第30話 ルインの心配



「あれ? ルインさん、どうかしましたか?」



 俺がそう問うと、ルインさんは心配そうな顔でこう、答えた。



「いや、昨日ね、あんなに元気だった君が起きてすぐ部屋に篭りっぱなしだと聞いてね、来てみたんだよ。」



 変な心配させちゃった。慌てて言葉を返す。



「いえ、全然大丈夫ですよ!ステータス、を確認してたんです! どんなのかなーって。詳しく見てたんですよ、全部。」

「なんだ、そうだったんだ。でも4時間もステータスを確認してたのは、全部の説明を見てからなんだね。あ、ちなみにこれはアナズム中共通ルールなんだけどね、そう簡単に人にステータスを教えたり、聞いたりしちゃいけないよ? 個人の情報だからね。」

「ハイ! わかりました!」

「うん、いい返事だ。」



 ルインさんは『ふぅ~』とため息1つ吐き、座ってもいいか聞いてきたので、了承した。

 ルインさんはまた話し出す。



「ねぇ、アリムちゃん。記憶、どこまであるの?辛かったら教えなくてもいいけど。」

「本当に何も覚えてません。本当のことを言うと、昨日、お風呂に入るまでボクは、自分の顔もわかりませんでした。生活はちゃんとできるみたいなのですが、自分のことに関する記憶が一切無くて……。」

「そっか……ねぇ…もし、もしだよ? 王都に行って役場で調べてもらっても君のことがわからなかったら、君はそのあとどうするんだい?」



 実はもう決めてる。冒険者になるのだ。これこそファンタジーの世界って感じだから是非ともなりたい。俺は微笑んでこう答える。



「"冒険者"になろうと思ってます。昨日オルゴさんに聞きました。ルインさん達皆さん、冒険者なんですよね?ボクも冒険者になります!」

「うん……それはいいかもね。ごめんね………本当は君をパーティに誘ったり、もう少し長く一緒に居てあげたかったりしたいんだけど、どうしても…どうしても、それができない大きな理由があるんだ。本当にごめん。」



うーん、誘われると思ってたんだけど。どう断ろうか考えてたけどそれも意味無くなっちゃったね。

 正直助かった。一人の方が基本、都合がいいからな。

 それにしても、大きな理由ってなんだ?聞かない方がいい類だよね。

 とりあえず、今は話題を変えよう。ルインさんが自分を責めだしたりしちゃうかもしんない。

 セインフォースの結成の経緯とか聞いとけばいいか。あの仲の良さはどうせ幼馴染だろ。

 俺にも、可愛い幼馴染がいたから、よくわかるぜ。



「いえ、気にしませんよ。…ところでセインフォースのパーティ結成の経緯とか聞いてみたいです!」

「セインフォースの? あぁ、僕たち4人は幼馴染なんだよ。全員同じ年に生まれた。だから4人でパーティ組んだんだ。みーんな冒険が好きだったからね。昔っから。」



ほらやっぱり。アリム知ってる! こういうの"テンプレ"って言うんでしょう?ま、とりあえずこう答えとこう。



「わぁ、やっぱり! そんな気がしてました。皆さん、仲が良いですものね!」

「ふふ、わかる?……あぁそうだ、もし良かったら僕と剣の練習しないかい? 冒険者になるんだろう? 剣術はとても大事だからね。少しでもレベルを上げとかないと、さ。練習用の剣も貸すよ。どう?」



 う……こういうのて、強さとかばれると中々大変なことに巻き込まれたりするんでしょう?

 ドラグナーストーリーでも、スタートクエストでも、俺が読んだラノベでも、そうだった。

 ほっといてくれ、って感じだよね。当の本人からしたらさ。多分。あー、でも断れないなー。

 ステータスやスキルって、自由にセーブできるから別に問題はないよね。



「え、良いんですか? 是非お願いします!」

「よしよし、そうこなくっちゃ。じゃあ外に出ようか!」



 俺たちは村長の家から外にでる。



「少し、人がいない場所に行こうか?先に剣を私とくね」



 これは俺が水剣意外で初めてつかんだ剣だ。うーん。やっぱり剣は金属じゃないとね。



「よーし、ここだ。じゃ、こうかまえてねー」



 俺たちは村の奥の方に来て、練習をし始めた。

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