第33話 灰騎犬VS.4人の冒険者
俺はすぐに応戦しようと考えた。……が、その必要はないみたいだ。
あの、風の音を聞いたのか、3人は既に集まっていた。
出る幕はないかな?
「おいおい、異常な音が聞こえたからって来てみりゃ……」
「なんで灰騎犬がこんなところにいるの!? ミュリ、子供達は?」
「子供達と村の人達はアリムちゃんが避難させてくれました」
「わかった。まだ僕達が居てよかった。明日じゃなくて、本当に」
「それでも、私達が勝てるとは決まったわけじゃないでしょ? 今まで戦った魔物の中で一番強いって言っても過言じゃないわ」
「そうだね……。皆、むちゃしないで」
「お前こそな」
……あいつって、そんなに強いの? 今だったら素手でもいけるぞ。
俺は今、住民を避難させた後に近くの物陰に隠れて戦いの様子を見ている。
「……きますっ!」
ミュリさんがそう言った。灰騎犬の前に魔法陣が現れ、そこから4人にむかって暴風が放射される。
「ウインドエミッション!」
リロさんの魔法だ。見事に灰騎犬の魔法とかぶせ相殺させた。同時にリロさんが合図をする。
「いまよっ!」
「おうよ」
「補助魔法、かけます!」
それにオルゴさんとミュリさんが返事をした。ミュリさんはオルゴさんに、補助魔法をかけている。強化術の魔法なのだろう。
ザシュッ__________
オルゴさんが灰騎犬に一太刀入れた。
「ぐっ!?」
が、オルゴさんも灰騎士犬に足を噛まれたようだ。
「ハイ・ヒールっ!」
ミュリさんが快復魔法唱える。血が止まり、若干傷が癒えているのはここからでもわかる。
「サンキュー、ミュリ!」
「いえ」
一方でルインさんは灰騎犬に斬りかかるも回避されてしまう。うーん、なかなか良い太刀筋だったんだけど。
「くそっ!」
「任せて!フレイムエミッション!」
今度はリロさんから魔法を唱える。
灰騎犬はフレイムエミッションをモロに喰らった。だけど、まだ倒れるには遠そうだ。
灰騎犬が動く。四人から少し距離をとる。
さらに、ウインドボールを唱えたようだ。
狙った先はリロさん。リロさんもボールを唱え、それらを相殺する。
「なめないでよねっ!」
だが、誰も気づいてなかった。
リロさんの足元にエミッションの魔法陣があることを。
「なっ!?」
ミュリさんはそれに気付き、即座にリロさんに補助魔法を掛ける。
だが、それでもダメージは多大だったようだ。
「キャァァァァァァアアアッ!!」
暴風が放射させると共にリロさんが空中に打ち上げられる。
……まずい。今のモロに喰らった一撃でHPはだいぶ削られたかもしれない。
あのセインフォースメンバーはおそらく、4人ともレベル20前後だ。
あれは灰騎犬のエミッションを受けたことがないからわからないが、様子をみるに、レベル20代にはキツイ威力なのだろう。
ともかく、地面にこのまま落下したら死んでしまう恐れがある。そうはさせない。
早く助けに___________
「……っと」
ああ、よかった。ルインさんがうまくキャッチしたようだ。お姫様抱っこで、あら~。
いや、そんなこと考えてる場合じゃないわ。
ルインさんが鬼の形相をしている。
「よくもリロをっ……!喰らえ、ライトエミッション!」
ん?聞いたことがないな。ライト……光か。灰騎犬の足元に白い魔法陣が展開され、そこから白い光線が出てきた。
たしかに当たりはした。
……が、奴を倒すには不十分なようだ。
ルインさんはオルゴさんにアイコンタクトをしている。オルゴさんは黙って頷いた。
その刹那、オルゴさんは灰騎犬にむかって剣を振るう。あの太刀筋は相手を遠ざける切りつけ方だ。
オルゴさんを敵に集中させてる間に、ルインさんはリロさんを遠くの木の下に寝かせる。
ミュリさんもその場所に来て、必死にヒールを唱えていた。時間稼ぎのアイコンタクトか。
ルインさんはその場所からすぐに離れ、オルゴさんの所へ加勢しに行く。
ライトエミッションを放ったが、回避されたようだ。
また、灰騎犬の奴はオルゴさんに噛みつき、爪で引っ掻いている。
エミッションよりは威力が低いだろうが……
「くぅっ!? くそっ」
やはり、相当なダメージか蓄積されていっているようだ。それでも、オルゴさんの攻撃は灰騎犬に届いていて、奴も少しずつダメージが溜まって言っているのがわかる。
このまま、いけるのではないか?
そう考えが。灰騎犬は大幅に移動する。
……もしかしたら物凄くマズイかもしれない。
あぁ、空気の魔力から灰騎犬はまたウインドエミッションを出そうとしているのがわかる。
だが魔法陣はどこだ?
その魔法陣の場所は、ルインさんでなく、オルゴさんでなく、木の下にいる、リロさんとミュリさんの所にだった。
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