。
軽蔑じゃないだけましだ。
ともかく、小腹が空いてると踏んだ俺は、そんな皆んなに軽食を出してやる。
俺の料理はそんなにやはり、美味しいのだろうか。出した軽食はすぐになくなった。
さらに、どうせだからみんなでスゴロクで遊んだ。ガバイナさんも一緒だ。
朝ごはんまで、こうして過ごした。
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朝ごはんは二日目と同じものにした。
この旅は、いろいろあったが、行きと変わったところがあるとすれば、皆、俺を子供扱いしなくなった事ぐらい。
ガバイナさんは少し元気を取り戻したみたいだ。
昼ご飯はハンバーグ。何故、昼間からこんなに豪勢にするのか聞かれたので、夜はものすごく豪勢にするからだと、言っておいた。
御者さん達の目が輝いていた。
夕飯はAランク魔物、カルキノスのカニ三昧。
全員、これには驚き、どうやって手に入れたのか聞いてきた。
『港町で、実は釣りじゃなくてこいつを狩っていた』と半分本当の返答をすると、皆の顔が引きつってしまったよ。
でも、美味しかったようで、御者さん達は無我夢中で食べてた。ガバイナさんも物凄い量食べてた。
これがこの面子での最後の食事なのだから。
真夜中の2時。
王都へと帰還した。御者さん一人一人に別れの別れの挨拶をする。でも、この人達、商人組会お抱えの御者らしいので、会おうと思えば会えるらしい。
グレープさんとは、近い内に、ジェンガ、スゴロク、オセロ、サンドイッチの商品化についての話し合いをする約束をした。
それと、この雑用の仕事報酬は明日、ギルドで受けとって欲しいとのこと。
道中に討伐した、ミルメコレオ以外の魔物は、商人組会で買取り、ガバイナさんが5割、俺2割、残り3割を御者さん四人で分けるそうな。
ガバイナさんには別れの言葉を一応伝えたが、彼も武闘大会に出るらしく、その時に、是非、待合室に会いにきて欲しいとのこと。
でも彼は知らない。実は、俺は大会のAランクの部に出場するのに必要な、追加料金1万8千ベルを、すでにグレープさんに払っており、俺もAランクの武闘大会に出ることを。
面白いから黙っておこう。
こうして、俺たちは各々の帰るべき場所へと帰っていった。
なかなか楽しかったね。この6日間。
得られるものも沢山あった。
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俺は宿[ヒカリ]へと戻ってきた。
早く部屋に入ろう。
宿に入り、少し違和感を感じる。
おかしい……この建物じたい、もうすでに灯りを消して、暗くなっているハズなのだが………こんな時間なのに、受付の奥だけ灯りがついてる。
少し様子を見ようと受付に近づくにつれ、何かが聞こえる。
「______は、やっ_____いつもいつも」
「そうよ、ウル___________やってないで、もっと______!」
「いい_____で___別に。これ___業なんですし」
ウルトさんと、男の人一人、女の人一人、計三人の話し声だ。
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